無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗

文字の大きさ
12 / 38

決闘と婚約破棄

しおりを挟む
 俺は【受諾】を選択。
 すると、セインはニヤリと笑う。
 不気味な笑みだな。


「アビスさん、本当に戦うんですか……?」


 ローザから不安気に見つめられる。正直、対人なんてこれが初めてで未知数。心の中は不安でいっぱいだ。てか、人間同士で殺し合うようなものだよなぁ……怖ぇ!

 もちろん、そんな情けない声を発するわけにもいかず、俺はずっと感情を押し殺していた。

 そうさ、怖いさ。
 でも逃げるなんて真似だけはしたくない。特にローザの前ではな。


「戦う。俺はヤツと戦う。なぁに大丈夫、お前がくれた最強の能力・・・・・が俺を強くしたんだからな、心配すんな」

「はい。わたし、アビスさんを信じています」


 そんな祈るような顔されたら――勝つしかないじゃないか。

 そうだ、俺は勝つ。
 これからも勝ち続けて人生を変えていくんだ。

 だから……!


「待たせたな、シャイン!」
「誰がシャインじゃ!! 僕はセイン・・・だ!!」


 そうだった、セインだ。
 向き合った瞬間――【決闘PvP】が始まった。


 俺は『インビジブルランス』を構えた。射程距離リーチがあるし、これが一番良いと判断。剣と弓はまだ使ったことがないし、この対人という状況を考えたとき、斧よりは槍の方がいいと思った。


「なんだその構え? まさか、武器がないのか? ウソだろ、それで僕と戦う!? バカにしているのか貴様!!」


 セインが俺を見下す。
 決闘を見守る野次馬もゲラゲラ笑う。


「だっせえ!」「なんかの拳法?」「ヤケクソじゃね」「セインは、S級のブロードソードだな」「おい、あの武器って……」「S級だからな。精錬値も高く、状態異常を与える能力も付いているだろう」「違いねぇ。ヤベェぞ」


 S級ブロードソード?
 なるほど、それなりの武器は持っていたわけか。周囲のヤツ等によれば、状態異常を付与する能力もあるのか。なら、毒とか気を付けないとな。


「行くぜ、ガキ!!」


 セインがS級ブロードソードを握り、突進してくる。……早い。思ったよりも素早い身動き。

 既に目の前に接近され、剣が向かってくる。


「……!」
「ローザは貰うぞ! お前から寝取ってやる。あんな極上美人なんだ、抱き心地とか最高だろうなあ~」


「うるせーよ」


 剣が俺の胸部目掛けてくる。単純シンプルな突き攻撃だけど、キレとスピードはある。だけど、SSS級防具のおかげか、驚くほど簡単に回避できた。

 ひょいっと左へかわす。


「――なッ! 避けた、だとォ!?」


 セインは隙だらけ。
 なんだ、この程度だったのか。拍子抜けした。無駄に緊張して損したぞ。

 俺は『インビジブルランス』を“ちょん”とヤツの右肩に突き刺す。


 すると――


『ドッゴォォォォォォォ……』


 音速マッハとなって吹っ飛んでいくセインは、壁に激突。その壁が天井まで亀裂が入って、崩壊しそうになった。……やっべ、本気を出したつもりはないんだが!

 落盤になり掛けたけど、周囲の魔術師ウィザードが不思議な力を発動。岩壁は修復され、元通り。

 セインも掘り出されて、地面へ投げ捨てられていた。


「……がはっ」


 土下座するように倒れてしまったセイン。その直後には【勝者WINNER:アビス】と表示された。

 あっさり決着がついてしまった。
 周囲の冒険者が驚愕きょうがくしていた。


「うそだろ、何も見えなかったぞ!」「少年は武器がないのに、どうなってんだ」「え、あの少年、強くね?」「ま、まさか……あの貴族騎士を倒しちまうとは」「あの子供ってS級冒険者なのかな」「いや、SSS級冒険者じゃないか?」「かもなあ。だって、セインは“A級冒険者”だぜ」「まじか~。すげえな」「まあ、アビスとかいう少年の勝ちだわな」「きゃ~、かっこいい!」「あたし、あの人のパーティに入ろうかなぁ」


 俺を見下していた冒険者共の見る目が変わった。明らかに俺を賞賛しょうさんし、羨望せんぼうの眼差しを向けていた。今更遅いってーの。

 けど、なんだろう。
 気持ちが良いな。


「やりましたね、アビスさん!」
「ローザ。ああ、なんとか勝った」

「あの倒れている人、どうします?」
「う~ん。まあ、勝ちは勝ちだからな」


 あのセインのパーティを覗く。
 七人のうち、リーダーはセインだから残り六人。あの中から誰か引き抜くかなあ。それとも、金とかアイテムでも奪うか。

 しかし、金とかレアアイテムは『無限初回ログインボーナス』でたんまり入手できるから、あんまりメリットがない。

 となると、仲間を頂くか。

 これは『決闘PvP』による厳格なルールだし、問題はない。

 悩んでいると、セインが意識を取り戻して立ち上がった。


「……くッ。アビス、てめぇ……よくも」
「俺の勝ちだ。悪いけど、お前のパーティから優秀な人材を貰うよ。それこそ、可愛い女の子とか」

「んだとォ!?」


 殴りかかってくるが、筋肉ムキムキのおっさんが介入してセインの拳を余裕で受け止めた。

 な、なんだこの巨漢おとこ


「やめろ、セイン。勝負は決した。お前は敗北したんだ」
「オーガスト、邪魔するんじゃねぇ!」
「状況が分かっていないようだな、セイン。お前は多くの冒険者が見守る前で決闘に破れ、敗北者となった。それはつまり、リーダーたる資格がないということだ」

「く、くそォ!! アビス、てめぇのせいだぞ!!」


 勝手に吹っ掛けておいて人のせいにするなよ。とはいえ、周囲の冒険者も俺と同じようにセインを軽蔑けいべつしていた。

 更にあのローザですら、セインに対してドン引き。


「アビスさん、あの人最低すぎます」
「アイツは、俺からローザを奪って自分のモノにするつもりだったようだ」

「え……無理。死んだ方がマシです」

 セインが生理的に受け付けないのか、ローザは顔を青くした。表情から『きもい』と出てしまっている。よっぽどだな、これは。

「とりあえず、仲間を貰うか」

 セインの怒声は無視。
 俺は、ヤツのパーティを覗き見た。
 なるほど、六人の中には女性もいるのか。それも、とびきり可愛い子もいた。

 だが、さっきの巨漢・オーガストが名乗り出た。


「よかったら、この俺が仲間になろうか?」


 この人、装備からして『重戦士』ってところかな。ゴツゴツとした鎧に身をまとい、巨大なハンマーを背中に収めている。かなり強そうだ。

 だけど、せっかくの勝利。
 自分で決めたいし、女の子がいいな。


「あんた、セインの仲間なのか?」
「そうだ、セインを除く六人のうちのひとり。だが、リーダーであるセインに不満があった。丁度良い機会だ。俺はパーティを抜ける」


 残り五人は、男が三人と女が二人。
 男の方は省略するとして――女の子二人は、綺麗な首輪と腕輪をつけているエルフと……格闘家モンクらしき大人の女性。胸元がはだけてなまめかしい衣装だ。

 となると、エルフの子かな。


「悪い。俺はエルフを貰うよ」
「そうか。あの子は『ミランダ』だ。口数が少ないから詳しく知らんが、ワケ有りのようだぞ。それじゃ、俺はパーティを脱退する。じゃあな」


 オーガストは去っていく。
 俺はもちろん、そのミランダを指定。こちらのパーティへ迎え入れる事となった。

「さあ、おいで」
「……(コクコク)」

 本当に喋らないな。
 寡黙かもくなんだな。
 けど、パーティに加入してくれるようだ。


「ま、待て!! ミランダは止めてくれ!! そっちのモンクをくれてやるから、ミランダだけは!!」


 セインが必死になって止めてこようとする。


「決闘のルールは絶対だ。それはお前がよく知っているんじゃないか、セイン」
「ミ、ミランダは、俺と婚約しているんだぞ! しかもまだ清廉せいれん潔白けっぱく……指一本触れていないんだぞ、それを奪う気か!!」

「そうか、それは残念だったな」


 俺は指一本どころか腰に手を当てて、迎え入れた。直後、ミランダが残念そうに口を開く。

「ごめんなさい、セイン様。決闘に敗北した貴方との結婚は、聖地アヴァロンの聖老様との誓約に反してしまいます。婚約破棄させてください」
「ミランダ、うそだろ……。ミランダ! あ……あ……あああああああああああああああああ!!」


 発狂するセイン。
 俺なんかに勝負を挑むから。
 人の仲間を奪おうとするからそうなった。自業自得だな。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...