無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗

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メテオゴーレムと聖属性シールドスキル

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 装備を『弓』に変え、強化しまくったおかげでサクサク進むようになった。

 現在、地下二十四階。
 あと少しでまた安全地帯へ入れるだろう。二十五階が最後のセイフティゾーンとなるはず。

 今のところ、俺たちパーティが一番先行しているようだ。他の冒険者の気配はまるでなかった。

 この階層にいる『ウッドゴーレム』が強すぎるせいだろうな。


 そうして、俺たちは二十四階も難なく制圧し――地下階段を降りた。


「……ふぅ。やっと安全地帯か」
「やっとですね、ここまで一日を要しました」

 ローザの言う通り、休み休みで進んでなんとか死なずに来れた。奇跡だな。

 回復アイテムもほとんど使ってしまった。こんなの、他のパーティやギルドはどうやって攻略しているんだか。

 ミランダによれば、相当な量の体力・魔力回復ポーションを買い込み、荷物持ちポーターに運ばせるらしい。つまり、あの大手ヴァナルガンドにさえも荷物持ちはいたんだろうな。あのギャンブラーの人かな?

 俺達にそんな係りはいないから、自力だけどな。


「アイテムボックスを拡張する手段もありますけどね」
「本当か、ミランダ」
「ええ、魔晶石を一個使うごとに五個分のアイテムボックス枠を増やせるんです!」

「そうだったのか。けど貴重な魔晶石を使うのは気が引けるなぁ」
「そうですね、だから『荷物持ちポーター』がいるんでしょうね」


 納得。けど、荷物持ちポーターなんて雇うくらいなら、アイテムボックスを拡張するかな。
 欲しいアイテムはもう十分手に入ったし、要検討かな。

 そんなことを考えながら、安全地帯。

 二十五階は、やや狭い。
 大人数は想定されていない作りだな。
 それもそうか、こんな場所まで来れる冒険者は限られているのだろう。


「今はとにかく休憩しよう」
「了解しましたあ」


 かなり疲れていたらしいミランダは、横になって眠った。早いな。――とはいえ、ずっと矢を射っていたし、当然か。

 ローザも支援スキルをずっと使い続けていた。おかげで俺とミランダのステータスは強化され続けていた。支援がなかったら、火力も足りなかっただろうし、ローザには感謝しかない。



「眠っちゃいましたね、ミランダさん」
「あれだけ激しく動いたんだ、疲労ひろう困憊こんぱいだろうな」
「ええ、しばらくは寝かせてあげましょう」

「ローザも眠っておけ」

「わたしは大丈夫です。それよりアビスさんのお体です」
「ん? 俺は平気だ」

「ダンジョン攻略中も筋トレしていましたよね! 無茶しすぎです」


 見られていたのか。
 そう、俺はオーガストに教えてもらった鍛錬たんれんおこたらずこなしていた。おかげでグングンとステータスが上昇していた。

 最初の頃に比べれば雲泥うんでいの差。

 今や体力HP筋力STRだけなら、かなりパワーアップした。これが数値で表れないのが切ないところだけど。

 鍛えていたからこそ、ウッドゴーレムの枝攻撃を腹に受けていても致命傷にはならなかった。

 これもオーガストのおかげだ。
 今度会ったらお礼をしないとな。


「ローザ、俺は決めたんだ」
「え、何をです?」

「ローザとミランダを絶対に守ってみせると。この三人でダンジョンを攻略して、その暁には俺は辺境伯となり、辺境の領地を貰ってお前たちと一緒にのびのび暮らすんだ」


「はい、もちろんです。アビスさん。嬉しいです」


 涙をこらえるローザは――けれど、涙を零した。


「な、泣くなよ。まだ達成していないし、その涙は勝利の瞬間まで取っておくんだ」
「そ、そうですね! そうでした」


 ぐいっと腕で涙を拭き上げるローザは、いつもの凛とした表情に戻る。そうだな、そっちの方が似合っている。


「ところで、ローザ。君は『アイリス教会』の大聖女らしいが、なんで俺を助けてくれたんだ」

「言ったでしょう、子供の頃に会ったことがあると」
「俺にはその記憶がない。覚えていないんだ」

「そうでしょうね。でも、このお話は複雑すぎて……どう伝えていいやらなのです」
「複雑でもいい、教えてくれ」

「分かりました。実は――」


 ローザが言いかけた直後、安全地帯にヘルやオーガストが姿を現した。アイツ等も追い付いてきたのか。早いな。


「ごきげんよう、アビスさん」
「あ、ああ……ヘル。さすが大手ギルドだ。あのウッドゴーレムをよく倒せたな」

「ええ、この人数ですからね。私たちは、もうこのまま地下三十階を目指しますの」
「な……休憩なしかよ」

「重戦士オーガストのおかげで、被害がほとんどなく進めていますからね」


 やっぱり、大手ギルドって凄いんだな。しかも、オーガストのおかげらしい。今は大きな盾を手にしている。

 気になっているとローザが耳打ちしてきた。


「アビスさん、たぶん、オーガストさんは『盾役タンク』なんです。重戦士は、高いHPとか防御力が特性なので敵とかひきつけて、味方を守るんです」

 その間にギルドやパーティメンバーがモンスターを攻撃すると――そういうことらしい。なるほどな、大人数の場合、そういう戦法もあるわけか。

 納得していると、ヴァナルガンドはどんどん地下階段へ向かっていく。

 マジでそのまま行くのかよ。

 最後尾のオーガストが俺に話しかけてきた。


「よう、アビス。お前には驚かされたよ。まともな装備も無さそうなお前がここまで生き残るとはな。尊敬に値する」

「オーガスト……いや、俺は運が良かっただけだ」
「運も実力の内さ。がんばれよ、アビス。ここまで来たからにはギガントメテオゴーレムをぶっ倒して、勝とうぜ!」

「おう!」


 固い握手を交わし、俺はオーガストの人の良さに少し泣きそうになった。思えば、この重戦士は俺ずっと気遣ってくれていたような気がする。
 うちの仲間にしておけば良かったかな。

 オーガストは行ってしまった。


 * * *


 あれから一時間後、俺たちも出発した。


「ミランダ、大丈夫か」
「は、はい……わたくし、いつの間にか眠ってしまって……しかも、ヴァナルガンドの方たちに先を越されてしまうなんて、ごめんなさい!」

「いや、ミランダに無理をさせられない。それに、そう簡単に突破できるとは思えない。まず、地下三十階のボス部屋に到達できたとしても、最強のギルドが壊滅するレベルの強さなんだからね」

 とはいえ、ヴァナルガンドも無策で向かっているわけではないのだろう。追い付かないと、攻略されてしまうかも。


 地下二十六階へ。
 残す階数もあとわずか。


 だから、この先にいるであろうゴーレムもなんとなく察しがつく。


 今までとは空気の重さも、通路の雰囲気も大きく異なる。明らかに『闇』に近づいていた。奈落の底へ落ちていくような錯覚。

 深淵がそこにはあった。

 その先から――


【メテオゴーレム】
【Lv.95】
【無属性】
【詳細】
 HP:84001。
 人型のスリムなゴーレム。
 移動速度が速く、アランヒルズという流星刀を使い、接近物理攻撃を行う。
 最強の防御力を持つ。通常の武器ではダメージを与えられない。S級以上を推奨。無属性魔法・ジャイアントインパクトは無数の隕石を降らす大魔法。


「あ、あれは……!」

 大人の三倍はある人型ゴーレムが出現。
 今までの図太いタイプではなく、無駄がない。贅肉のない綺麗なゴーレムだった。けど、不気味だ。


「あれがメテオゴーレム! 物凄いスピードでこっちへ来ますよ!」
「ああ、ローザ! ヤツは危険すぎる――っていうか、隕石を降らせながらこっちへ来るんだが!?」


 ドカドカと地面に隕石を降らせまくって向かってくる。なんてゴーレムだ、常に大魔法を放っているのかよ。あんな隕石の雨に巻き込まれたら死ぬぞ。

 しかもあのゴーレム、武器を持っていやがる。

 流星刀・アランヒルズというらしいが。


 ならば、俺は“インビジブルソード”で迎え撃つ――!


「アビスさん、ここはわたしの防御魔法・プロヴィデンスを付与します!」
「おぉ、ローザ! そんな魔法を覚えていたのか」

「レベルアップして習得したんです!」



【プロヴィデンス】
【Lv.1】
【補助スキル】
【詳細】
 聖属性のシールドを展開する。
 物理・魔法攻撃を防御する。
 このシールドの耐久値はスキルレベルによって異なる。

 Lv.1:シールド耐久値100,000
 Lv.2:シールド耐久値200,000
 Lv.3:シールド耐久値300,000
 Lv.4:シールド耐久値400,000
 Lv.5:シールド耐久値500,000



「おぉ、バリアか! 助かるよ」
「ええ、しばらくは持つかと!」

「ローザ、聖属性攻撃も出来たよな?」


 確認すると、支援魔法を掛けながらうなずいた。


「ええ、わたしはホーリークロスを習得しているので、それを放ちます」
「おーけー」


 となれば、後は――


「ミランダも魔法を頼む」
「魔力回復ポーションはまだありますし、攻撃し続けますね」


 二人に後方支援を任せた。
 これで準備は万端。
 インビジブルソード『聖剣カレトヴルッフ』を構え、俺はメテオゴーレムへ接近していく。


 ヤツを倒して、地下三十階へ到達してみせる。
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