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【110】 最強ギルド潜入(ルナ視点)
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ギルド『パナシーア』の助力を得て、わたしはよりカイトに近づくため『シャロウ』へ入ることにした。そこまでの道のりは険しいかと思われたが、さすがワンダ。元メンバーのコネを使い、あっさりと接触できたのだ。
彼女は、スパイとしても『シャロウ』の情報を出来る限り持ってきて欲しいと言った。ここまで良くしてくれたのだ。それくらいの礼はしても罰は当たらないだろう。快諾した。
そんなわけで、ギルドの状況を探る為に……そして、なによりもカイトの様子を知るため、わたしはシャロウの拠点へ向かった。
実質帝国領の【中立国・サテライト】へ向かい、裏ルートから『シャロウ』へ交渉し、厳しい面接を経て加入を果たした。
ここへ至るまで一週間も要してしまった。
彼は……まだいるのだろうか?
サテライトにある拠点で確認すると……
もう彼の姿はなかった。
「…………そんな。あ、あの、このギルドに『カイト』という男性が所属していたと思いますが……」
わたしはシャロウメンバーのひとり『トラモント』という人物に聞いた。
彼は、シャロウの『No.4』らしい。巨躯でとても威圧的な肉体を持っていた。聞くところによると、ドワーフとの混血とか何とか。
「――カイト? ああ、そんな小僧がおったな。そいつは最近、マスターの判断によって追放された。ここ数か月はあまりに役に立たなかったのでね」
「そんな……」
「仕方ないさ、ヤツは自身のレベルを決して上げようとしなかった。『Lv.1』だったんだぞ。そんな役立たずのクズを守りながらボスモンスターと戦う。こちらの身にもなってくれ。――というか、キミ、なぜあんなヤツの事を聞くんだね」
「ちょっと気になったので」
「そうか。元メンバーとはいえ、詮索はしない方がいい。新人メイド、お前も怪しい行動を取れば……直ちに追放処分となる。気を付けることだ」
そうわたしを睨むと、トラモントは拠点を出て行った。その時、部屋の片隅で静かにこちらの動向を伺う『No.3』の男の姿があった。いつの間に……。
彼は『バオ』という。
明らかに不良とかそういう類の男。近寄りがたい。そんな男がニヤリと笑っていたような気がする。もしかしたら、話を聞かれていたか。でも、もうどうでもいい。カイトがいないのなら……シャロウに未練もないし、内部情報もある程度は掴んだ。
しかし、ワンダの為にもう少し探ってみよう。
あとカイトの事も何か分かるかもしれないし。
――そして、三日後。
わたしはシャロウから『追放』処分を受けた。
理由は『レベル不足』だった。
わたしは『Lv.999』で止めていた。
また『Lv.9999』になってしまえば死に近づいてしまうからだ。けれど、わたしは寧ろ清々した。あのギルドの空気は重苦しくて、他のメンバーとも楽しく会話を交わすことなく、酷い有様だった。初めて所属したギルドだったけど、それほどショックはなかった。
でも、彼の気持ちも少し分かった。
……あれが世界最強ギルドなのか。
いや違う。
あれは、独裁国家だ。
あそこに自由はなく、喜びも悲しみもない。喜怒哀楽という概念すらない。それを共有する価値観さえ皆無。ただの、監獄かそれ以上の地獄だ。狩りの効率を優先し、レベルだけを見ている。そして、ただの上下関係。
わたしは、浅いギルドだなって思った。
ギルドを追放されたカイトはきっと落ち込んでいる。そう思うと胸が張り裂けそうになった。彼は今、この近辺を彷徨っているだろう。
◆
ワンダの部下、リーベによれば、カイトが【セイフの街】付近の森にいると聞いた。良かった。幸い【中立国・サテライト】とその街は近かった。
パナシーアに護衛をしてもらい、
わたしは深い森へ向かった。
「――――」
森の中を探し回り、必死に探し続けた。
時間を忘れてただ闇雲に走り続けていると、ぽつりと雨が。
「雨……」
そういえば、ワンダが雨が降ると言っていた。
可愛い柄の傘を渡されていたので、それを差す。
やがて――ぱらぱらと降り始め、それは次第に大粒の雨に。ざぁざぁと打ち付けるような雨。まるで誰かの涙のようだった。
――そして、
ドシャリと何か、倒れる音がした。
「…………え、もしかして」
わたしはドキリとした。あれから数日が経過してこの森にさえいるかどうか分からなかったし……確証もなかった。でも、きっとこの森を彷徨っていると思って必死に探した。……いたんだ、ここに。
「カイト様……」
その音の方角へ走り、わたしはついに――
仰向けに倒れ、泥まみれになっている彼を発見した。……ああ、あの優しい顔立ち、銀髪、青い瞳。間違いない。
――――――。
追いついた。
やっと逢えた。
わたしは溢れ出る感情を抑え、彼の前へ。
(…………ありがとう…………)
わたしを助けてくれたこと。
あなたに出逢えたこと。
あなたに恋をしたこと。
すべてに感謝した。
ゆっくりと手を伸ばす。
彼を引っ張り上げ――優しく抱きしめた。
彼女は、スパイとしても『シャロウ』の情報を出来る限り持ってきて欲しいと言った。ここまで良くしてくれたのだ。それくらいの礼はしても罰は当たらないだろう。快諾した。
そんなわけで、ギルドの状況を探る為に……そして、なによりもカイトの様子を知るため、わたしはシャロウの拠点へ向かった。
実質帝国領の【中立国・サテライト】へ向かい、裏ルートから『シャロウ』へ交渉し、厳しい面接を経て加入を果たした。
ここへ至るまで一週間も要してしまった。
彼は……まだいるのだろうか?
サテライトにある拠点で確認すると……
もう彼の姿はなかった。
「…………そんな。あ、あの、このギルドに『カイト』という男性が所属していたと思いますが……」
わたしはシャロウメンバーのひとり『トラモント』という人物に聞いた。
彼は、シャロウの『No.4』らしい。巨躯でとても威圧的な肉体を持っていた。聞くところによると、ドワーフとの混血とか何とか。
「――カイト? ああ、そんな小僧がおったな。そいつは最近、マスターの判断によって追放された。ここ数か月はあまりに役に立たなかったのでね」
「そんな……」
「仕方ないさ、ヤツは自身のレベルを決して上げようとしなかった。『Lv.1』だったんだぞ。そんな役立たずのクズを守りながらボスモンスターと戦う。こちらの身にもなってくれ。――というか、キミ、なぜあんなヤツの事を聞くんだね」
「ちょっと気になったので」
「そうか。元メンバーとはいえ、詮索はしない方がいい。新人メイド、お前も怪しい行動を取れば……直ちに追放処分となる。気を付けることだ」
そうわたしを睨むと、トラモントは拠点を出て行った。その時、部屋の片隅で静かにこちらの動向を伺う『No.3』の男の姿があった。いつの間に……。
彼は『バオ』という。
明らかに不良とかそういう類の男。近寄りがたい。そんな男がニヤリと笑っていたような気がする。もしかしたら、話を聞かれていたか。でも、もうどうでもいい。カイトがいないのなら……シャロウに未練もないし、内部情報もある程度は掴んだ。
しかし、ワンダの為にもう少し探ってみよう。
あとカイトの事も何か分かるかもしれないし。
――そして、三日後。
わたしはシャロウから『追放』処分を受けた。
理由は『レベル不足』だった。
わたしは『Lv.999』で止めていた。
また『Lv.9999』になってしまえば死に近づいてしまうからだ。けれど、わたしは寧ろ清々した。あのギルドの空気は重苦しくて、他のメンバーとも楽しく会話を交わすことなく、酷い有様だった。初めて所属したギルドだったけど、それほどショックはなかった。
でも、彼の気持ちも少し分かった。
……あれが世界最強ギルドなのか。
いや違う。
あれは、独裁国家だ。
あそこに自由はなく、喜びも悲しみもない。喜怒哀楽という概念すらない。それを共有する価値観さえ皆無。ただの、監獄かそれ以上の地獄だ。狩りの効率を優先し、レベルだけを見ている。そして、ただの上下関係。
わたしは、浅いギルドだなって思った。
ギルドを追放されたカイトはきっと落ち込んでいる。そう思うと胸が張り裂けそうになった。彼は今、この近辺を彷徨っているだろう。
◆
ワンダの部下、リーベによれば、カイトが【セイフの街】付近の森にいると聞いた。良かった。幸い【中立国・サテライト】とその街は近かった。
パナシーアに護衛をしてもらい、
わたしは深い森へ向かった。
「――――」
森の中を探し回り、必死に探し続けた。
時間を忘れてただ闇雲に走り続けていると、ぽつりと雨が。
「雨……」
そういえば、ワンダが雨が降ると言っていた。
可愛い柄の傘を渡されていたので、それを差す。
やがて――ぱらぱらと降り始め、それは次第に大粒の雨に。ざぁざぁと打ち付けるような雨。まるで誰かの涙のようだった。
――そして、
ドシャリと何か、倒れる音がした。
「…………え、もしかして」
わたしはドキリとした。あれから数日が経過してこの森にさえいるかどうか分からなかったし……確証もなかった。でも、きっとこの森を彷徨っていると思って必死に探した。……いたんだ、ここに。
「カイト様……」
その音の方角へ走り、わたしはついに――
仰向けに倒れ、泥まみれになっている彼を発見した。……ああ、あの優しい顔立ち、銀髪、青い瞳。間違いない。
――――――。
追いついた。
やっと逢えた。
わたしは溢れ出る感情を抑え、彼の前へ。
(…………ありがとう…………)
わたしを助けてくれたこと。
あなたに出逢えたこと。
あなたに恋をしたこと。
すべてに感謝した。
ゆっくりと手を伸ばす。
彼を引っ張り上げ――優しく抱きしめた。
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