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【140】 レッドムーン葬送曲(ルナ視点)
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一直線に向かってくる筈だった『聖槍・アリアンロッド』が槍らしからぬ動きを見せた。
……なんてこと。
あの碧い槍は意志を持つかのように、ひとつ、ふたつ、みっつとそれ以上に増殖した。……いや、あれは。
「……分裂……」
驚くべき事に、聖槍は七つに別れ――
わたしを囲った。
それから芸術的な扇形となり、それはやがて集中豪雨となった。これは回避不能。逃げ道を作らない為の戦略的な必殺技という事だろう。
ならば、わたしは――
「――たぁぁぁっ!!」
聖槍・アリアンロッドの一本を素手で掴み取り、他の槍を薙ぎ払う。ぶんっと飛ばし、聖槍を我が物のように振るった。
「……ルナ、貴様……我が聖槍を!! だが、神槍・グングニールが控えているぞ!! これは一撃必殺のスキル。いくら融合を持つお前でも、これは耐えられまい――!!」
エキナセアは、翼で空高く飛び、ぐんぐん上昇していく。……どこまで飛んでいく気だ。まさか……それほどの大技を?
だとすれば拙い。
この周辺には、民たちもいる。
守らねば……この皇女であるわたしが。
赤い月を背にするエキナセアは、ついに構えた。
翠色にして螺旋を描く槍。
神槍・グングニールの穂先がギラリと不気味に輝き、こちらを威嚇した。それから魔力を爆発的に増幅させ――ついに、彼女はスキルを。
『フェイズ・オブ・ムーン!!!!!』
グングニルに黒き力が――。
そうか、アトモスフィアから付与されていたか。
放たれる月相。
槍は、青と黒を混濁させ、色をより濃くさせた。
まるで月が落ちてくるような錯覚。
それほどまでに強大で、街ひとつを破壊せんとする超広範囲の魔力量が墜落していた。このままでは、帝国の存亡さえ危ういだろう。
けれども、あの黒は違う。
所詮は付与されたものに過ぎない。
月満つれば則ち虧く。
わたしは右手を空へと掲げ、エキナセアに言い聞かせるようにしてつぶやく。これは、手向け。彼女へ安息を。
『グロリアスオッフェルトリウム』
シマープリースト最強のスキル。
最後の聖餐である。
七ある秘蹟が月の光となって、栄光となる。
1.ターゲスアンブルフ
2.シュテルンビルト
3.アプレミディ
4.クラールハイト
5.ナハト
6.ゾンターク
7.ノイヤール
全ては月と太陽の福音であり、祝福。
赤こそが原初なのだ。
赤き光は、青き光を褪める。
『――――――!!!!!!』
瞬く間に到達するレッドムーン。
エキナセアは、回避する暇もなくその洗礼を受けた。
「…………がぁあぁあぁあ――――ッ!!!」
真赭の残光を夜空に散らし――彼女は消えた。
あれほどの赤の爆炎に晒されれば、無事では済まないだろう。
わたしは血となった夜空を見つめる。
――そこに気配はない。
聖槍も神槍の神々しい気配もない。
あるのは、嫣然と笑う赤い月だけ。わたしもまた月に笑い返す。――赤は良い。心地よい。人間の血潮であり、生命の源なのだから。
◆
噴水広場に戻った。
そこには、地面に腰下ろし血塗れのソレイユが。
「ソレイユ……」
焦って駆けよれば、カイト様が止めた。
「大丈夫だ、ルナ。ソレイユは、気絶しているだけだ。だから落ち着いて……ヒールを頼む」
「分かりました……」
治癒スキルをソレイユに向けた。
「グロリアスヒールです」
全回復するシマープリーストのヒールスキル。
あらゆる傷を癒し、治療する。
その効果は絶大で、ソレイユの傷は完全に癒えて額の裂傷も塞がった。あっさりと完治した。それを確認し、わたしは酷く安堵する。
……良かった。
「あの……。ルナさんは、あのエキナセアという、シャロウの副ギルドマスターと戦っていたんですよね」
なぜか弓を持ち、金色の髪を揺らすミーティア。どこか心配そうにわたしを見つめた。
「大丈夫です。生死は不明ですけれど……彼女は撃退しました。その他のメンバーもカイト様が倒れされましたものね」
「いや、俺はトラモントとエフォールだけ。バオはソレイユが、コレリックはミーティアが担当だった」
そう素直に結果を申される。
……いけない、それよりカイト様の容態だ。
わたしは彼に駆け寄って、手を取った。
「……ルナ?」
「カイト様、ぜんぶ見せて下さいっ!」
「ぜぜぜ、全部ぅ!? そ、それはちょっと困るかな……。てか、ルナ……近いよ」
「ケガの具合が気になるのです。しっかり見せて下さい、宜しいですね」
「大丈夫だ。多少、打撲した程度だよ。ルナの方こそケガは?」
「無傷ですよ。いえ、わたしの事はいいんです! カイト様の容態が優先ですよ。……打撲ですか。それはいけません。ミーティアちゃんにもヒールを」
カイト様とミーティアちゃんにグロリアスヒールを施す。フワァっと穏やかな赤色のオーラが包むと二人は全回復した。
「おお~、ルナのヒールはやっぱりスゲェや」
「本当に一瞬で回復ですね!」
二人ともリラックスして笑った。
良かったぁ。
それからして、ソレイユが目を開けた。
「…………ルナ」
「ソレイユ!」
わたしは腰を下ろし、彼女を診た。
「ケガは癒えたようですね。ですが、絶対安静です。よろしいですね」
「うん……分かったわ。ルナに従う」
そうなれば、さっさと宿へ戻らねば。そろそろ、異常を察した帝国の騎士達が集まってくる頃合いだろう。
「カイト様、ソレイユを運んで戴けますか?」
「任せろ」
カイト様は、ソレイユをおんぶした。
「……っ! カ、カイト……まじ?」
すると彼女は赤面して震えていた。
騎士らしくないというか、ソレイユもカイト様を意識しているよう。ちょっと妬いちゃうけど、でもいい。彼女の身が何よりも大切だから。
帰りましょう。
宿・ヴァーミリオンへ。
……なんてこと。
あの碧い槍は意志を持つかのように、ひとつ、ふたつ、みっつとそれ以上に増殖した。……いや、あれは。
「……分裂……」
驚くべき事に、聖槍は七つに別れ――
わたしを囲った。
それから芸術的な扇形となり、それはやがて集中豪雨となった。これは回避不能。逃げ道を作らない為の戦略的な必殺技という事だろう。
ならば、わたしは――
「――たぁぁぁっ!!」
聖槍・アリアンロッドの一本を素手で掴み取り、他の槍を薙ぎ払う。ぶんっと飛ばし、聖槍を我が物のように振るった。
「……ルナ、貴様……我が聖槍を!! だが、神槍・グングニールが控えているぞ!! これは一撃必殺のスキル。いくら融合を持つお前でも、これは耐えられまい――!!」
エキナセアは、翼で空高く飛び、ぐんぐん上昇していく。……どこまで飛んでいく気だ。まさか……それほどの大技を?
だとすれば拙い。
この周辺には、民たちもいる。
守らねば……この皇女であるわたしが。
赤い月を背にするエキナセアは、ついに構えた。
翠色にして螺旋を描く槍。
神槍・グングニールの穂先がギラリと不気味に輝き、こちらを威嚇した。それから魔力を爆発的に増幅させ――ついに、彼女はスキルを。
『フェイズ・オブ・ムーン!!!!!』
グングニルに黒き力が――。
そうか、アトモスフィアから付与されていたか。
放たれる月相。
槍は、青と黒を混濁させ、色をより濃くさせた。
まるで月が落ちてくるような錯覚。
それほどまでに強大で、街ひとつを破壊せんとする超広範囲の魔力量が墜落していた。このままでは、帝国の存亡さえ危ういだろう。
けれども、あの黒は違う。
所詮は付与されたものに過ぎない。
月満つれば則ち虧く。
わたしは右手を空へと掲げ、エキナセアに言い聞かせるようにしてつぶやく。これは、手向け。彼女へ安息を。
『グロリアスオッフェルトリウム』
シマープリースト最強のスキル。
最後の聖餐である。
七ある秘蹟が月の光となって、栄光となる。
1.ターゲスアンブルフ
2.シュテルンビルト
3.アプレミディ
4.クラールハイト
5.ナハト
6.ゾンターク
7.ノイヤール
全ては月と太陽の福音であり、祝福。
赤こそが原初なのだ。
赤き光は、青き光を褪める。
『――――――!!!!!!』
瞬く間に到達するレッドムーン。
エキナセアは、回避する暇もなくその洗礼を受けた。
「…………がぁあぁあぁあ――――ッ!!!」
真赭の残光を夜空に散らし――彼女は消えた。
あれほどの赤の爆炎に晒されれば、無事では済まないだろう。
わたしは血となった夜空を見つめる。
――そこに気配はない。
聖槍も神槍の神々しい気配もない。
あるのは、嫣然と笑う赤い月だけ。わたしもまた月に笑い返す。――赤は良い。心地よい。人間の血潮であり、生命の源なのだから。
◆
噴水広場に戻った。
そこには、地面に腰下ろし血塗れのソレイユが。
「ソレイユ……」
焦って駆けよれば、カイト様が止めた。
「大丈夫だ、ルナ。ソレイユは、気絶しているだけだ。だから落ち着いて……ヒールを頼む」
「分かりました……」
治癒スキルをソレイユに向けた。
「グロリアスヒールです」
全回復するシマープリーストのヒールスキル。
あらゆる傷を癒し、治療する。
その効果は絶大で、ソレイユの傷は完全に癒えて額の裂傷も塞がった。あっさりと完治した。それを確認し、わたしは酷く安堵する。
……良かった。
「あの……。ルナさんは、あのエキナセアという、シャロウの副ギルドマスターと戦っていたんですよね」
なぜか弓を持ち、金色の髪を揺らすミーティア。どこか心配そうにわたしを見つめた。
「大丈夫です。生死は不明ですけれど……彼女は撃退しました。その他のメンバーもカイト様が倒れされましたものね」
「いや、俺はトラモントとエフォールだけ。バオはソレイユが、コレリックはミーティアが担当だった」
そう素直に結果を申される。
……いけない、それよりカイト様の容態だ。
わたしは彼に駆け寄って、手を取った。
「……ルナ?」
「カイト様、ぜんぶ見せて下さいっ!」
「ぜぜぜ、全部ぅ!? そ、それはちょっと困るかな……。てか、ルナ……近いよ」
「ケガの具合が気になるのです。しっかり見せて下さい、宜しいですね」
「大丈夫だ。多少、打撲した程度だよ。ルナの方こそケガは?」
「無傷ですよ。いえ、わたしの事はいいんです! カイト様の容態が優先ですよ。……打撲ですか。それはいけません。ミーティアちゃんにもヒールを」
カイト様とミーティアちゃんにグロリアスヒールを施す。フワァっと穏やかな赤色のオーラが包むと二人は全回復した。
「おお~、ルナのヒールはやっぱりスゲェや」
「本当に一瞬で回復ですね!」
二人ともリラックスして笑った。
良かったぁ。
それからして、ソレイユが目を開けた。
「…………ルナ」
「ソレイユ!」
わたしは腰を下ろし、彼女を診た。
「ケガは癒えたようですね。ですが、絶対安静です。よろしいですね」
「うん……分かったわ。ルナに従う」
そうなれば、さっさと宿へ戻らねば。そろそろ、異常を察した帝国の騎士達が集まってくる頃合いだろう。
「カイト様、ソレイユを運んで戴けますか?」
「任せろ」
カイト様は、ソレイユをおんぶした。
「……っ! カ、カイト……まじ?」
すると彼女は赤面して震えていた。
騎士らしくないというか、ソレイユもカイト様を意識しているよう。ちょっと妬いちゃうけど、でもいい。彼女の身が何よりも大切だから。
帰りましょう。
宿・ヴァーミリオンへ。
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