159 / 319
【159】 メイドとメイド
しおりを挟む
久しぶりに二人で買出しへ行く事になった。この後の夕方には帰って来るであろう、ソレイユとミーティアの為に、豪華な食事を振舞いたいというルナの要望だった。
無論、俺は賛成した。
ルナの手料理は、お店から提供されるものよりも美味くて、好きだ。
彼女を見失わないよう、可能な限り近づく。肩と肩が触れそうになるくらい距離が縮む。
「ルナ、結構な混雑だから、はぐれないよう気を付けて」
「はい……」
――と、油断していれば、ドンとルナが人混みに押されて俺の方へ倒れてくる。俺は地面への衝突はさせまいと光の速さでキャッチ。彼女を支えた。
「大丈夫かい」
「だいじょうぶ……です……」
ふと気づけば、ルナの桜色の唇が目の前にあった……。
「……」
このまま――
いや、人の目もある。
けれど、ルナは、目をそっと閉じた。
こ……これは、いいのか。
いやしかし、複数の人達からジロジロ見られているのだが……ただでさえ、ルナの美貌は目立つからな。どうするべきか激しい葛藤に駆られていると――
「ごめんなさい。人前ですよね……でも、お詫びに」
――ルナは、俺の腕を両手で包んでくれる。なかなかに際どい胸の位置なのだが、ギリギリ接触はしていない? っぽい。たぶん! ドキドキしすぎて分からん……。
「ルナ……」
「これくらいは普通です」
「ふ、普通か……?」
「ええ。先程、カイト様が申されたように、はぐれるわけには参りませんから……」
それは一理あった。
ので、俺はルナに掴まれたまま歩くことにした。……まあ、なんだかルナの顔が幸せそうだから、いっか――。
◆
必要な食材を買って、店を出た。
随分と買い込んだけど、いったい何を作るんだろうなあ……大体、食材の種類とかで想像がつくけど。多分、俺の好物、ハンバーグだ。
「では、イルミネイトへ」
「おう、帰ろうか」
来た道を戻っていく。
寄り道せず、真っすぐ店を目指していた――のだが。噴水前で、見知った顔が現れた。
「御無沙汰しております。ルナ様、カイト様」
メイド長のオーロラ。
艶のある黒髪が眩しく、その上に生えている恐らくホンモノの猫耳が魅力的な少女。ルナの専属メイドらしく、その何たるかもオーロラから学んだとか。以前、イルミネイトを訪ねて来たな。
「こんにちは、オーロラさん」
「……オ、オーロラ」
俺は普通に挨拶を、ルナはかなり微妙に、僅かに顔を顰める。……やっぱり、相手がメイド師匠なだけあり、身体が恐れているんだなあ。随分と辛いメイド修行だったようだし、ちょっとした拒絶反応が出ちゃうんだろうな。
「ルナ様、笑顔です。笑顔を忘れてはなりません」
オーロラから鋭い指摘が入る。
「……そうでした。メイドとしても、お店の接客にしても笑顔は大切です。常に平静を保ち、相手を敬え――ですね」
「ええ、それでこそ究極のメイド足りえるのです。……ところで、カイト様」
「?」
「その大きな買い物袋を見る限り、これからパーティでも開かれるのですか?」
「ああ、それに近いかもな。ルナがソレイユとミーティアに振舞いたいと」
「成程。ルナ様のお料理は私も認める一級品。……ふむ、お邪魔でなければ、私も同席を願いたいです」
なんと! そんな魅力的なお願いをされるとはな。ルナの皇女としての普段を詳しく知っていそうだし、もちろん、オーロラの事も気になっていた。これは良い機会かもしれんぞ。
「ルナ、オーロラさんも招待しよう」
「……ぇ」
あ、ちょっと嫌そう。
ほんの微妙にだけど。
「人数が多い方が楽しいよ」
「分かりました」
ルナは納得するも、オーロラに向き直って忠告するようにこう言った。
「ですが、オーロラ、ひとつ約束して下さい。カイト様を誘惑してはいけませんからねっ」
「……それはどうでしょう。私も年頃の女の子ですから、何かの手違いで間違いが起こってしまうかもしれません」
ニッと上品に微笑むメイド長。……オーロラ、恐るべし。一応、皇女であるルナに遠慮なしか。さすがだな。一歩も引かないその姿勢、身も心も強いな。
無論、俺は賛成した。
ルナの手料理は、お店から提供されるものよりも美味くて、好きだ。
彼女を見失わないよう、可能な限り近づく。肩と肩が触れそうになるくらい距離が縮む。
「ルナ、結構な混雑だから、はぐれないよう気を付けて」
「はい……」
――と、油断していれば、ドンとルナが人混みに押されて俺の方へ倒れてくる。俺は地面への衝突はさせまいと光の速さでキャッチ。彼女を支えた。
「大丈夫かい」
「だいじょうぶ……です……」
ふと気づけば、ルナの桜色の唇が目の前にあった……。
「……」
このまま――
いや、人の目もある。
けれど、ルナは、目をそっと閉じた。
こ……これは、いいのか。
いやしかし、複数の人達からジロジロ見られているのだが……ただでさえ、ルナの美貌は目立つからな。どうするべきか激しい葛藤に駆られていると――
「ごめんなさい。人前ですよね……でも、お詫びに」
――ルナは、俺の腕を両手で包んでくれる。なかなかに際どい胸の位置なのだが、ギリギリ接触はしていない? っぽい。たぶん! ドキドキしすぎて分からん……。
「ルナ……」
「これくらいは普通です」
「ふ、普通か……?」
「ええ。先程、カイト様が申されたように、はぐれるわけには参りませんから……」
それは一理あった。
ので、俺はルナに掴まれたまま歩くことにした。……まあ、なんだかルナの顔が幸せそうだから、いっか――。
◆
必要な食材を買って、店を出た。
随分と買い込んだけど、いったい何を作るんだろうなあ……大体、食材の種類とかで想像がつくけど。多分、俺の好物、ハンバーグだ。
「では、イルミネイトへ」
「おう、帰ろうか」
来た道を戻っていく。
寄り道せず、真っすぐ店を目指していた――のだが。噴水前で、見知った顔が現れた。
「御無沙汰しております。ルナ様、カイト様」
メイド長のオーロラ。
艶のある黒髪が眩しく、その上に生えている恐らくホンモノの猫耳が魅力的な少女。ルナの専属メイドらしく、その何たるかもオーロラから学んだとか。以前、イルミネイトを訪ねて来たな。
「こんにちは、オーロラさん」
「……オ、オーロラ」
俺は普通に挨拶を、ルナはかなり微妙に、僅かに顔を顰める。……やっぱり、相手がメイド師匠なだけあり、身体が恐れているんだなあ。随分と辛いメイド修行だったようだし、ちょっとした拒絶反応が出ちゃうんだろうな。
「ルナ様、笑顔です。笑顔を忘れてはなりません」
オーロラから鋭い指摘が入る。
「……そうでした。メイドとしても、お店の接客にしても笑顔は大切です。常に平静を保ち、相手を敬え――ですね」
「ええ、それでこそ究極のメイド足りえるのです。……ところで、カイト様」
「?」
「その大きな買い物袋を見る限り、これからパーティでも開かれるのですか?」
「ああ、それに近いかもな。ルナがソレイユとミーティアに振舞いたいと」
「成程。ルナ様のお料理は私も認める一級品。……ふむ、お邪魔でなければ、私も同席を願いたいです」
なんと! そんな魅力的なお願いをされるとはな。ルナの皇女としての普段を詳しく知っていそうだし、もちろん、オーロラの事も気になっていた。これは良い機会かもしれんぞ。
「ルナ、オーロラさんも招待しよう」
「……ぇ」
あ、ちょっと嫌そう。
ほんの微妙にだけど。
「人数が多い方が楽しいよ」
「分かりました」
ルナは納得するも、オーロラに向き直って忠告するようにこう言った。
「ですが、オーロラ、ひとつ約束して下さい。カイト様を誘惑してはいけませんからねっ」
「……それはどうでしょう。私も年頃の女の子ですから、何かの手違いで間違いが起こってしまうかもしれません」
ニッと上品に微笑むメイド長。……オーロラ、恐るべし。一応、皇女であるルナに遠慮なしか。さすがだな。一歩も引かないその姿勢、身も心も強いな。
0
あなたにおすすめの小説
ありふれた話 ~追放された錬金術師は、神スキル【物質創造】で辺境に楽園を築きます。今さら戻ってこいと言われても以下略
ゆきむらちひろ
ファンタジー
「追放」「ざまぁ」「実は最強」「生産チート」「スローライフ」「可愛いヒロイン」などなど、どこかで見たことがあるような設定を山盛りにして、ゆきむら的に書き殴っていく異世界ファンタジー。
■あらすじ
勇者パーティーで雑用兼ポーション生成係を務めていた錬金術師・アルト。
彼は勇者から「お前のスキルはもう限界だ。足手まといだ」と無一文で追放されてしまう。
失意のまま辺境の寂れた村に流れ着いたアルトだったが、
そこで自身のスキル【アイテム・クリエーション】が、
実はただのアイテム作成ではなく、
物質の構造を自在に組み替える神の御業【物質創造】であることに気づく。
それ以降、彼はその力で不毛の土地を肥沃な農地に変え、
枯れた川に清流を呼び戻し、
村人たちのために快適な家や温泉まで作り出していく。
さらに呪いに苦しむエルフの美少女を救い、
お人好しな商人、訳ありな獣人、腕利きのドワーフなどを取り入れ、
アルトは辺境を活気あふれる理想郷にしようと奮闘する。
一方、アルトを追放した勇者パーティーは、なぜかその活躍に陰りが見えてきて……。
―・―・―・―・―・―・―・―
タイトルを全部書くなら、
『追放された錬金術師は、神スキル【物質創造】で辺境に楽園を築きます ~今さら戻ってこいと泣きつかれても、もう遅い。周りには僕を信じてくれる仲間がいるので~』という感じ。ありそう。
※「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ノアは、敵を弱体化させる【呪物錬成】スキルで勇者パーティを支えていた。しかし、その力は地味で不吉だと疎まれ、ダンジョン攻略失敗の濡れ衣を着せられ追放されてしまう。
全てを失い、辺境の街に流れ着いたノア。生きるために作った「呪いの鍋」が、なぜか異常な性能を発揮し、街で評判となっていく。彼のスキルは、呪いという枷と引き換えに、物の潜在能力を限界突破させる超レアなものだったのだ。本人はその価値に全く気づいていないが……。
才能に悩む女剣士や没落貴族の令嬢など、彼の人柄と規格外のアイテムに惹かれた仲間が次第に集まり、小さな専門店はいつしか街の希望となる。一方、ノアを追放した勇者パーティは彼の不在で没落していく。これは、優しすぎる無自覚最強な主人公が、辺境から世界を救う物語。
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる