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【163】 月と太陽の誓約
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「……その反応、やはり記憶に欠落があるようだな。余計な部分の削除か……あるいは封印か――」
ミーティアの義父、ブラック・クラールハイトは何かを確認するように俺を見つめ、椅子に座った。どうやら、あの物言いからして俺の何かを知っているようだな。
「申し訳ないのですが、初対面だと思うのですが……。一応、自己紹介しますと、俺……いや、私はカイトです。レベル売買を生業としており、御存知かもしれませんが……こちらのメイドであるルナと共に経営しております」
「知っておるよ。君の事もルナ様の事もな。カイト殿、キミをルナ様に紹介したのは、この私だからね」
「え……そうだったのですか。覚えが全くないのですが……」
そう、まったく身に覚えがなかった。
覚えている記憶はひとつ。
七つの貴族には属さないという、大貴族『エクリプス』のお世話になっていたのは覚えている。その時、騎士に面倒を見てもらって――…。
あれ。
あの時、俺は……ソレイユに会ってる?
ソレイユの部下だという、クレールとアメリアとも会ってるような。なぜか一瞬だけ記憶が蘇った。でも何かが引っ掛かって思い出せない。
「――それは違いますよ、ブラック卿。貴方は、エクリプス家にカイト様を押し付けたのではありませんか。己の保身の為に」
鋭い刃のようにルナは言い切った。
なんだって……押し付けた?
「……そ、それは……いやぁ、最近、物忘れが酷くて……覚えておりませぬな。ですが、カイト殿を召喚したのは、我が義娘・ミーティアでありますぞ。それを忘れてはなりませんな……だから、今日はお呼びした次第なのですよ、ルナ様」
少し焦りながらも、ブラック卿は言葉を続けていく。それにしても……なんだ、この違和感。
「ほう、それで話とはなんだ」
ルナの口調が皇女のモノに変化する。
ズンと重くなる空気。
これはイカン流れだ。
「先ほども申し上げました通りですよ。カイト殿は、ミーティアが召喚した事実があるのです。【月と太陽の誓約】ですよ。それは、ミーティアが果たしたものです。つまり、彼はミーティアと契約……いや、婚約したも同然という事です。彼には、我がクラールハイト家の婿殿になって戴くという事ですよ」
「はぁ!?」
思わず俺は驚く。
一方でルナは――
「………………」
表情がよく見えないが、唇を噛んでいるような……これ以上は顔を覗き込めない。怖すぎる。
とにかく、この話はナシだ。
「ちょっと待ってください、ブラック卿。ミーティアは、そりゃ……魅力的な女の子ですよ。ダークエルフですし……ですが、突然、結婚などと……というか、ミーティア本人の気持ちだってあるし、婚約なんて交わした覚えもありません」
「それなら問題ない。ミーティアは、君を深く愛していると聞いている。実は……定期的に手紙を貰っていてね。そこに丁寧に綴らていたよ、カイト殿を愛していると。ほら、これが証拠だ」
ぴらっと取り出す手紙。
そこには確かにミーティアの筆跡が……。
『拝啓――お父さま。
世界を旅して一年、今日ようやく、いつかの手違いで召喚してしまった彼との邂逅を果たしました。今は、彼の【イルミネイト】というお店で借金返済の為、日々働いております。
彼は優しくて、困った時に助けてくれる本当のお兄ちゃんのようです。何よりも、ファルベ家によって背負わされた二億の借金を肩代わりしてくれたのです。あの召喚した瞬間から、彼を好きになった気持ちは変わりませんが、再び逢って、もっと好きになりました。以前よりも愛しております。
いつかこの気持ちを彼に打ち明けたいと思います。それまでどうか見守って戴けると幸いです――あなたの娘、ミーティアより』
…………マジか。
これはもっと驚いたな。
これが……ミーティアの気持ちだったのか。そして、俺は彼女によって召喚されたのか。そうだったのか……知らなかった。いや、記憶を誰かに操作されたんだ。
誰だ……いったい、誰が何のために俺の記憶を!
「――というわけでしてね、ルナ様。貴女様のお気持ちもよく分かりますし、大変心苦しいのですがね、申し訳ないのですが……カイト殿は諦めて下さると助かります」
「…………」
ぎりっと音がしたような。
「ルナ……?」
彼女の顔を覗き込もうとして――けれど、彼女は俺の手を取って、握って――、
目を閉じて俺に顔を近づけると――
「――――――」
柔らかい感触が重なった。
それはほんの僅かな時間ではあったけど……。
ルナはそっと離れて、目を開けた。
「これがわたしの気持ちです」
この意外すぎる状況にブラック卿は、腰を抜かし、口をパクパクさせ絶句していた。俺も驚いたし、腰を抜かしそうだよ……。
「だ、だ、だ、だが……接吻くらいでは……」
すげぇ動揺している。
俺もなんだけどな……。
それから、ブラック卿は突然発狂した。
「おのれぇ、オーロラ! 話が違うではないか……! ミーティアとカイト殿をくっ付けられると聞いたので話に乗ってやったというのに……! こんな事ならば、ルナ様の記憶も消去しておくべきだったかな……」
俺とルナを睨むブラック卿。
……そういう事か、コイツ!!
しかも、記憶の消去……そうか、コイツが……!
「ルナ、ブラック卿は何か企んでいるぞ」
「ええ……カイト様に関わる重大な秘密を握っているようです。……なるほど、オーロラはこれを伝えたくて、わざとブラック卿に取り入り、カイト様を拉致して……」
ったく……アプレミディ卿に自分で調べろって言われていたけど、これは大方、オーロラのお節介って事だろうな。やってくれる。
まあいい、これで真実に近づける……!
ミーティアの義父、ブラック・クラールハイトは何かを確認するように俺を見つめ、椅子に座った。どうやら、あの物言いからして俺の何かを知っているようだな。
「申し訳ないのですが、初対面だと思うのですが……。一応、自己紹介しますと、俺……いや、私はカイトです。レベル売買を生業としており、御存知かもしれませんが……こちらのメイドであるルナと共に経営しております」
「知っておるよ。君の事もルナ様の事もな。カイト殿、キミをルナ様に紹介したのは、この私だからね」
「え……そうだったのですか。覚えが全くないのですが……」
そう、まったく身に覚えがなかった。
覚えている記憶はひとつ。
七つの貴族には属さないという、大貴族『エクリプス』のお世話になっていたのは覚えている。その時、騎士に面倒を見てもらって――…。
あれ。
あの時、俺は……ソレイユに会ってる?
ソレイユの部下だという、クレールとアメリアとも会ってるような。なぜか一瞬だけ記憶が蘇った。でも何かが引っ掛かって思い出せない。
「――それは違いますよ、ブラック卿。貴方は、エクリプス家にカイト様を押し付けたのではありませんか。己の保身の為に」
鋭い刃のようにルナは言い切った。
なんだって……押し付けた?
「……そ、それは……いやぁ、最近、物忘れが酷くて……覚えておりませぬな。ですが、カイト殿を召喚したのは、我が義娘・ミーティアでありますぞ。それを忘れてはなりませんな……だから、今日はお呼びした次第なのですよ、ルナ様」
少し焦りながらも、ブラック卿は言葉を続けていく。それにしても……なんだ、この違和感。
「ほう、それで話とはなんだ」
ルナの口調が皇女のモノに変化する。
ズンと重くなる空気。
これはイカン流れだ。
「先ほども申し上げました通りですよ。カイト殿は、ミーティアが召喚した事実があるのです。【月と太陽の誓約】ですよ。それは、ミーティアが果たしたものです。つまり、彼はミーティアと契約……いや、婚約したも同然という事です。彼には、我がクラールハイト家の婿殿になって戴くという事ですよ」
「はぁ!?」
思わず俺は驚く。
一方でルナは――
「………………」
表情がよく見えないが、唇を噛んでいるような……これ以上は顔を覗き込めない。怖すぎる。
とにかく、この話はナシだ。
「ちょっと待ってください、ブラック卿。ミーティアは、そりゃ……魅力的な女の子ですよ。ダークエルフですし……ですが、突然、結婚などと……というか、ミーティア本人の気持ちだってあるし、婚約なんて交わした覚えもありません」
「それなら問題ない。ミーティアは、君を深く愛していると聞いている。実は……定期的に手紙を貰っていてね。そこに丁寧に綴らていたよ、カイト殿を愛していると。ほら、これが証拠だ」
ぴらっと取り出す手紙。
そこには確かにミーティアの筆跡が……。
『拝啓――お父さま。
世界を旅して一年、今日ようやく、いつかの手違いで召喚してしまった彼との邂逅を果たしました。今は、彼の【イルミネイト】というお店で借金返済の為、日々働いております。
彼は優しくて、困った時に助けてくれる本当のお兄ちゃんのようです。何よりも、ファルベ家によって背負わされた二億の借金を肩代わりしてくれたのです。あの召喚した瞬間から、彼を好きになった気持ちは変わりませんが、再び逢って、もっと好きになりました。以前よりも愛しております。
いつかこの気持ちを彼に打ち明けたいと思います。それまでどうか見守って戴けると幸いです――あなたの娘、ミーティアより』
…………マジか。
これはもっと驚いたな。
これが……ミーティアの気持ちだったのか。そして、俺は彼女によって召喚されたのか。そうだったのか……知らなかった。いや、記憶を誰かに操作されたんだ。
誰だ……いったい、誰が何のために俺の記憶を!
「――というわけでしてね、ルナ様。貴女様のお気持ちもよく分かりますし、大変心苦しいのですがね、申し訳ないのですが……カイト殿は諦めて下さると助かります」
「…………」
ぎりっと音がしたような。
「ルナ……?」
彼女の顔を覗き込もうとして――けれど、彼女は俺の手を取って、握って――、
目を閉じて俺に顔を近づけると――
「――――――」
柔らかい感触が重なった。
それはほんの僅かな時間ではあったけど……。
ルナはそっと離れて、目を開けた。
「これがわたしの気持ちです」
この意外すぎる状況にブラック卿は、腰を抜かし、口をパクパクさせ絶句していた。俺も驚いたし、腰を抜かしそうだよ……。
「だ、だ、だ、だが……接吻くらいでは……」
すげぇ動揺している。
俺もなんだけどな……。
それから、ブラック卿は突然発狂した。
「おのれぇ、オーロラ! 話が違うではないか……! ミーティアとカイト殿をくっ付けられると聞いたので話に乗ってやったというのに……! こんな事ならば、ルナ様の記憶も消去しておくべきだったかな……」
俺とルナを睨むブラック卿。
……そういう事か、コイツ!!
しかも、記憶の消去……そうか、コイツが……!
「ルナ、ブラック卿は何か企んでいるぞ」
「ええ……カイト様に関わる重大な秘密を握っているようです。……なるほど、オーロラはこれを伝えたくて、わざとブラック卿に取り入り、カイト様を拉致して……」
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