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追放されたので自由になった
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ギルドを追い出されて一週間。
思い返して見れば僕はラッキーだった。ひとりになってしまったけど、それは同時に自由を得た事に他ならなかった。
今の僕は自由だ。
今まで七人のメンバーと共に各地やダンジョンを巡った。でも、僕はいつも雑用係。荷物持ちなど面倒事ばかりを押し付けられていた。
――少し、一週間前を思い出す。
帝国にある拠点で僕は、ギルドマスター・バニラから呼び出された。相手は貴族で女性だ。しかも、婚約者でもあったけど――ほとんど意味を成してなかった。帝国に住む親たちが押し付けた関係。僕は数日も経たず奴隷扱いとなっていた。
「……カムイ、お前と付き合い始めて一ヶ月。お前は何も出来ない無能ね。他のメンバーにも迷惑が掛かっているし……。これ以上は、ギルドに居られると示しがつかない。出て行ってもらうわ」
「本当にいいのか? 僕と君が婚約していたはず」
「それは、お父様たちが勝手に決めたこと。私は伯爵令嬢よ? お前のようなよく分からない平民となぜ私が結婚なんてしなければならないの! 気色悪い! 婚約破棄よ!!」
そうか。そりゃ清々したよ。
なんて口に出来るはずもなく。しかし、僕はさっぱりした気分だった。もうバニラの顔を見なくて済むと思うなら気が楽だ。
確かに、バニラは貴族で美人だけど、その性格が終わっていた。結局、僕なんかよりもギルドメンバーのアレスという男と肉体関係を持っていたようだし、もともとバニラとの関係は終わっていた。
僕としても、きっかけさえあればギルドを出て行きたかった。バニラの事なんて何とも思っていないし、ギルドにも未練はなかった。
だから、決別の時だ。
「最後にもう一度。僕を追い出すんだね?」
「そうよ! もう二度と目の前に現れないで!」
そう言ってバニラは、アレスの元へ。
大男のアレスはニヤニヤとこちらを嘲笑う。
精々、その女と仲良くやるといいさ。
――僕はそのまま、帝国の街へ出た。ちょうど父さんと出くわして、深い溜息を吐いていた。
「カムイ、お前また女性に振られたのか」
「仕方ないさ、父さん。帝国の女性貴族は気が強い人が多いし、向こうが勝手に無能・平民扱いしてくるんだ」
「なら、お前がこのエメラルド帝国の『聖帝』だと名乗れば良いだろう。なぜ、そうしない」
「それは公平じゃないだろう。僕は本気の恋がしたいんだ。本物の愛を知りたい。なのに、貴族女性はこの扱い。参っちゃうね」
笑うと、父さんは頭を押さえて呆れかえっていた。父さんは、聖帝の座を退き、僕に継がせた。だから、今は僕が聖帝だった。聖帝が交代した事実は広まっているが、顔は知られていなかった。それが僕だと民は知らない。
「こだわりが強いな、お前は。まあいい……それで、これからどうするんだ」
「父さんから貰った、聖帝の能力『バベル』でタワーダンジョンを作る。父さんは、この能力でエメラルド帝国を築き上げたんだろ? なら、僕は宇宙まで伸びる高い塔を作ろうと思うよ」
「カムイ、妃はどうするのだ」
「さあね。僕は、しばらくタワーを作り続ける」
――そうして、僕は父さんから背を向けて走り出した。帝国を抜け、外へ。
外の世界は緑が生い茂っていた。スライムとかモンスターがたくさん、あっちこっちにいる。こちらを襲ってくる気配はない。
僕は“世界の中心”と呼ばれる【エテメンアンキ】へ向かった。そこだけは荒野で、なにもない。広大な土地だけが寂しく残されている。なぜなら、聖地とされており、帝国が管理しているからだ。
でも、今は僕の土地。
ここに、タワーダンジョンを作る。
聖帝の能力『バベル』をはじめて発動する。
塔作成能力【バベル】は、帝国に代々伝わる秘伝の特殊能力。右腕に全てに刻まれた『聖帝』の刻印が能力の証。無限の魔力源となっており、無から有を作る。創造としての奇跡を持ち、イメージするだけでそこに塔を作り上げられる。
ただし、一日に作れる階層は十階まで。なぜなら、そこにレアアイテムやモンスターの配置もされるから、完成に時間が掛かってしまうのだ。ちなみに、アイテムもモンスターも完全なランダム。ただし、一階とか十階程度は難易度もイージーに設定されるようだった。
父さんの言う事が確かなら、だけど。
僕は、なにもない土地に手を翳し、イメージしていく。そうだな、塔は大きく強固でカッコイイのが良い。
まずは試しに一階をそこに作る。
ドンッと突き上げるような地震が起きると、そこには見事な塔の『一階』が完成していた。まだ塔とは言えないけど、まずは記念すべき出入口が出来上がった。
よし、この調子でどんどん高い塔を作り上げていこう。
思い返して見れば僕はラッキーだった。ひとりになってしまったけど、それは同時に自由を得た事に他ならなかった。
今の僕は自由だ。
今まで七人のメンバーと共に各地やダンジョンを巡った。でも、僕はいつも雑用係。荷物持ちなど面倒事ばかりを押し付けられていた。
――少し、一週間前を思い出す。
帝国にある拠点で僕は、ギルドマスター・バニラから呼び出された。相手は貴族で女性だ。しかも、婚約者でもあったけど――ほとんど意味を成してなかった。帝国に住む親たちが押し付けた関係。僕は数日も経たず奴隷扱いとなっていた。
「……カムイ、お前と付き合い始めて一ヶ月。お前は何も出来ない無能ね。他のメンバーにも迷惑が掛かっているし……。これ以上は、ギルドに居られると示しがつかない。出て行ってもらうわ」
「本当にいいのか? 僕と君が婚約していたはず」
「それは、お父様たちが勝手に決めたこと。私は伯爵令嬢よ? お前のようなよく分からない平民となぜ私が結婚なんてしなければならないの! 気色悪い! 婚約破棄よ!!」
そうか。そりゃ清々したよ。
なんて口に出来るはずもなく。しかし、僕はさっぱりした気分だった。もうバニラの顔を見なくて済むと思うなら気が楽だ。
確かに、バニラは貴族で美人だけど、その性格が終わっていた。結局、僕なんかよりもギルドメンバーのアレスという男と肉体関係を持っていたようだし、もともとバニラとの関係は終わっていた。
僕としても、きっかけさえあればギルドを出て行きたかった。バニラの事なんて何とも思っていないし、ギルドにも未練はなかった。
だから、決別の時だ。
「最後にもう一度。僕を追い出すんだね?」
「そうよ! もう二度と目の前に現れないで!」
そう言ってバニラは、アレスの元へ。
大男のアレスはニヤニヤとこちらを嘲笑う。
精々、その女と仲良くやるといいさ。
――僕はそのまま、帝国の街へ出た。ちょうど父さんと出くわして、深い溜息を吐いていた。
「カムイ、お前また女性に振られたのか」
「仕方ないさ、父さん。帝国の女性貴族は気が強い人が多いし、向こうが勝手に無能・平民扱いしてくるんだ」
「なら、お前がこのエメラルド帝国の『聖帝』だと名乗れば良いだろう。なぜ、そうしない」
「それは公平じゃないだろう。僕は本気の恋がしたいんだ。本物の愛を知りたい。なのに、貴族女性はこの扱い。参っちゃうね」
笑うと、父さんは頭を押さえて呆れかえっていた。父さんは、聖帝の座を退き、僕に継がせた。だから、今は僕が聖帝だった。聖帝が交代した事実は広まっているが、顔は知られていなかった。それが僕だと民は知らない。
「こだわりが強いな、お前は。まあいい……それで、これからどうするんだ」
「父さんから貰った、聖帝の能力『バベル』でタワーダンジョンを作る。父さんは、この能力でエメラルド帝国を築き上げたんだろ? なら、僕は宇宙まで伸びる高い塔を作ろうと思うよ」
「カムイ、妃はどうするのだ」
「さあね。僕は、しばらくタワーを作り続ける」
――そうして、僕は父さんから背を向けて走り出した。帝国を抜け、外へ。
外の世界は緑が生い茂っていた。スライムとかモンスターがたくさん、あっちこっちにいる。こちらを襲ってくる気配はない。
僕は“世界の中心”と呼ばれる【エテメンアンキ】へ向かった。そこだけは荒野で、なにもない。広大な土地だけが寂しく残されている。なぜなら、聖地とされており、帝国が管理しているからだ。
でも、今は僕の土地。
ここに、タワーダンジョンを作る。
聖帝の能力『バベル』をはじめて発動する。
塔作成能力【バベル】は、帝国に代々伝わる秘伝の特殊能力。右腕に全てに刻まれた『聖帝』の刻印が能力の証。無限の魔力源となっており、無から有を作る。創造としての奇跡を持ち、イメージするだけでそこに塔を作り上げられる。
ただし、一日に作れる階層は十階まで。なぜなら、そこにレアアイテムやモンスターの配置もされるから、完成に時間が掛かってしまうのだ。ちなみに、アイテムもモンスターも完全なランダム。ただし、一階とか十階程度は難易度もイージーに設定されるようだった。
父さんの言う事が確かなら、だけど。
僕は、なにもない土地に手を翳し、イメージしていく。そうだな、塔は大きく強固でカッコイイのが良い。
まずは試しに一階をそこに作る。
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