異世界で勇者をすることとなったが、僕だけ何も与えられなかった

晴樹

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77話 酔っ払い

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「そんな事決まってるじゃねぇか」とおじさんは言う。そして続けて「王様が死んだのは、王様に敵対する連中の仕業だよ。俺はな、昔は城で働いていたから、今でもそう言う話が入ってくるんだよ」
と昔自分が城で働いて居た事を説明する。多分、今も働いている元同僚からそう言った話が入ってくるのだろう。

「そうなんですか。と言うことは、王様が病死じゃないという結果が出たってことですか?」
と僕は問いかける。
王様の死が病死ではないと考えついても、正確な情報はわからないでいた。
このおじさんが本当に城で働く人から情報が入ると言うのなら、その情報が正しければ真実となる。
しかし、おじさんは首を横に捻っている。そして、こう言う。
「いや~、そんな事はない。だがな、王が死んだのは魔力酔いではないかって言われてるんだ」
正確な情報ではないらしい。
『魔力酔い』で死んだって本当なのだろうか。
しかしもしも、『魔力酔い』で死んだのなら、王様よりも魔力の強い人間の仕業って事になるのか?
そこで、必要な情報は他にもあった。
それは……
「それで、王様の魔力は強いんですか?」
そう、王様の魔力の強さだ。
それがわからなければ、誰がやったのか想像もできない。
おじさんはニヤリと笑う。そして、
「そりょ、王様じゃからな! その魔力はそんじゃそこらのものよりも強いものだった!! まぁ、全盛期に比べれば弱っているだろうがな。だから、魔力酔いで亡くなったというなら、犯人が絞られるんじゃ」
それって……
「誰なんですか? 犯人は」
「時期王候補のジークムントとお前さんの仲間の勇者……確か、八雲とかいう小僧のどちらかだろうな!」
と酔っ払いのおじさんは言う。
八雲じゃないから、犯人はジークムントという男か……?
一体どういう人なのだろうか。
どこかで出会っているかもしれない。
それよりもそんなに魔力の強い人が居たなんて知らなかった。今の話し方からして、ジークムントという人物は八雲と同等の魔力を持つことが予想できた。そんな人間があの城に2人もいたとなると、他の人はいつ『魔力酔い』になってもおかしくないな。
城内でも問題視されてそうだけど。
と僕が考えている間に一緒に居た笠井さんが声を荒らげながらおじさんに絡む。
「ちょっと、私の仲間がやったっていうわけ!」
笠井さんがおじさんに怒る。突然のことで出遅れたが、おじさんに今にも襲いかかろうとしている笠井さんを止めに入った。
「ちょっと待って、笠井さん! 別に八雲がやったなんて言ってないよ。ただ魔力が強い人を言ってるだけだから。八雲がやってない事は僕が知ってるよ」
暴れる笠井さんを諭す。
そんな場面におじさんは口を開いた。
「馬鹿な奴らだ。こんなガキが勇者なんて笑える。へへ、お前さん達に忠告してやる。城内ではお前さん達の扱いについて話し合いをしているらしい。もしかしたら、王様が変われば、お前さん達は処分されるかもな。へへ」
とおじさんは言う。
そんなことが話し合いされていたのか。確かに呼び出した王様は死んでしまったからな。
それに勇者反対派が存在している事も気づいている。次期王様が勇者を必要としたなら、延命できるが、そうでなければ……僕たちは…………

早く元の世界に戻るためのゲートを探す必要がある。
最悪の事態になる前に。
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