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第154話 趣味
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コンコンッ
僕は妹の部屋のドアをノックした。
「お兄ちゃんだ」
と僕は名乗った。
「私にはお兄ちゃんなんていません。いるのはお姉ちゃんだけです」
とドア越しに妹から返事が返ってきた。
それもとんでもない言葉で返ってきた。
これは重傷だ。
僕はそう思うと、無理やりドアを開けることにした。
あれ……?
無理やりドアを開けようと力を入れたのだが、ドアを開けることができなかった。
でもそれは普通のことだと思うかかもしれない。なぜなら今の世の中には鍵というものがあるからだ。普通部屋のドアが開けることができない場合は、中から鍵が閉められていると思うだろう。
しかし、ウチの家で鍵が付いているのはトイレと玄関くらいなものだ。妹の部屋のドアに鍵は取り付けられていない。
ということは考えられるのは一つしかない。
中から妹がドアを思いっきり押さえている、という事実だ。
なかなか力があるんだな、千穂。
妹の力が僕に匹敵するぐらいに成長していることをうれしく思った。
その反面妹の力と同等になってしまった僕の非力さに涙が出そうになった……
「話し合おう。話せばわかる」
「無理」
「そこをなんとか」
「嫌」
「そこを……」
「絶対ダメ」
「お兄ちゃんの服あげるから」
「……」
僕は力で敵わないことを理解した。
そこで泣き落とし作戦を決行した。
土下座だろうがなんだろうがやってやる、という覚悟だった。
しかし、ドアの前で泣きついた僕を妹はバッサバッサ切り落としていく。
これぞ泣き落とし作戦といわんばかりだ。いや、どちらかというと泣き落とされ作戦といったほうが正しいか。
……ダメじゃん。
「お兄ちゃん」
「な……」
僕は驚きを隠せなかった。
それは開かないと思っていたドアが開き、そこから妹が顔をのぞかせたからだ。
「さっきのほんと?」
「え、あ、うん……?」
さっきなに言ったっけ。
記憶を巡らせて思いだす。
服をあげると言ったな、確か……って僕の服が欲しいのか!
「あ、えっと、僕の服で言いなら好きなだけ持っていってくれていいぞ」
「ほんとに!」
「う、うん」
さっきまで泣いていたとは思えないくらいの笑顔になった。まるで天使だ。
妹が喜んでくれるなら僕の服なんて、すべてあげてもいいとさえ思えてくるから不思議だ。たぶんこれが兄というものなのだろう。
そしてその後部屋から出てきた妹と仲良く僕の部屋に行った。
言うまでもなく妹に僕の服をたくさん持っていかれた……わけだが。
当然母からもらった女物の服以外の服の中からだ。そのせいで男の時に着る服よりも女装した時に着る女物の服の方が多くなったのはナイショさ。
まぁ、妹の機嫌が直っただけよかったといえるだろう。
これで明日は大丈夫そうだ。
僕は気分よく、部屋で寝むりについた。明日の準備をせずに……
僕は妹の部屋のドアをノックした。
「お兄ちゃんだ」
と僕は名乗った。
「私にはお兄ちゃんなんていません。いるのはお姉ちゃんだけです」
とドア越しに妹から返事が返ってきた。
それもとんでもない言葉で返ってきた。
これは重傷だ。
僕はそう思うと、無理やりドアを開けることにした。
あれ……?
無理やりドアを開けようと力を入れたのだが、ドアを開けることができなかった。
でもそれは普通のことだと思うかかもしれない。なぜなら今の世の中には鍵というものがあるからだ。普通部屋のドアが開けることができない場合は、中から鍵が閉められていると思うだろう。
しかし、ウチの家で鍵が付いているのはトイレと玄関くらいなものだ。妹の部屋のドアに鍵は取り付けられていない。
ということは考えられるのは一つしかない。
中から妹がドアを思いっきり押さえている、という事実だ。
なかなか力があるんだな、千穂。
妹の力が僕に匹敵するぐらいに成長していることをうれしく思った。
その反面妹の力と同等になってしまった僕の非力さに涙が出そうになった……
「話し合おう。話せばわかる」
「無理」
「そこをなんとか」
「嫌」
「そこを……」
「絶対ダメ」
「お兄ちゃんの服あげるから」
「……」
僕は力で敵わないことを理解した。
そこで泣き落とし作戦を決行した。
土下座だろうがなんだろうがやってやる、という覚悟だった。
しかし、ドアの前で泣きついた僕を妹はバッサバッサ切り落としていく。
これぞ泣き落とし作戦といわんばかりだ。いや、どちらかというと泣き落とされ作戦といったほうが正しいか。
……ダメじゃん。
「お兄ちゃん」
「な……」
僕は驚きを隠せなかった。
それは開かないと思っていたドアが開き、そこから妹が顔をのぞかせたからだ。
「さっきのほんと?」
「え、あ、うん……?」
さっきなに言ったっけ。
記憶を巡らせて思いだす。
服をあげると言ったな、確か……って僕の服が欲しいのか!
「あ、えっと、僕の服で言いなら好きなだけ持っていってくれていいぞ」
「ほんとに!」
「う、うん」
さっきまで泣いていたとは思えないくらいの笑顔になった。まるで天使だ。
妹が喜んでくれるなら僕の服なんて、すべてあげてもいいとさえ思えてくるから不思議だ。たぶんこれが兄というものなのだろう。
そしてその後部屋から出てきた妹と仲良く僕の部屋に行った。
言うまでもなく妹に僕の服をたくさん持っていかれた……わけだが。
当然母からもらった女物の服以外の服の中からだ。そのせいで男の時に着る服よりも女装した時に着る女物の服の方が多くなったのはナイショさ。
まぁ、妹の機嫌が直っただけよかったといえるだろう。
これで明日は大丈夫そうだ。
僕は気分よく、部屋で寝むりについた。明日の準備をせずに……
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