僕の兄は◯◯です。

一章

生呑活剥

薬指……あー、何だか薬指言うの飽きたから戻そ。広太の反撃により色々カオスになった現場が、ようやく落ち着いた頃。


そういやと、落ち着いたからこそふと湧いた疑問を、我が物顔で寛いでいる赤髪先輩、伊藤先輩にぶつけた。


「あの……伊藤先輩がここに訪ねてきたのは、僕が本当に弟なのかどうかを訊きに来たからっすよね？」


疑問形じゃなく、結論づけた質問。


あの人を大事に思い、そして好意を寄せている人だからこそ思った、結論。


好きな人を知りたいと純粋に想い、その相手が高嶺の華だからこそ、彼をつけ狙う周囲の危険から遠ざけたいが一心で、的確に情報を集める。


全ては彼の為に。人を利用する卑劣な手段も問わないほど、恋している先輩だからこその問いかけ。


予想を裏切らず「そうやね」と笑顔で言い切った伊藤先輩はでも、と言葉を続ける。


「最初は確認だけのつもりで此処に来たけど、単純にあんさんを知りたかったなら……ってのも、あったかな」


「僕を……ですか？」


驚いて自分を指差せば、うんと頷かれる。


「ワイはこんなんでも幸の親衛隊長ちゅー肩書きがある。幸を守り、幸せを見届けるそんな役目が。幸は好きやしそれは構わん。けどな、幸は人を無意識に惹きつけ過ぎる。容姿はもちろん、性格の部分でも」


「はぁ…」


頬に手を当て、主婦よろしく溜め息を吐く伊藤先輩。


その姿は物凄く哀愁が漂っている。苦労してんだな（他人事）


「幸を大切にしてるからこそ、彼に起こりうる危険から遠ざけたくて、色々調べてこうやって牽せっ……お話して解決して来たんやけど」


「……………。」



今さらっと牽制って言おうとしたね、この人。