僕の兄は◯◯です。

一章

③

　嵐が過ぎ去った翌日の朝、早くに目が覚めた僕はゆっくりとベッドを降り、閉めきったカーテンの前に立つ。


閉じた水色のくすんだカーテンを一気に引き、暖かくも柔らかな日差しを一身に浴びて、その眩しさに目を細めてつつも、窓を開いた。


…おはようございます皆さん。すみませんが取り合えず、これだけは言わせてください。











「――――っ広太ごめん、浮気してたの僕だったぁぁぁあぁぁあ!!」










肺に溜まっていた空気全て使って叫んでから、開け放った窓を静かに閉じる。



そして何事もなく、身支度を始めた僕の朝は文字どおり荒んでいた。


「なんだあの夢…腐りすぎてとうとう夢進出しちゃったのか……しかも相手が僕とかクソすぎる。相手かわいそうだろ！！」


半ギレのままひとまず部屋を出て、洗面所へ向かう。


もうとっくに起きていた広太を発見して、思わず一歩立ち止まった。……何故だろう。変な夢を見たせいか、やけに気まずいこの心境。


実際のところ、あの夢が何なのか覚えてないというか知らないんだけどさー…なんと言うか…はぁ。


まるで浮気を隠してる夫の気分なのは、何故？


気のせいだ、気のせいと止まっていた足を動かして隣に並び、歯ブラシを手に取る。


歯磨きを戻すついでにチラリと隣を見れば、偶然なのかボーッと歯を磨いていた広太と目が合った。


「…………何？」


「…………いや、別に」


 「あ、そう」


「おう」


それきり終結する会話。歯を磨く音だけが虚しく響くだけで、場が和むこともなく。



えー……何この、気まずい雰囲気。