オタク君に優しくなったギャルさん

たかしモドキ

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【15】きっと沢山無くしたのよ

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「おばあちゃんが、階段を降りているときね。
 ああ。なんだか危ないな。怖いな。って思ってたの、
 そしたら、かなたちゃんが側まで来てくれてねぇ」

あの人波をかき分けて……ばあちゃんのところまで?

「あんなに綺麗にセットしてたのにねぇ、
 髪なんかボサボサで、着物も崩れて、
 すごく頑張って来てくれたのよぉ」

そりゃそうだ。
あんな隙間も無いほどの人波をかき分けて行けば、
身だしなみなんか、気にしていられない。

「それでねぇ、かなたちゃん。おばあちゃんの腕を掴んで
 階段の端まで引っ張って行ってね。
 それで、ビックリする事なんだけど。突き飛ばされたのよ」

「突き飛ばされた?ギャ……御崎さんに?」

「ええ。そうなの。
 おばあちゃん、そのまま神社の生垣に倒れちゃって。
 ビックリして、どうして?って、かなたちゃんを見たの
 そしたらね、かなたちゃん。おばあちゃんにお辞儀したのよ」

ばあちゃんは、興奮気味で声が震えている。

「それからよ!人がね!ドサ~って!!」

「うん。もういいよ。あばあちゃん
 ありがとう、少し休もうよ」

「……ええ……そうねぇ…ふぅ~
 クラクラしてきたわぁ」

ばあちゃんがベッドに横になるのを見届けて、
僕も、パイプ椅子に腰掛ける。

どうにもおかしい。

ギャルさんは、どうして、ばあちゃんの所まで行ったのだろう。
普通では考えられないと思う。
綺麗に外見を整えた女子高生が、それを犠牲にしてまで
今日出会ったばかりの老人の為に動くだろうか?

いや。やっぱり普通じゃ考えられない。

ギャルさんの行動は、まるで
あの事故が起きるのを知っていたかの様だ。

あの日のギャルさんの行動は、不可解な事が多い。

着物姿に、スニーカー。
やたら時計を気にする視線。
ばあちゃんに対しての行動。

………ギャルさんは、事故が起きるのを知っていた。

そう考えると、辻褄が合う。

「ああ。そうよ。思い出したわぁ」

「何を?」

「かなたちゃん、この病院に居るみたいよ」

「え!?無事なの!?」

「わからないけど……看護師さんが言ってたのよぉ。
 かなたちゃんが、おばあちゃんが無事かどうか知りたいって、
 それで、知り合いですか?って」

「それじゃ……」

「かなたちゃんにお礼しなきゃね。命の恩人だもの。
 たけるちゃん。かなたちゃんに会いに行ってくれる?
 おばあちゃん、まだ動き回れないからねぇ、代わりに」

「わかった。うん。行ってくるよ」

僕は、パイプ椅子から立ち上がり、
ギャルさんの居る病室を割り出す算段を考える。
そうだ、病室に入る前、エレベーターを降りてすぐのところに、
面会に来た家族の病室番号とか、自分の名前を記入する所があった。
僕も名前を書いたから、ギャルさんの家族が来ているのなら
きっと同じ苗字の名前を探せば部屋番号がわかるはずだ。
この病院は7階まであるから、全部の階をチェックして回ろう。
でも……着の身着のまま来たからな、こんな格好で会うのは恥ずかしい……
いや!何を気にする事がある。そんな事いにしている場合じゃ無いだろう。
しっかりしろ僕!彼女は、大怪我を負っているかもしれないんだぞ。
でも……会って何を話せばいいんだ。ばあちゃんのお礼を言って、
それで……

「たけるちゃん」

「え?」

「かなたちゃんが、おばあちゃんを助けたのはね、
 多分、たけるちゃんの為だと思うの」

「僕の為?なんで……」

「あの時、私にお辞儀した、かなたちゃん。
 あなたのお母さんが、お嫁に行く時と、おんなじ姿勢だった」

「……お母さんと?」

「ええ………それとね、病気で死んじゃう前の顔をしていたの。
 おばあちゃんに、たけるちゃんをお願いした時の……お母さんの顔。
 自分は良いからって……そう言う顔よ」

僕のお母さんは、僕が小学生の頃に病気で死んだ。
長い間、入院していた人だから、あまり記憶が無い。

「あの子はきっと、大事な物たくさん無くしたのね。
 きっと、きっと沢山無くしたのよ。
 似てるのよ、戦争で空っぽになった人達と、よく似てる」

わからなかった。
僕には、そんな重厚な経験は無い。
けど、ギャルさんが豹変した裏側には、
ばあちゃんの話にうなづける様な何かがきっとある。

それと僕がどう繋がるのか。

僕は、それを知る義務があると思った。
あるいは、それを責任感と呼ぶのかもしれない。

「行ってくる」

「ええ。行ってらっしゃい。
 きっと、あの子の手を握ってあげてね
 もう無くさないって、安心させてあげて」

「うん」

そう答えてみたものの。
僕には、それが何を持って成せるのか、
全く想像がつかない。

けど、ばあちゃんの言う通りにしてみよう。

手を握って、きちんと話をするんだ。
妄想じゃ無い、本物の彼女を知るために。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ギャルさんの病室は、あっさりと見つかった。
一つ上の階の、一人部屋だった。

やっぱり名簿を見ると言うアイデアは良かった。
なんだかストーカーじみていて、少し抵抗感があったけど、
今は、感情の高ぶりが、行動を後押ししてくれた。

でも、面会の名簿にあったのは、
ギャルさんの家族の名前では無く、名切さんの名前だった。

家族と仲が良くないのかな?っと邪推じゃすいしたけど、
今はそこんとこは、どうでも良い。

ギャルさんの部屋の前に立つ。

「…………」

考えるな。ノックして、返事が返ってこなくても。
僕は、この扉を開けるんだ。
あれやこれや考えるのは、後にしよう。

決心を決めて、二度、指で扉を叩く。

「はい。どうぞ」

聞き慣れた声が聞こえた。
心臓がドクンと跳ねて、全身に電気が走る。

僕は、意を決して中へと入った。
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