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16 最終話
しおりを挟む「今日、結婚しよう」
「え?」
「あっ、結婚式はちゃんと5日後にするよ。そうじゃなくて二人で。二人だけの結婚式をしたい。皆に祝福してもらうのは嬉しいけど、俺と透だけで誓いたい」
高橋にそう告げる。
高橋の胸に恥ずかしくて顔を押し付ける。
「伊織……」
「それに結婚式の日って、準備とかバタバタで大変だと思うんだ。それに式の後に披露宴とかあるだろ。けっこう遅くまで披露宴は続くって聞いているし。その、きっと緊張するだろうし、凄く疲れてしまうと思うんだ。だから……。その日は出来ないっていうか。あっ、違うしっ。できないっていうのは、ほらっ、あのっ」
何を言っているのか自分でも分からなくなってきた。
高橋に抱き付いたら、抱きしめ返されて逃げられないけど、もがいてしまう。
「伊織、嬉しい」
「本当? 俺、我がままじゃない?」
「我がままなものか。俺も今日伊織と誓いたい」
「うん」
抱きしめられていた腕を離してもらい、俺と高橋は向かい合う。
そして、手を取り合う。
「高橋透は、三島伊織を一生愛して離しません」
「三島伊織は、高橋透を一生愛して離れません」
二人して、おでこを合わせて小さく笑う。
格式ばった言葉はいらない。
心を込めた言葉だけでいい。
そっと触れるだけの誓のキス。
「透。愛してる」
俺は高橋の胸に手をついて、ちゃんと言葉にする。
涙が零れてきて……。ヤダな、俺きっと今すごいブスになってるよ。
高橋は、俺の言葉に破顔すると、キスを返してくれた。
いやまてっ。ちょっと待て。
このキスやばいやつ。前回死にかけたやつ。
頭の後ろと背中をガッチリ固定されて、俺は逃げるどころか動けなくなった。
目の前が暗くなってきた。
やめてーっ!
「ゲホッ、ごほっ、お、俺を殺す気かーっ。げほげほ」
「伊織。伊織。ああ俺は嬉しいっ」
「だから聞けっ。俺の話を聞けっ」
「伊織ーっ」
だめだ、高橋が壊れた。
俺に頬ずりを延々としている。
しょうがない。
俺はまとわり付く高橋を一旦引き剥がして、頭のベールに手をかける。
ベールはずり落ちないよう、何か所か目立たない所をピンでとめてある。
ピンを取り終わり、スルリとベールを外すと、ベッド横の衣装掛けにかける。次に上着に手をかける。
「もう脱ぐのか? こんなに似合って可愛いのに」
「うん。汚れたら大変だし。先に進めないしな」
「先?」
「おうよ。今から新婚初夜だぜ」
「!?」
高橋が目を見開いたままフリーズした。
セクハラ大王のくせに、目が落ちそうですよ。
「俺はさ、我がままな上に貪欲なんだよ。もう透から離れられないし、離さない。そのために俺は頑張るよ。透を押し倒して身体も手に入れちゃおうって作戦だ」
高橋の顔が見られない。声が震えそうになるのをなんとか堪える。
衣装を汚すことはできないから、早く脱いでしまいたいのに、手が震えて上手くいかない。
俺の震える手を高橋の手が包み込む。
「俺にさせて欲しい」
「お、おう。任せた」
高橋は、すんなりと俺の婚礼衣装を脱がすと、衣装掛けにかけてくれた。
「しなくていいっ。下着はしなくていいからっ。自分で出来るからっ」
下着まで脱がそうとする高橋から逃れようと、ジリジリと後すざっていたら、ベッドにぶつかって、これ以上はさがれない。
「何を言っているんだ。これからが一番の醍醐味じゃないか」
「な、なんだよっ。俺の下着なんか脱がして、何が楽しいんだよ」
「メチャクチャ楽しい」
なぜ、きっぱりと言い切るんだよ。
高橋は、真面目な顔をしたまま、両手をワキワキとさせながら俺に近づいて来る。
ベッドに尻もちをつく形で座り込んだ俺の下着を、高橋は神業のように簡単に脱がしてしまった。
「う~」
「伊織。可愛い」
高橋は、蜂蜜に砂糖をまぶしたような甘々な表情をしている。
この頃一緒に風呂に入っているから、裸なんか今更なんだが、やっぱりメチャクチャ恥ずかしい。
「ごめん、俺どうしたらいいか分かんない。よ、よろしく頼む」
男は度胸だ。頼むぞ高橋。
顔を見ることができないから、そっぽを向いたまま、つっけんどんに言ってしまう。
「ぶふっ!」
高橋がなぜか鼻血を出しそうな雰囲気で、顔を覆っている。どうした?
両手で顔を挟まれて、口づけされる。
ひどく優しい。
段々と口づけは深くなっていくけど、今度は大丈夫。鼻呼吸。鼻呼吸。
俺は既にスッポンポンだから、高橋に触れられるとダイレクトに感じる。
風呂場ではスポンジ越しだったから、直接肌を撫でられる初めての感覚に震える。
「伊織。無理しなくていい」
俺が怖がっているのと勘違いしたのか、手を離そうとする。
「ば、ばかっ。怖がってなんかいない。言っているだろう、俺が身体で透を篭絡しようとしているんだって」
「もう籠絡されている」
「そうじゃなくって、メロメロにしようとしているの」
「もう、メロメロだ」
「ぐぐぐ」
「大丈夫、焦らなくていい。俺は伊織を愛している。この手を離すことは無い」
高橋が俺の手をとって、キスを落とす。
「お、おう。俺も離れる気はないぜって、違う。そーじゃなくって、俺が……」
「?」
「お、お、俺が透と一つになりたいのっ。俺が透を欲しいのっ!」
にらむように高橋を見るけど、たぶん俺は顔が真っ赤だ。
高橋の表情が、いきなり無くなった。
高橋は俺にのしかかってくると、俺の顔の横に両手を付く。壁ドンならぬベッドドンだ。
「どんな思いで我慢していると思っているんだ」
高橋のため息のような声が聞こえてくる。
「伊織。優しくする……たぶん」
おいっ、ちょっと待て。最後が不穏。たぶんって何だよ。
それからは、されるがままというか、なすがままというか。
翻弄されるだけで、ただ喘ぐだけしかできなかった。
全身に触れられて、全身にキスされて……。
恥ずかしいし、身体が勝手に反応するし、俺は意識が飛びそうだった。
「ちょっ、ちょっと。うわぁっ。やめろ、高橋っ」
あろうことか高橋は、俺自身を咥えやがった。
「汚いからっ。そんなことするなっ」
「うー、うんぐぐごごぐぐ」
「くっ、咥えたまま喋るなっ。ああっ」
俺は初心者なのに。刺激が強すぎる。
「離して、もう駄目だから。うぐっ。も、やばいからっ」
俺の懇願を高橋は無視して、わざとなのか大きな音をたてて、しゃぶり続ける。
両太ももを押さえられ、逃げることも動くことすら叶わない。
「あ、あっ、あああ」
とうとう俺は、高橋の口の中に達してしまった。
「ひど、ひどい。離してっていったのに。駄目だっていったのに。高橋のバカー」
荒い息のまま、なんとかヘロヘロの声でなじる。
「透。高橋呼びに戻っているぞ」
え、今気にする所そこ。
それより、今俺が出したヤツどうした。もしかして口の中。
「ダメだ透っ。ぺっしろ、ぺっ!」
高橋は、焦る俺の言葉なんか聞いてない。
脱力したままの俺の、あろうことか後孔に触れてきた。
「あ」
そろりと指が入ってくる。
クチュクチュと動くそれは、少しずつ大きな動きになっていき、本数も増えていく。
いつの間にか、粘り気のある液体が加えられているみたいで、音がだんだんと大きくなっていく。
「も、いい。もういいからっ」
自分の身体の中の感覚に付いて行けない。
痛くはない。
ただ恥ずかしい。いたたまれない。
時折、指がかすめる場所に身体が飛び跳ねる。
「早く来て欲しい」
この状態をどうにかしてほしかった。
触れられる場所全てが熱を持ったみたいで、それが身体の奥に集まってきて、もどかしい。
「今度は伊織にも気持ちよくなってほしい」
「……うん」
俺はただ、身体の力を抜く努力以外できないのだけど。
後孔から指が抜けていく。
すぐに指とは違う物が押し当てられる。
物欲しげに開閉していた後孔は、纏わり付くように飲み込みだす。
「うぐっ」
でかい。でかい。でかい。
思った以上の圧迫感に身体が強張る。
無意識に高橋の背中に爪を立てる。
「息をして」
優しく頬を撫でられているのに気付く。
「あ……」
なんとか身体の力を抜くように息を吐きだす。
その瞬間を狙っていたのか、高橋は俺の中に一気に押し入ってきた。
「うわあっ」
「全部入ったよ」
高橋の表情とか、仕草とか、声とか。憶えていたいと思うけど。
俺はただ、高橋に縋ることしかできなくて。
「嬉しい」
心の底からの思いが、ポロリと口からあふれ出た。
俺が意識を保っていられたのは、そこまでだった後は……。
「もう、やめ。もう、無理。むりだからっ」
俺の懇願は、1年間我慢を続けていた高橋に届くことはなくって。
体格のいい高橋と小柄な俺が、同じ体力の訳はなくって。
もともと、人族の俺と魔族の高橋を比べられる訳はなくって。
延々と、延々と俺は高橋に貪られ続けて。
俺を助けてくれる人は誰もおらず、高橋の暴走は止まることはなく。
結婚式の当日朝まで、寝込んでいるはめになってしまったのだった。
「高橋のバカやろーっ!!」
*** *** ***
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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毎日更新を楽しみにしてました!
続編や番外編があれば嬉しいです。
tefu 様
感想をありがとうございました。
楽しみにしてくださって、嬉しいです。
この作品の続編や番外編は、今のところ考えておりません。
新しい作品でお会いできればと思っています。
|ूoωo。)
なんだぁ⋯⋯( ・᷄˛・᷅ )
前回の引きで、俺って魔族じゃん?って言うから、まさかの性別不問で生殖出来るんかと思た
ミル媛が妊婦な妄想してたのに⋯⋯.(≖ᴗ≖๑)੭᷅ʊʊ♡
まあ、仲良く暮らしてね
明日も楽しみにしてます
┃´-`)⁾⁾⁾
黑媛( * ॑꒳ ॑*)♡ 様
感想をありがとうございます。
高橋君の魔王様設定を生かし切れておりません。
バーンと魔法を使う場面が出したかった……。
お付き合いお願いします。
| ˶ ᷇ 𖥦 ᷆ ˵ )⁾⁾
いやぁ、高橋くん? 暴走というか、Going My wayというか、HAPPY Marriage 一直線のガチガチに囲い込みやなぁ(笑)
ずっとニコニコニヤニヤが止まりませぬ
家族に変な目で見られそうです
でも、ミル媛、男に二言はないらしいので、諦めて花嫁さん👰になってくれい(高橋くんが嫁という選択肢はないよね? たぶん)
でも、行動力と権力は高橋くんが上だけど、惚れた弱みというか、最終的に手綱を握ってるのはミル媛のような気がする(笑)
もう、旦那が主に見えて、裏返しのかかあ天下な新婚生活から将来までが視える(妄想)
明日も楽しみです♬
┃๑•̀ㅂ•́)و✧⁾⁾⁾⁾
黑媛( * ॑꒳ ॑*)♡ 様
感想をありがとうございます。
かかあ殿下は決まりでしょうね。たぶん高橋君は自分から尻に敷かれに行くでしょうから。
魔王様よりも強いミル。人族なのに。勇者かもしれませんね。
最終話が近づいてきました。
最後までお付き合いお願いします。