刺殺からはじまる侯爵令嬢、カロリナだってがんばります!

牛一/冬星明

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14.カロリナ、アザちゃんが迷惑がっているとは思わない。

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今日もアザを誘って大公園にやって来た。
小さな声で「私を誘わなくていいよね」と呟いているがカロリナは気にしない。
カロリナを見つけた駆け出しの冒険者の子供達が手を振っている。
いつ来るか判らないカロリナをよく待つものだ。

「カロリナ様、おはようございます」
「おはよう!」
「カロリナ様、今日も茶葉の採取ですか」
「ええ、そのつもりよ。今日は変わった茶葉を探してみたいわ」
(ここにそんなものありませんよ)
「カロリナ様、毎日でも会いたです」
「私もよ。でも、勉強で忙しいの!」
(忙しいなら来なくて結構です)
「カロリナ様、勉強っておいしいですか?」
「おいしくないわ。でも、貴族の義務なのよ」
(義務じゃない、義務じゃない、私を巻き込まないで!)
「今日も護衛に雇って貰えますか?」
「もちろん、お願いするわ」
(私は無給よ)

アザが心の声はカロリナに届くことはない。
子供達が「やった!」と歓声を上げた。
みんな大喜びだ。
普通の魔力もおびていない薬草は小籠1つで銅貨3枚しかならない。
銀貨1枚(銅貨100枚)は魅力的だ。

ガラガラガラと大きな音を立てて3台の馬車が大公園にやってくる。
馬車から降りてきたのはイェネー、クリシュトーフ、カールの三人だ。
ご当主から正式にカロリナの護衛を命じられた。
馬車が止めると、冒険者のリーダー役のレフが走ってゆく。

「イェネー様、クリシュトーフ様、カール様、今日もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
「よろしく、お願いします」
「うむ、頼む」
「お任せ下さい。皆、がんばって付いて行かせます」
「頼むよ」

3人がレフと固く握手をする。
子供達も3人に駆け寄った。
今ではみんな仲良しだ。
イェネー、クリシュトーフ、カールが増えて雇う冒険者も増えた。
最初は2人だったが今では10人も集まっている。

「カロリナ様。このイェネー、今日こそカロリナ様の為に多くの獲物を掴めてみせます」
「おはようございます。怪我をしないで下さい」
「大丈夫です」

イェネーとの会話にクリシュトーフが割り込んでくる。
仲のよいライバルだ。

「友達でも容赦はしないよ」
「言ったな!」
「今日も一番になってみせます」
「クリシュトーフ様、カロリナはがんばって頂けだけで感謝致します」
「なんとお優しい」
「本心からです」
「ご安心下さい。珍しい草木を見つけたなら報告致します」
「お気づかいありがとうございます」

二人に遅れてカールも話に割り込んでくる。
二人に比べるとちょっと細身であり、剣士には向かない。
本を読んでいる方が様になる。

「このカール、日々努力しております。必ず、この二人に追い付いてみせます」
「カール様、期待しておりますわ」
「はい、がんばります」

カロリナの営業スマイルが炸裂する。
優しい笑顔だ。
周りから見れば、美しい美女の周りキラキラした美少年が取り囲んでいる。

でも、本音は違う。
別に付いて来なくていいのに!
好き勝手にできないじゃない。
笑顔も面倒くさいわ。
三人はカロリナの護衛らしいが、護衛に護衛がついて大所帯になる。
大公園の一角にテーブルなどを広げて拠点を作ると貴族のピクニックのようになっていた。
カロリナは迷惑だった。

一方、アンブラにとって子守が増えて迷惑かと言えばそうでもない。
馬車には従者や侍女が同行する。
しかも三人には護衛も付く。
イェネーには武術にも優れた従長、クリシュトーフには騎士を止めた伯父、カールには金で雇った傭兵だ。
子守役は多いほど助かった。

イェネー、クリシュトーフ、カールの三人が狩りに向かうと、リーダーのレフと最年少の少年ジクと少女ニナが残った。
他の子は荷物持ちとして三人に付いてゆく。
いつものことである。

「アザ、今日はどこに行こうかしら?」
(どうして私に聞くのかしら?)

東の山はかなり回った。
アザはか弱い女の子なので危険な山奥には向かわない。
知っている所はすべて回ってしまった。
今更、聞かれても困ってしまう。

「カロリナ様、今日は山に入らずに河の周辺を見てはいかがですか?」

困っているアガを見かねて、レフがカロリナに提案してくれた。
助かった!
アザは一瞬そう思ったが、よく考えると問題がある。

「河? 山を越えるの」
(山越えとか言わないでよ)
「いいえ、山を迂回します」
(よかった………って、町にそばを通るじゃない。大丈夫かな?)
「いいわ! そうしましょう」
(ちょっと待って!)

カロリナはアザの手を取って歩き出した。

「カロリナ様、急がないで!」
「河、水遊びをしましょう」
「水がもう冷たいです」
「それは残念ね! でも、向こうの河は大きな河と聞いたわ。一緒に見ましょう」
(いえ、いえ、いえ、別に見たくありませんよ)

町の脇を通るので比較的に手入れされている。
でも、アザは絶対に近づかない。
町は町でも悪路と呼ばれる下町であり、余り治安がいい場所ではない。
タチ悪い者が因縁を付けてくるという不安だ。
だが、その心配はない。
アンブラがいれば、大抵は解決する。

でも、アンブラはカロリナが変なことを言い出さないかと首を傾げていた。
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