刺殺からはじまる侯爵令嬢、カロリナだってがんばります!

牛一/冬星明

文字の大きさ
19 / 103

15.カロリナ、木の実を食べて楽しむ。

しおりを挟む
カロリナはご令嬢様だ。
自分で料理を作ろうとか、作物を植えて育てようとか、馬の世話をしようなどとは言わない。
黄金芋を掘った時のようにエルしかいないなら手段を選ばずに手を汚して仕事もするが、小間使い(駆け出し冒険者)が要れば自分ですべてをやろうとはしない。
良くも悪しくも貴族であった。

「ジク、その薬草を取りなさい」
「はい、カロリナ様」
「ニナ、あの木の実は食べられるのかしら?」
「判りません」
「アザはどう思います」
「食べられますが、おいしくありません。苦いだけです」
「ニナ、1つ取って下さい」
「はい、判りました」

偶然出会った駆け出し冒険者の子供をアンブラの進めで雇ったカロリナは雇った。
カロリナは薬草摘みをしないのではない。
まだ見ぬ茶葉を探しにきたのだ。
こんな近場で見つかる訳もないのだが…………。

ニナが取ってきた木の実を口に放り込む。
むわぁ~と口一杯の広がる異様な味にカロリナは顔を歪めた。

「何ですか、これは?」
「ですから、苦いだけだと」
「アザは食べたことはあるの?」
「ありますが美味しくないので余り取りません」
「俺はよく食べる」
「ジクはこれが好きと?」
「そんな訳あるか! お腹が空いているときだよ。誰も取らないからすぐに手に入るんだよ」

何も食べないよりマシらしい。
まだ、口の中が変な感じする。
食いしん坊のカロリナも流石に続けて食べる気はない。

「ジクはもう1つ取って下さい」
「カロリナ様はこれがおいしいのですか?」
「まさか!?」
「はい」
「ありがとう」

そう言って、木の実をエルに渡した。

「さぁ、エルも食しなさい」
「食べろと!」
「そうよ」

エルは嫌々だが口に入れると変な顔をした。
ははは、エルの変な顔にカロリナが笑った。

「笑うなんて酷いです」
「だって、私一人だけが変な顔をするのが嫌ですもの」
「僕じゃなくていいでしょう」
「そうね、アザにも上げて!」
「私は全力で遠慮します」
「食べなさい」
「カロリナ様は意地悪です」
「口を開けて!」
「嫌です…………あぐぅ!」

カロリナは素早くアザに近づいた。
アガは抵抗したが無駄な足掻きだ。
カロリナを突き飛ばすほどの勇気はない。
抵抗するアガの口に木の実を放り込まれた。

うぅぅぅ~~~~!
口の中に嫌な感触が広がり、くさい臭いが鼻に通る。
アザは迷った。
吐き出すべきか、流石にそれは拙い。
耐えるのよ。
呑みこむのよ。
破顔したアザの百面相を見て、カロリナが腹を抱えて笑った。

「やっぱり、アザは楽しいわ」
「カロリナ様、余り虐めると嫌われますよ」
「それは拙いわね。何か、口直しのモノはないかしら?」
「カロリナ様、肉串はどうですか?」
「その話を詳しく」

もうアザのことは忘れた。

ニナらは薬草や狩った獲物を冒険ギルドに売ると帰りの屋台で焼き肉串を買って食べる。
黒パン1個が銅貨1枚とすると、銅貨3枚もする肉串は贅沢らしい。
肉串をみんなで食べると、その日の薬草や獲物の買い取り金がすべて消えてしまう。
そんな贅沢はできない。
でも、カロリナから銀貨1枚(銅貨100枚分)を貰っていた特別な日は別だ。

「カロリナ様に会える日は肉串が食べられるから幸せです!」

ニナの話を聞いてカロリナの目が輝いた。
エルとアンブラは祈る。
どうか変なことを言い出しませんようにと。

「いますぐ肉串を食べに行きましょう」

やっぱり!

一度決めたカロリナを止められる者はこの世にいない。

「カロリナ様、一度戻ってからにしませんか?」
「レフ、いい意見です。みんなで食べる方がおいしそうね。ですが、私は待てません。口直しで今すぐ食べたいのです」
「カロリナ様、下町は危険です」
「アザ、大丈夫よ。アンブラがいれば問題なしよ」
「ですが!」
「あっ、そうだわ! 冒険ギルドも行ったことがないわね。一緒に行ってみましょう」
「カロリナ様、まだ獲物がありません」

レフの言う通りだ。
河に行く途中であり、狩りをしていない。

「確かに獲物はないわね」
「大公園に戻って、皆さんの獲物を貰ってから行くのはどうでしょうか?」

アンブラにしては大人しい意見だった。
すぐに狩ってきますと言わないのがおかしい。
アンブラは忘れていた。
カロリナは食欲に関係すると、急に頭が回り出すのだ。

アンブラは行くにして時間が欲しかった。
大勢で行きたい。
だが、その願いは叶わない。

「おい、そこの者。すぐに姿を現わせ!」

林の方をびしっと指を差して、カロリナはそう言った。
カロリナはアンブラを見て、すぐに呼び出せと顎を振る。
仕方なく、呼んだ。

ヴェンでございます。お初にお目に掛かります」
木葉フォウです」
フロスって呼んで下さ~い!」

痩せ型、丸みのある顔、ロリ巨乳と特徴は違うが、皆がアンブラと同じ黄金の髪と青い瞳を持つ美少女達だ。
子供達が思わず、「綺麗ぇ~!」と叫んでいる。
以前までアンブラは町に入ると異常なまでも緊張して周囲を警戒していた。
ところが最近はそういうことがない。
おそらく、代わりに警戒してくれる部下がついたと思っていた。
まかさ、三人もいるとは思っていなかった。

実際は三人ではない。
領兵長になったアンブラは部下300人の内、30人ほどを冒険者の格好で網を張って待機している。
町に行くとなると配置替えが必要になる。
それ以前に下町(悪路)に行くのに30人で足りるか?
そう疑問が脳裏に走った。
阻止したい。
だが、無理だろうと何となく判ってしまう。

「出しなさい。あるのでしょう」
「何を、でしょうか?」
「獲物が取れないときの為に用意しているのでしょう」
「そういうことですか! 判りました。フロス」
「は~い、は~い」

フロスは腰の魔法袋に手を入れる。

「一番いい奴を3つほど出せ!」
「一番にいい奴ですね」

角一角兎を2頭と牙きつね一匹、高級な薬草一袋を出した。
これは獲物ではなく、魔物であった。
薬草も魔法を帯びた魔法薬に使える奴だ。
ジクとニナに兎を持たせ、リーダーのレフがきつねを担いだ。
薬草袋はエルに持たせた。

「これでいいでしょう。さぁ、行きましょう!」

準備万端とカロリナは下町(悪路)に続く道を降りはじめ出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...