刺殺からはじまる侯爵令嬢、カロリナだってがんばります!

牛一/冬星明

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45. カロリナ、ユニコーンに乗る。

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カロリナ達の加護を貰う旅は続いた。
炎の精霊は火竜ファイラー・ドラコの寝床にある特殊な竜の火石を取って来いとか言った。
火竜ファイラー・ドラコは気性の荒い。
寝ている竜の横で火石を取ってくるというのはかなり危険なことだ。
そんなことをする妖精はいない。
皆、出掛けた隙に取りに行く。
一度寝ると10年くらい寝るらしい。
次に起きるのはいつか判らない。
炎の精霊も風の精霊以上に意地悪だ。

「さぁ、がんばって取って来い」
「火竜は寝坊助さんなのね?」
「結界が張ってある。魔力を帯びた者が近づけば、すぐに見つかるぞ。人間は魔力を帯びていないから見つからないかもしれないな!」
「魔力が少ないとなると、アザ、ジク、ニナの三人ね」
「ちょっと待って! 冗談じゃない。絶対にやらないからね」
「あっ、そうだ! 風・の・精霊・と・契約・を・結んだ・から・誰・が・行って・も・見つかる・な!」
「どうして棒読みなの?」
「ははは、がんばって竜退治をやってきな!」
「精霊様、無茶が過ぎます」
「コニ、どんな課題でもよいと言ったではないか?」
「そうは申しましたが…………」
「さぁ、取りに行って来い」
「その必要はありません。ここに竜火石を置きます」
「どうして人間風情が持っているんだ!」

してやったり!
そんな顔の炎の精霊を余所にラファウが無表情で竜火石を取り出した。
風の精霊と同じ反応だった。
町では竜火石を持つことを自慢する奴がいた。
また、それを交換にくれる者もいた。
大抵物は何でも手に入った。
精霊のあいだでは、課題の品は自分で取りに行くというのが当たり前なのか?

「魔法石1個と竜火石5個の交換は損かと思いましたが、交換しておいてよかったです」
「自分で取って来ようという気はないのか?」
「そんな危ない所に行きませんよ!」
「人間は狡いぞ!」
「意地悪な精霊に言われたくありません」

こうして、火の精霊の加護を貰った。

 ◇◇◇

水の精霊は穏やかなおっとりしたイメージだったが、退屈な時間は精霊をやはり意地悪にするのだろうか?
ユニコーンの涙というレアなアイテムを要求した。

「ラファウ?」
「残念ながら持っておりません」
「あんなものに価値がないからさ」
「ないのですか?」

そもそもユニコーンの涙は少女との別れを惜しんだユニコーンが流す涙のことで、キラキラと七色に光る涙という以外に効果・効用のないアイテムであった。
乙女が持つとキラキラと光る?
清らかな乙女の証明。
そういうアイテムだ。

処女がどうかと判定するアイテムを欲しがる妖精はいない。
人種でも稀だろう!?
たぶん、稀ですよね?

乙女好きの幻想動物であるユニコーンが残したアイテム。
古代貴族によく使われたとラファウが言う?
古代帝国を処女にこだわりを持っていたのかもしれない。

水の精霊はそんなアイテムを取って来いと言う。

ユニコーンは水の精霊が住む祠の近くに棲んでおり、探す手間はない。
しかし、ユニコーンが涙を流すのは稀らしい。
三日三晩、寝食を共にして、別れを惜しんだ時に流す涙かも?

「他に方法はないの?」
「そうじゃのぉ。1ヶ月ほど通って、もう二度と会うことがないと言えば、涙を流してくれるかもしれん」

カロリナはユニコーンが嫌いではない。
むしろ、馬は好きな方に分類される。
しかし、寝食を共に3日も過ごす気になれない。
1ヶ月も掛かるのは論外だ。

「あの、私がやります」
「ニナ、いいの!」
「カロリナ様のお役に立てるならがんばります」
「いい心掛けじゃ。ユニコーンは悪戯好きじゃ。寝ている間に服を脱がされて、ペロペロされたりするから要注意じゃぞ」
「ちょっと! ユニコーンって清らな聖獣じゃないの?」
「誰がそんなことを言った。清らかな乙女を見抜く魔眼を持っているが、ユニコーンは変質者じゃぞ。そもそも同じ種の雌に興味を示さず、異種の人間の乙女に懸想するなど、変態じゃろう」

水の精霊のいう通りだった。
ユニコーンの雌は気性が荒く、いじめられた雄は優しく癒しを与えてくれる人の乙女を好むらしい。
マザコンならぬ乙女コンだった。

ともかく、祠のすぐ側にいるので行ってみた。
魔眼を持つユニコーンは乙女(処女)以外を近づけさせない。
乙女以外が近づくと次元跳躍じげんちょうやくで逃げてしまう。
ゆえに、捕まえるのが難しい。

カロリナ、ニナ、アンブラの三人で向かう。
水を飲んでいたユニコーンが三人をすぐに見つけた。
三人とも美しい清らかな乙女だった。

カロリナは美味しい物を食べたいという純粋な願う心の結晶を宿し、
ニナはカロリナに感謝し、いつか恩を返したいという心の結晶を宿し、
アンブラは職務に忠実であろうというまったく濁りのない心の結晶を宿していた。
三人とも乙女(処女)だ。

真っ白な馬体を見た瞬間。
涙を取ってくる使命を忘れ、衝動的にカロリナは乗ってみたいと思った。
否、乗らずに帰れるものですか!
あっさりと目的を忘れた。

「私も背中に乗せて下さい」
「俺の背中かい」
「ええ、その素晴らしい馬体の背中です」
「ははは、いいだろう」
「ありがとうございます」

キラン、このユニコーンは割と話せる。
そう思った。
これなら次元跳躍じげんちょうやくというスキルで世界中のどこでも好きに行けるのではないか?
ユニコーンに乗れば、世界中の美味しい料理を食べに行ける。
カロリナはどこまでもブレない。
屈託ないの笑顔を浮かべ、その手がユニコーンの頬を優しく撫でていた。
ぶひひひ、乙女最高。

「どうでしょうか? 私の家に来る気はありませんか?」
「お嬢ちゃんの家かい」
「はい、私の乗馬になって頂けるのなら大切にさせて頂きます」

ユニコーンは邪な目でカロリナをじろじろと見定める。
美しい美少女が俺のモノになるのも悪くない。
あんなこと(エロ)や、こんなこと(エロ)もできるかもしれない。
乙女とラブロマンス。
そんな邪な気配を見逃すアンブラではない。

「カロリナ様、まずはニナに乗って頂きましょう」
「ニナですか?」
「人を乗せた事もない馬に、カロリナ様を乗せる訳にはいきません」
「私が乗りたいのよ」
「いけません。まずはニナが先です」
「私なら大丈夫です」
「駄目です。まず、ニナに乗って貰いましょう」
「判りました」

カロリナが折れた。
食事に直接関係しなければ、カロリナも無茶はしない。
おいらの為に美しい乙女達が争う。
ユニコーンも満更でない。
まず、ニナを背中に乗せるとユニコーンが歩き出す。
鐙もない安定しない背中でニナが慌てて、首にしがみ付く。

うひょ!
首に柔らかいものが包み込む感じに目をにんまりとする。
人間の乙女はいいぜ!

ぐるっと一周すると戻ってきてニナを降ろす。
次はカロリナだ。
見た目も美しい少女を背中に乗せる。
興奮した。
抱き付いてくることを想像するだけで堪らない。

歩き出す。
ぱっか、ぱっかと軽快に歩く?
カロリナはたてがみを掴んで毅然と乗っていた。
乗馬は得意だった。
鐙がないくらいは問題ではない。

でも、ユニコーンは不満だった。
背中から伝わってくるカロリナの足の温かみだけでは満足できない。
先ほどのニナにように首元に抱きつかせたかった。

「おっといけなねぇ! 躓いてしまった」

ワザとらしい声を上げて、前方が崩れそうな姿勢を取ろうとした瞬間。
目の前に突き刺さろうとする短剣が見えた。
一瞬の内にアンブラが移動して、前に倒れようとするユニコーンの先に剣先を向けていたのだ。

ごくり、ユニコーンも焦る。
アンブラの青い目が怒っている。
背中から帯び出る黒い殺気に恐怖する。
その殺気は森の主である巨大な狂熊より恐ろしいものであった。
動けば、殺される。

「カロリナ様に何をするつもりだ!」
「別に何も!」
「そんな嘘が通じると思うのか?」
「少し怖がって貰おうかと」
「万死に値する」
「助けて下さい」

短剣が前に出て首元に当たる。
殺される、死にたくない。
でも、逃げられない。
何とかく判る。
スキルを発動して逃げる前に殺される。
がたがたがた、震えながらユニコーンは涙目である。

「あっ、涙だ!」

ニナが叫ぶ。
慌てて、ポケットから小さな瓶を取り出して目に当てた。
わずかな涙が瓶に入った。
すると涙が七色に光り出した。
伝説通りだ。

「アンブラ、もういいわ!」
「はぁ、畏まりました」

カロリナが背中から飛び降りると、アンブラも短剣を仕舞う。
同時にユニコーンも跳躍して走り去った。
しまった。
カロリナは短剣を仕舞わせたことをちょっと後悔した。
しかも、少し遠くでカロリナ達を見ていたユニコーンらも姿を隠した。
大失敗だ。
こうして、水の精霊の課題をクリアーしたカロリナ達は次に向かう。

「風の精霊をやり込めたと聞こえているから、他の精霊も難題を用意していると思うわよ」

水の精霊がそう言って送り出してくれた。

どうでもいいことだが、
乙女怖い!
あのユニコーンはアンブラの恐怖が魂魄まで刻まれ、乙女に恐怖するようになる。
雌も怖い、乙女も怖い。
熟女好きの変わったユニコーンが現れるのは少し後の事だ。

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