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79. カロリナ、笑っている方がやっぱりいい。
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うぅぅぅ、まどろみの中で目を覚まし、猫のように縮んだ体を大きく伸ばした。
寝返りを打とうとして床の固さに納屋のような家で休息を取ったことを思い出した。
すでに星空だった空も青くなっている。
あっ、寝過ぎた。
カロリナは仮眠のつもりが一晩ゆっくり寝てしまったようだ。
体中が痛い。
ニナはいつの間にか起きたようで横にいるのはアザだけである。
頭がすっきりした。
そう思ったカロリナは自分に回復と洗浄の魔法を掛けて家を出た。
「おはようございます」
「エル、おはよう」
「朝食は何になさいます。先日焼いた魚でよろしいでしょうか?」
「ええ、それでいいわ。あと、パンとお肉も出して頂戴。お腹が空いてしまったわ」
「畏まりました」
カロリナの顔色が戻った事がエルは嬉しかった。
食事が出ると、すぐに飛びついた。
ぱく、ぱく、ぱく、魚を一口齧るとパンを放り込み、一緒に手で掬ったボアー肉を手で口に運ぶ。
汚れた手はすぐにエルが拭いてくれる。
そして、果実ドリンクをごくりと飲み干す。
そして、再び魚を齧った。
魚を二匹、パンを10個、ボアー肉を5切れ、ドリンクを三杯だ。
ふぅ、カロリナは朝食を食べ尽くして落ち着いた。
「そう言えば、オルガがいないわね?」
何を今更?
地面に座って手で食べる冒険者スタイルに、オルガがいたなら行儀の悪さに卒倒しそうだ。
そう思ったのだ。
「オルガ様は昨日の内に漁村に停泊している船に戻されました。カロリナもお戻りになるように言ったのですが、ここで良いと申されたのです」
ぽくぱくぱく、ち~ん!
しばらく考えて思い出した。
あははは、笑いながらカロリナがデレた。
「そんな事を言ったような気がするわ!?」
昨日のカロリナは威圧が酷く、反論を許す雰囲気でなかった。
穏やかな笑みを浮かべ、静かな口調が怖かった。
本気で怒っているカロリナをはじめて見たような気がした。
“私はここで構いません。オルガ達のみ帰りなさい”
あのオルガでも頭を下げるのみで命に従った。
「お顔の色がよくなって嬉しく思います」
「そんなに酷かったのかしら?」
もう色々と考えるのは面倒だ。
考えれば、考えるほど判らなくなったような気がする。
ラファウに任せようと決めた。
「ラファウはいないのかしら?」
「先ほど、村から使いの者が来て、それから出てゆきました」
何かあったのかしら?
そう思ったが、考える事をすぐに放棄した。
◇◇◇
北方港砦(港町)の代官バルトウォミェイ子爵とマリンドル伯爵はカロリナを追って、途中で300人ほどの兵を集めて来た。
港砦にいた冒険者とマリンドル伯爵の手勢、漁村村の義勇兵も合わせると550人ほどになった。
港砦の警備は臨時領騎士長フィリプ男爵に押し付けてきたらしい。
喜んでいるのだろうか?
それとも逃げられなくなって慌てているだろうか?
西海岸を敵が攻め上がってくるので、大丈夫なのかとカロリナは心配した。
まったく、無用の心配だった。
西砦から逃げたマリンドル伯爵らを追い駆けていた二個騎士団(4,800人×2)は、カロリナが放った火の魔法『火柱嵐』で一時撤退した。
休憩を入れていると白い雪のような火の粉が降ってきたのだ。
この時点で撤退しなかったのが指揮官のミスだ。
火の手が上がった時は、周回が火の海で逃げ場を失っていた。
海岸を進んできた四個騎士団(4,800人×4)は第三砦村で一泊してした。
これが失敗であった。
一晩、寝ている内に退路の街道が火事で覆われ、進軍するしか選択が無くなった。
しかし、山が迫って来ている場所はカロリナでもギリギリだった。
一晩、のんびりしていた事で街道が閉じてしまった。
軍団は火の手のない海岸に押しやれて、断崖絶壁から飛び降りて自殺するか、その場に残って焼身自殺するかの二択を迫られた。
最悪の二択であった。
本国へ食糧を運ぶ兵站部隊(5万人)もほぼ全滅した。
ほとんどの兵は砦村の中に避難した。
しかし、周りの放射熱かた自然発火で逃げ場を失った。
地下室の逃れた兵も一酸化中毒か、酸欠で逝った。
早朝から輸送を行っていた部隊の内、カロリナ達が遊んでいた浜辺に逃げ込んだ者達のみ、わずかに生き残ったと言う。
こうして、78,800人の命が失われてした。
カロリナはその事実を知らない。
「ラファウ、どうします?」
「折角、来て頂いたのです。手伝って頂きましょう」
敵は谷を抜けた扇状地で布陣している。
東海岸街道から間道が抜けており、谷間を抜けてハコネ砦まで山道が続いている。
ラファウの策は、彼らを恐怖に落として撤退させる事にある。
「では、行きましょう!」
◇◇◇
村を出発してしばらく歩くと、扇状地まではっきりと見える間道に出た。
東海岸街道に続く間道だ。
この間道の先に谷間を向けて、ハコネ砦まで続く山道があるらしい。
両側に木々が立って全貌は見えないが、敵が布陣している。
「この辺りでいいでしょう」
「まだ、遠いですよ」
「カロリナ様とニナなら問題ありません」
爆発系の火の魔法は距離を無効にできる。
最上級究極爆発魔法である『エクスプロウジョン』を使えば、村1つを吹き飛ばせる。
残念ながら妖精王から借りた威力を増す杖はない。
それがあれば町1つを潰せるのだが、無い物は無いのだ。
「エクスプロウジョンはお控え下さい。魔力の節約もありますので、小爆発『ボム』で結構です」
「恐怖させる以前に終わっては駄目なのですね」
「そういう事です」
ラファウの作戦は回り諄いな!
霞むくらいに遠い敵の前衛に的を絞った。
その間にニナの光の矢が放たれた。
台の上に立っている指揮官の一人を討ち取った。
ニナは目がいい。
敵は遠くて、どんな顔をしているのか判らないが、味方の兵の方が唖然としている。
500mくらい離れていていると相手が小さく見える。
でも、魔法の矢は届く。
魔力強化か、肉体強化で視力を補えば、簡単に当てる事ができる。
超ベテランの強弓使いと同レベルだ。
魔法使いはそれを簡単にやって見せる。
魔法部隊がいる鉄紺騎士団、銀朱騎士団と、魔法部隊がいない灰騎士団ではまったく攻撃力が違った。
だが、カロリナ達のチート力は桁が外れていた。
2km近く離れている場所からのコントロールショットで指揮官の一人を狙い撃ちできるニナがいた。
ズドン、前衛で小爆発が起こった。
3~4人が吹き飛ばされただけの被害だが、衝撃は大きかった。
連続で小爆発が起こり、次々と敵が倒されてゆく。
反撃できない所からの攻撃だった。
いずれは全軍崩壊すると察したのか、敵が全軍で突撃をして来た。
カロリナとニナが押し寄せてくる敵に向けて攻撃を続ける。
勢いは削がれたが足を止めるつもりはないようだ。
多勢に無勢だ。
ドンドンと近づかれた。
そして、500m。
敵の魔法の射程距離に近づいた頃、ジクが飛び出して『シールド・バッシュ』で敵を吹き飛ばした。
間道に並んだ敵が見事に吹き飛ばされてゆく。
「あの餓鬼を討て!」
矢と魔法がジクを襲う。
『城壁』
ジクの特殊スキル魔法だ。
透明な壁が発生して、すべて攻撃を無効する。
敵味方の攻撃を防ぐ城壁だ。
ニナの光の矢も弾かれるので使い処が難しい。
「ニナ、怒らない。ジクも必死だから」
「怒っていません。拗ねているだけです」
城壁を解除するまでニナはお休みだ。
カロリナの小爆発は関係ない。
敵は動揺している。
離れていると遠距離攻撃が入り、近づくと『人間大砲』で弾き返される。
これをどうやって攻めろというのだろう?
疑問というより不可能としか思えなかった。
さらに、森に入った兵の悲鳴が上がった。
右翼はルドヴィクと風と花、左翼は影と木葉が防衛戦を張っている。
昨日から森に入った者は誰一人戻って来ない。
木々の隙間から鬼が暴れているのが見えれば、恐怖も覚える。
攻撃が止まった。
ジクが城壁を解除すると、ニナの矢が指揮官らしい者を討ち始めた。
時間にすると、わずかな攻防であった。
ラファウが叫ぶ。
『追い立てろ!』
敵の兵は4,320人、兵站部隊1万人が陣取っている。
わずか550人で20倍以上の兵を追い込む。
無茶を通り越して無謀だった。
しかし、兵は谷間に殺到して逃げる事を優先し、置いて行かれた兵站部隊はあっさり降伏したので戦闘はほとんどなく終わった。
この兵站部隊に参加していた家畜奴隷がペニンスラ半島の西海岸が全焼してできた荒れ地に誕生する大穀倉地帯を作る労働力になるなど誰も思っていない。
今回の作戦を考えた緑帝コンラトは大きな誤算をしていた。
王国最強の騎士団長はレベル40以上であり、その個人の能力がアール王国を何度も救ってきた。
当代の騎士団長もレベル40代であった。
王国騎士団にさえ注意すれば、作戦は巧くゆくと思っていた。
だから、王国騎士団がくる前に終わらせる電撃作戦を考えた。
ゆえに、王国騎士団が渡河した時点で陽動隊を引き戻しを条件に停戦を申し込む準備をしていた。
しかし、誤算が存在していたのだ。
王国最強は騎士団長ではなく、近衛の一部隊長であり、他に最強パーティが存在していたのだ。
そうだ、カロリナ達のパーティだ。
カロリナ、エル、ルドヴィク、ラファウ、ニナ、ジク、アザ、そして、影と8人はレベル40を超えている。
中でもルドヴィクと影は50超えの神の領域であった。
プー王国の最強騎士団の三騎士皇・四騎士帝、双翼十四騎士団を揃えなければ、互角に戦えない。
そんな事になっているなんて誰が思うだろう?
「捕まえた捕虜はどういたしましょう?」
「一先ず、拘束して領軍も任せましょう。考えるのも面倒です」
「ふふふ、実にカロリナ様らしいお答えです」
「どうして笑うのです」
死んだ者の鎮魂や復讐はカロリナに似合わないと思った。
笑っているカロリナでよかった。
生死を賭けた戦場なのに、緊張しないカロリナの顔を見るとほっとする。
皆、そう思った。
「さぁ、逃げた敵を追撃しましょう!」
鬼ごっこはまだ終わらない。
寝返りを打とうとして床の固さに納屋のような家で休息を取ったことを思い出した。
すでに星空だった空も青くなっている。
あっ、寝過ぎた。
カロリナは仮眠のつもりが一晩ゆっくり寝てしまったようだ。
体中が痛い。
ニナはいつの間にか起きたようで横にいるのはアザだけである。
頭がすっきりした。
そう思ったカロリナは自分に回復と洗浄の魔法を掛けて家を出た。
「おはようございます」
「エル、おはよう」
「朝食は何になさいます。先日焼いた魚でよろしいでしょうか?」
「ええ、それでいいわ。あと、パンとお肉も出して頂戴。お腹が空いてしまったわ」
「畏まりました」
カロリナの顔色が戻った事がエルは嬉しかった。
食事が出ると、すぐに飛びついた。
ぱく、ぱく、ぱく、魚を一口齧るとパンを放り込み、一緒に手で掬ったボアー肉を手で口に運ぶ。
汚れた手はすぐにエルが拭いてくれる。
そして、果実ドリンクをごくりと飲み干す。
そして、再び魚を齧った。
魚を二匹、パンを10個、ボアー肉を5切れ、ドリンクを三杯だ。
ふぅ、カロリナは朝食を食べ尽くして落ち着いた。
「そう言えば、オルガがいないわね?」
何を今更?
地面に座って手で食べる冒険者スタイルに、オルガがいたなら行儀の悪さに卒倒しそうだ。
そう思ったのだ。
「オルガ様は昨日の内に漁村に停泊している船に戻されました。カロリナもお戻りになるように言ったのですが、ここで良いと申されたのです」
ぽくぱくぱく、ち~ん!
しばらく考えて思い出した。
あははは、笑いながらカロリナがデレた。
「そんな事を言ったような気がするわ!?」
昨日のカロリナは威圧が酷く、反論を許す雰囲気でなかった。
穏やかな笑みを浮かべ、静かな口調が怖かった。
本気で怒っているカロリナをはじめて見たような気がした。
“私はここで構いません。オルガ達のみ帰りなさい”
あのオルガでも頭を下げるのみで命に従った。
「お顔の色がよくなって嬉しく思います」
「そんなに酷かったのかしら?」
もう色々と考えるのは面倒だ。
考えれば、考えるほど判らなくなったような気がする。
ラファウに任せようと決めた。
「ラファウはいないのかしら?」
「先ほど、村から使いの者が来て、それから出てゆきました」
何かあったのかしら?
そう思ったが、考える事をすぐに放棄した。
◇◇◇
北方港砦(港町)の代官バルトウォミェイ子爵とマリンドル伯爵はカロリナを追って、途中で300人ほどの兵を集めて来た。
港砦にいた冒険者とマリンドル伯爵の手勢、漁村村の義勇兵も合わせると550人ほどになった。
港砦の警備は臨時領騎士長フィリプ男爵に押し付けてきたらしい。
喜んでいるのだろうか?
それとも逃げられなくなって慌てているだろうか?
西海岸を敵が攻め上がってくるので、大丈夫なのかとカロリナは心配した。
まったく、無用の心配だった。
西砦から逃げたマリンドル伯爵らを追い駆けていた二個騎士団(4,800人×2)は、カロリナが放った火の魔法『火柱嵐』で一時撤退した。
休憩を入れていると白い雪のような火の粉が降ってきたのだ。
この時点で撤退しなかったのが指揮官のミスだ。
火の手が上がった時は、周回が火の海で逃げ場を失っていた。
海岸を進んできた四個騎士団(4,800人×4)は第三砦村で一泊してした。
これが失敗であった。
一晩、寝ている内に退路の街道が火事で覆われ、進軍するしか選択が無くなった。
しかし、山が迫って来ている場所はカロリナでもギリギリだった。
一晩、のんびりしていた事で街道が閉じてしまった。
軍団は火の手のない海岸に押しやれて、断崖絶壁から飛び降りて自殺するか、その場に残って焼身自殺するかの二択を迫られた。
最悪の二択であった。
本国へ食糧を運ぶ兵站部隊(5万人)もほぼ全滅した。
ほとんどの兵は砦村の中に避難した。
しかし、周りの放射熱かた自然発火で逃げ場を失った。
地下室の逃れた兵も一酸化中毒か、酸欠で逝った。
早朝から輸送を行っていた部隊の内、カロリナ達が遊んでいた浜辺に逃げ込んだ者達のみ、わずかに生き残ったと言う。
こうして、78,800人の命が失われてした。
カロリナはその事実を知らない。
「ラファウ、どうします?」
「折角、来て頂いたのです。手伝って頂きましょう」
敵は谷を抜けた扇状地で布陣している。
東海岸街道から間道が抜けており、谷間を抜けてハコネ砦まで山道が続いている。
ラファウの策は、彼らを恐怖に落として撤退させる事にある。
「では、行きましょう!」
◇◇◇
村を出発してしばらく歩くと、扇状地まではっきりと見える間道に出た。
東海岸街道に続く間道だ。
この間道の先に谷間を向けて、ハコネ砦まで続く山道があるらしい。
両側に木々が立って全貌は見えないが、敵が布陣している。
「この辺りでいいでしょう」
「まだ、遠いですよ」
「カロリナ様とニナなら問題ありません」
爆発系の火の魔法は距離を無効にできる。
最上級究極爆発魔法である『エクスプロウジョン』を使えば、村1つを吹き飛ばせる。
残念ながら妖精王から借りた威力を増す杖はない。
それがあれば町1つを潰せるのだが、無い物は無いのだ。
「エクスプロウジョンはお控え下さい。魔力の節約もありますので、小爆発『ボム』で結構です」
「恐怖させる以前に終わっては駄目なのですね」
「そういう事です」
ラファウの作戦は回り諄いな!
霞むくらいに遠い敵の前衛に的を絞った。
その間にニナの光の矢が放たれた。
台の上に立っている指揮官の一人を討ち取った。
ニナは目がいい。
敵は遠くて、どんな顔をしているのか判らないが、味方の兵の方が唖然としている。
500mくらい離れていていると相手が小さく見える。
でも、魔法の矢は届く。
魔力強化か、肉体強化で視力を補えば、簡単に当てる事ができる。
超ベテランの強弓使いと同レベルだ。
魔法使いはそれを簡単にやって見せる。
魔法部隊がいる鉄紺騎士団、銀朱騎士団と、魔法部隊がいない灰騎士団ではまったく攻撃力が違った。
だが、カロリナ達のチート力は桁が外れていた。
2km近く離れている場所からのコントロールショットで指揮官の一人を狙い撃ちできるニナがいた。
ズドン、前衛で小爆発が起こった。
3~4人が吹き飛ばされただけの被害だが、衝撃は大きかった。
連続で小爆発が起こり、次々と敵が倒されてゆく。
反撃できない所からの攻撃だった。
いずれは全軍崩壊すると察したのか、敵が全軍で突撃をして来た。
カロリナとニナが押し寄せてくる敵に向けて攻撃を続ける。
勢いは削がれたが足を止めるつもりはないようだ。
多勢に無勢だ。
ドンドンと近づかれた。
そして、500m。
敵の魔法の射程距離に近づいた頃、ジクが飛び出して『シールド・バッシュ』で敵を吹き飛ばした。
間道に並んだ敵が見事に吹き飛ばされてゆく。
「あの餓鬼を討て!」
矢と魔法がジクを襲う。
『城壁』
ジクの特殊スキル魔法だ。
透明な壁が発生して、すべて攻撃を無効する。
敵味方の攻撃を防ぐ城壁だ。
ニナの光の矢も弾かれるので使い処が難しい。
「ニナ、怒らない。ジクも必死だから」
「怒っていません。拗ねているだけです」
城壁を解除するまでニナはお休みだ。
カロリナの小爆発は関係ない。
敵は動揺している。
離れていると遠距離攻撃が入り、近づくと『人間大砲』で弾き返される。
これをどうやって攻めろというのだろう?
疑問というより不可能としか思えなかった。
さらに、森に入った兵の悲鳴が上がった。
右翼はルドヴィクと風と花、左翼は影と木葉が防衛戦を張っている。
昨日から森に入った者は誰一人戻って来ない。
木々の隙間から鬼が暴れているのが見えれば、恐怖も覚える。
攻撃が止まった。
ジクが城壁を解除すると、ニナの矢が指揮官らしい者を討ち始めた。
時間にすると、わずかな攻防であった。
ラファウが叫ぶ。
『追い立てろ!』
敵の兵は4,320人、兵站部隊1万人が陣取っている。
わずか550人で20倍以上の兵を追い込む。
無茶を通り越して無謀だった。
しかし、兵は谷間に殺到して逃げる事を優先し、置いて行かれた兵站部隊はあっさり降伏したので戦闘はほとんどなく終わった。
この兵站部隊に参加していた家畜奴隷がペニンスラ半島の西海岸が全焼してできた荒れ地に誕生する大穀倉地帯を作る労働力になるなど誰も思っていない。
今回の作戦を考えた緑帝コンラトは大きな誤算をしていた。
王国最強の騎士団長はレベル40以上であり、その個人の能力がアール王国を何度も救ってきた。
当代の騎士団長もレベル40代であった。
王国騎士団にさえ注意すれば、作戦は巧くゆくと思っていた。
だから、王国騎士団がくる前に終わらせる電撃作戦を考えた。
ゆえに、王国騎士団が渡河した時点で陽動隊を引き戻しを条件に停戦を申し込む準備をしていた。
しかし、誤算が存在していたのだ。
王国最強は騎士団長ではなく、近衛の一部隊長であり、他に最強パーティが存在していたのだ。
そうだ、カロリナ達のパーティだ。
カロリナ、エル、ルドヴィク、ラファウ、ニナ、ジク、アザ、そして、影と8人はレベル40を超えている。
中でもルドヴィクと影は50超えの神の領域であった。
プー王国の最強騎士団の三騎士皇・四騎士帝、双翼十四騎士団を揃えなければ、互角に戦えない。
そんな事になっているなんて誰が思うだろう?
「捕まえた捕虜はどういたしましょう?」
「一先ず、拘束して領軍も任せましょう。考えるのも面倒です」
「ふふふ、実にカロリナ様らしいお答えです」
「どうして笑うのです」
死んだ者の鎮魂や復讐はカロリナに似合わないと思った。
笑っているカロリナでよかった。
生死を賭けた戦場なのに、緊張しないカロリナの顔を見るとほっとする。
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「さぁ、逃げた敵を追撃しましょう!」
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