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ネフェリア、学園編
ネフェリアの気持ち
ハアハア…
うっ……
止めて!触らないで…
嫌だ!嫌だー!!!
「ネフェリア!!」
ハッと目を覚ますと、そこにはヴィヴァリアンの黄金の瞳が目の前にキラキラと輝いた。
「…ヴィヴァリアン様…。」
ギュッと抱き起こされ、夢を見ていたのだと認識する。
そして視界にエスティリオとキリウスを捉えると、荒れた息を整えようと大きく深呼吸をする。
「ネフェリア…大丈夫か?」
「ハア…大丈夫です。」
心配そうにエスティリオはタオルでネフェリアの顔を拭く。
「ありがとうございます。兄様…。皆様如何なさいました?」
ヴィヴァリアンはネフェリアを支えて自分に寄り掛からせると、優しくおでこに張り付いた前髪に触れた。
「少し大事な話があるが、いいか?辛い様なら、また後日にする。」
「大丈夫です。早めに対処しなければいけない事も分かっておりますので。」
ネフェリアはまだ青白い顔で、笑顔を作った。
そう、作ったのだ。いつもの自然な笑顔では無い。
「無理はしなくていいぞ?」
「大丈夫です。」
ヴィヴァリアン達は視線を合わせるが、ネフェリアに話す事を決めた。
「ネフェリア…まず、今回の件は済まなかった。私達の判断ミスであり、力不足だ。」
頭を下げるヴィヴァリアンにネフェリアは慌てて首を振る。
「や、違います!僕の判断が間違えてしましたし、自分に過信したせいです!」
「確かに、ネフェリアはもう少し私達を頼るべきだ。」
エスティリオの言葉に、ネフェリアは、その通りだと、シュンと反省する。
「事件の事だが、フィフィルが関わっていると証言がでたのだが、何か知っているか?」
フィフィル・カトローザ……
あの嫌な笑みが記憶に甦り、背筋がゾッとする。
「はい…現場にいました。」
ネフェリアの状態を気にしつつ、ヴィヴァリアンは優しく頭を撫でながら、今回の流れを話した。
「……では、証拠が必要なのですね…。多分フィフィルは、また落ち着いた時に仕掛けてくるでしょう…。今はトビー達が捕まったので、大人しくしているとは思いますが…。」
ネフェリアはフィフィルの彼ら攻略対象についての執着心から、諦める事は無いと判断した。
「今サリファンが調べているから、この件はまた分かり次第進めていこう。」
ヴィヴァリアンの言葉に頷くと、少し遠目にいたキリウスが近付いてきた。
ネフェリアは自分を救ってくれた、キリウスを目にした途端、涙が一粒溢れ落ちた。
「キリウス…キリウス…。」
ネフェリアはキリウスに向けて、手を広げると、応える様にキリウスはネフェリアの側に寄った。
ネフェリアはギュッとキリウスを抱きしめる。
「ありがとう。…ありがとうキリウス。」
「ネフェリア…もう、大丈夫だから…。俺が守る…。」
キリウスはネフェリアを抱きしめ、耳元で優しく囁いた。
ネフェリアはキリウスの腕の中で、小さく頷く。
「ネフェリア…この件でもう少し話があるんだ。」
ヴィヴァリアンは、キリウスと抱き合うネフェリアに少しばかりの嫉妬をして、手を握りしめた。
ネフェリアはゆっくりと、キリウスを解放しながら、涙を拭い、ヴィヴァリアンと向き合う。
「今回の件は噂も原因の内だ。まだ良からぬことを考える輩が出るかもしれない。…だから、ネフェリアを噂と危険から守る為に、国王と宰相と話し合った。」
「国王様とお父様がですか?」
「ああ。そこで一つの提案が出たのだ。ネフェリア、君に手を出せない状況にするにはどうしたらいいと思う?」
僕に…手を出せない状況…?
えっ!?…まさか…
「さすが…分かったようだね。…ネフェリア、君は私とキリウスの婚約者候補とする。」
紫色の瞳を大きく見開いたネフェリアにヴィヴァリアンは微笑みながら、答えを話した。
「ヴィヴァリアン様とキリウス様の婚約者!!…ん?候補?」
不思議そうに首を傾げるネフェリアに、クスッとキリウスとヴィヴァリアンは笑う。
「ああ。候補だ。お前がまだ私達のモノになるか決めかねているだろう?お前の気持ちが優先だ。だから、候補とした。候補だと、まだ弱いから、学園最強のキリウスと私の2人がなったのだ。落ち着いたら…ネフェリアが嫌なら解消してもいい。だから、暫く、この形でお前を守らせてくれ…。」
少し切なそうに笑うヴィヴァリアン様に、何か言おうとしたが、何も出なかった。
まさか、ここまで僕の気持ちを優先してくれるとは思わなかった。
国王の次に権力がある筈の方が、そして僕を好きだという方が、僕の気持ちを優先させてくれ、その上、守ろうとしてくれている……。
トビーやフレディー、フィフィル…そして僕は…自分を優先しているのに…
胸が熱くなる。込み上げてくるものが溢れそうになる…だけど、言葉にできない。
ネフェリアの紫色の瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「ど、どうした!やはり、嫌か!?」
「すまん!俺じゃダメか!?」
固まり、ポロポロと涙を流すネフェリアに、ヴィヴァリアンもキリウスも顔を情けなくして、狼狽えている。
僕は、涙を腕で拭うと、唇をキュッと結び、耐えた。
泣くな!男だろ!!
「プッ!アハハハ!」
突然の笑い声に、泣くのを耐える僕と、情けなく、眉を下げて狼狽える2人は、笑う人物へと視線を向けた。
「ハハッ、す、すみません!、大事な話中に…!クックッ!ネフェリアの顔が昔の泣くのを我慢していた時の顔で、変わらないと思ってしまって…しかも、いつも怖い顔の2人が狼狽えてて、なんだか、笑ってしまいました。」
エ、エスティリオ兄様…
「エスティリオ…お前…。」
ヴィヴァリアン様はジロッと兄様を睨みました。
ですが、今ので少し落ち着いた。
僕は2人を見て、手を握りしめた。
「ヴィヴァリアン様、キリウス様…僕の気持ちを優先して下さりありがとうございます。…解消しても良いとまで。…僕は、今回の事件の際、皆様の事を特別に想っていた事に気付きました。…ですが、まだ愛とかは分かりません…それでもよろしければ婚約者候補として、お願い出来ればと思います。」
誠意を込めて、握る2人の手をギュッと力を込めて、金の瞳とスカイブルーの瞳を見つめた。
「ネフェリア…なんて可愛い…。」
「ネフェリア…このまま婚約でもいいぜ?」
2人の反応に笑いながらも、カウディリアンやアリウス、サリファンともきちんと向き合おうと心に決めた。
前世の気持ちは一度蓋をして、今の人達をしっかりと見るんだ…。
あんな奴らの様に自分の感情だけをぶつける事など絶対してはいけない…
トビーとフレディーを思い出し、また、ゾクリと寒気が身体を襲う。
生々しい感触がいくら洗っても消えないのだ。
微かに震え出したネフェリアの手に、ヴィヴァリアンとキリウスは手を重ね、ギュッと包み込んだ。
「ネフェリア…震えている。夢に…その出るのか?…いつも魘されていると聞く。」
聞きづらいのだろう、言葉を考えて話してくれている。
僕も言いづらくて…小さく頷く事しか出来ない。
「俺達に触られるのも、怖いか?」
キリウスの言葉に、ハッとして、首を横に振った。
「いえ!怖くなど無いです!…ただ彼らの感触が消えなくて…。」
ネフェリアは説明しようとするが、口に出せば、より自分が汚れた気がした。
俯きながら、微かに震えるネフェリアをヴィヴァリアンは抱きしめた。
「ネフェリア…私に抱きしめられるのはどうだ?」
暖かく、少し早い鼓動がヴィヴァリアンの緊張を現している様で、安心する。
ヴィヴァリアン様のお香が微かに香り、とても落ち着く…。
「いえ、安心します。」
ネフェリアはにっこりと微笑み腕を大きな背中に回した。
「ネフェリア……精神的傷を治すにはどうしたらいいか…医師に聞いたのだ…。医師は…いい思い出に上書きすれば良いと…。」
なるほど、いい思い出か…。
確かに、嫌な感触、嫌悪感がどうしても消えず、思い出す。
幼き頃も怖かったが剣を振るい、強くなる度に安堵した。
また剣を振るえばいいのかな?
「も、もし、嫌で無ければ……………。」
ネフェリアは身体をヴィヴァリアンから少し離し、ヴィヴァリアンの顔を覗き込む。
嫌で無ければ?
ジッと純粋なアメジストの瞳に見られ、ヴィヴァリアンの顔から汗が滝のように流れ出る。
「ヴィヴァリアン様?」
様子のおかしいヴィヴァリアンに首を傾げながら、隣のキリウスを見るが、キリウスはあさっての方向見ており、視線が合わない。
「閨を共にしたいらしいぞ。ネフェリア。」
ずっと立って様子を見守っていたエスティリオが答える。
閨?ね、、や!閨を共に!!
ネフェリアの顔は真っ赤になりボンッと爆発音が聞こえた。
「エスティリオ!!先程から言い方!!」
キリウスはギッとエスティリオを睨む。
「いや、その、お前が魘されながら、触らないでなど叫んでいるから、感触が取れないなら、お前が安心する者が触ればと思ってな…、私達が嫌なら、他の方法を考えるし、あの、その…。」
珍しく、顔を真っ赤にしてあわあわと焦るヴィヴァリアンをネフェリアは顔を真っ赤にして見つめる事しか出来なかった。
「まあ、纏めると、嫌な男の残像を消す為に、もし自分達を嫌いで無ければ、ヴィヴァリアン様とキリウスがネフェリアに触れたいと。ネフェリアが拒むなら他の方法を考えると言っている。」
エスティリオの説明にネフェリアは目を泳がしながら狼狽える。
「いや、あの!ぼ、僕…閨教育もまだでして、父様が良い人が見つからないと言うことで…その、自身もありません…。」
そして、できれば…女性と…って思っていたが、あの時浮かんだのは違ったんだよな…でも、怖いし、分かんない!!
それに、王族からの閨の誘いって断っていいんだっけ?
ぐるぐるパニックになっているネフェリアをエスティリオは近づき、頭を撫でた。
「ネフェリア。ちゃんと自分の考えを話しなさい。…貴方が乗り越える為の提案であって、命令ではない。医師の言葉はいい思い出に上書きです。」
エスティリオの言葉にネフェリアはふと、兄の顔を見た。
そこには、厳しくも優しい色をしたブルーの瞳がネフェリアを見つめていた。
兄様…。
僕が乗り越える為の…提案…
いい思い出に…
僕は2人に視線を向けた。
僕の正直な気持ち…。
「ヴィヴァリアン様、キリウス様。僕は女性が好きです。金髪のふわふわロングに憧れています!…トビーとフレディーの時、初めてをこんな形で失いたく無いと思いました。その時、とにかく記憶を塗り替えたくて、女性を、その、思い浮かべようとしましたが………浮かんできたのは、ヴィヴァリアン様達の顔でした…その時、ヴィヴァリアン様達が僕の特別だと気付いたのです。……」
「ネフェリア!!」
意を決して話すと、いきなりヴィヴァリアン様が抱きついて、傷をしようと唇を近づけてきた。
ちょっ!ちょっと…!!
「…待ってください!!最後まで聞いて下さい!!」
初めて、ネフェリアはヴィヴァリアンに向けて大声を発した。
ネフェリアの掌で口を押さえられ、悲しげに眉を下げるヴィヴァリアン。
「ですが、先程もお伝えしたように、まだそれが愛なのか分かりません!ヴィヴァリアン様やキリウス様だけでなく、皆にそうなんです!!……ですから、いきなり最後までは、まだ、怖いし難しいです。……しかし、身体に感じるあの人達の感触は忘れたいです。…この感触がヴィヴァリアン様達に触れらて消えるかなどは分かりませんが、試すのも一理かと思います…………触れるだけではダメでしょうか?」
ネフェリアは顔をほんのり赤くしながら2人を見つめた。
ヴィヴァリアンとキリウスは息を飲み、唇を固く結び、必死に頷いた。
「…できれば、嫌だと思ったら止めて欲しいですし、もし改善が見込めなさそうなら、違う方法を試したいです…それでもよろしいでしょうか?」
チラッと言いにくそうに付け足すネフェリアに、また無言で頷くヴィヴァリアンとキリウス。
ネフェリアはホッと胸を撫でた。
約束ですよ。と指を3人で絡めた。
それをため息混じりで見つめるエスティリオ。
「それと、その行為はまた後日からで…まだ、身体が本調子ではありません。今日は…できれば兄様と手を繋いで寝たいです。」
ダメでしょうか?と小首を傾げるネフェリアにエスティリオはキュンと胸を締め付けられ、抱きしめた。
「もちろんだ。ネフェリア!」
エスティリオは、ヴィヴァリアンとキリウスを追い出して、ネフェリアの布団へと潜り込んだ。
「これは内緒ですが、僕の1番はエスティリオ兄様です。」
ふふっと笑うネフェリアを愛おしく見つめ、手を握り、ネフェリアが眠りにつくまで頭を撫でた。
愛しのネフェリア…私もお前が1番だよ。
「くっ!!可愛すぎて、耐えるのに必死だった…」
「こっちが必死に堪えてんのにあのヤロー!!」
仕方ない、ネフェリアの頼みだ。
今後を夢見て………
必ず俺達がお前を救う。
いい夢を、悪夢など、俺達が消し去ってやる!!
うっ……
止めて!触らないで…
嫌だ!嫌だー!!!
「ネフェリア!!」
ハッと目を覚ますと、そこにはヴィヴァリアンの黄金の瞳が目の前にキラキラと輝いた。
「…ヴィヴァリアン様…。」
ギュッと抱き起こされ、夢を見ていたのだと認識する。
そして視界にエスティリオとキリウスを捉えると、荒れた息を整えようと大きく深呼吸をする。
「ネフェリア…大丈夫か?」
「ハア…大丈夫です。」
心配そうにエスティリオはタオルでネフェリアの顔を拭く。
「ありがとうございます。兄様…。皆様如何なさいました?」
ヴィヴァリアンはネフェリアを支えて自分に寄り掛からせると、優しくおでこに張り付いた前髪に触れた。
「少し大事な話があるが、いいか?辛い様なら、また後日にする。」
「大丈夫です。早めに対処しなければいけない事も分かっておりますので。」
ネフェリアはまだ青白い顔で、笑顔を作った。
そう、作ったのだ。いつもの自然な笑顔では無い。
「無理はしなくていいぞ?」
「大丈夫です。」
ヴィヴァリアン達は視線を合わせるが、ネフェリアに話す事を決めた。
「ネフェリア…まず、今回の件は済まなかった。私達の判断ミスであり、力不足だ。」
頭を下げるヴィヴァリアンにネフェリアは慌てて首を振る。
「や、違います!僕の判断が間違えてしましたし、自分に過信したせいです!」
「確かに、ネフェリアはもう少し私達を頼るべきだ。」
エスティリオの言葉に、ネフェリアは、その通りだと、シュンと反省する。
「事件の事だが、フィフィルが関わっていると証言がでたのだが、何か知っているか?」
フィフィル・カトローザ……
あの嫌な笑みが記憶に甦り、背筋がゾッとする。
「はい…現場にいました。」
ネフェリアの状態を気にしつつ、ヴィヴァリアンは優しく頭を撫でながら、今回の流れを話した。
「……では、証拠が必要なのですね…。多分フィフィルは、また落ち着いた時に仕掛けてくるでしょう…。今はトビー達が捕まったので、大人しくしているとは思いますが…。」
ネフェリアはフィフィルの彼ら攻略対象についての執着心から、諦める事は無いと判断した。
「今サリファンが調べているから、この件はまた分かり次第進めていこう。」
ヴィヴァリアンの言葉に頷くと、少し遠目にいたキリウスが近付いてきた。
ネフェリアは自分を救ってくれた、キリウスを目にした途端、涙が一粒溢れ落ちた。
「キリウス…キリウス…。」
ネフェリアはキリウスに向けて、手を広げると、応える様にキリウスはネフェリアの側に寄った。
ネフェリアはギュッとキリウスを抱きしめる。
「ありがとう。…ありがとうキリウス。」
「ネフェリア…もう、大丈夫だから…。俺が守る…。」
キリウスはネフェリアを抱きしめ、耳元で優しく囁いた。
ネフェリアはキリウスの腕の中で、小さく頷く。
「ネフェリア…この件でもう少し話があるんだ。」
ヴィヴァリアンは、キリウスと抱き合うネフェリアに少しばかりの嫉妬をして、手を握りしめた。
ネフェリアはゆっくりと、キリウスを解放しながら、涙を拭い、ヴィヴァリアンと向き合う。
「今回の件は噂も原因の内だ。まだ良からぬことを考える輩が出るかもしれない。…だから、ネフェリアを噂と危険から守る為に、国王と宰相と話し合った。」
「国王様とお父様がですか?」
「ああ。そこで一つの提案が出たのだ。ネフェリア、君に手を出せない状況にするにはどうしたらいいと思う?」
僕に…手を出せない状況…?
えっ!?…まさか…
「さすが…分かったようだね。…ネフェリア、君は私とキリウスの婚約者候補とする。」
紫色の瞳を大きく見開いたネフェリアにヴィヴァリアンは微笑みながら、答えを話した。
「ヴィヴァリアン様とキリウス様の婚約者!!…ん?候補?」
不思議そうに首を傾げるネフェリアに、クスッとキリウスとヴィヴァリアンは笑う。
「ああ。候補だ。お前がまだ私達のモノになるか決めかねているだろう?お前の気持ちが優先だ。だから、候補とした。候補だと、まだ弱いから、学園最強のキリウスと私の2人がなったのだ。落ち着いたら…ネフェリアが嫌なら解消してもいい。だから、暫く、この形でお前を守らせてくれ…。」
少し切なそうに笑うヴィヴァリアン様に、何か言おうとしたが、何も出なかった。
まさか、ここまで僕の気持ちを優先してくれるとは思わなかった。
国王の次に権力がある筈の方が、そして僕を好きだという方が、僕の気持ちを優先させてくれ、その上、守ろうとしてくれている……。
トビーやフレディー、フィフィル…そして僕は…自分を優先しているのに…
胸が熱くなる。込み上げてくるものが溢れそうになる…だけど、言葉にできない。
ネフェリアの紫色の瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「ど、どうした!やはり、嫌か!?」
「すまん!俺じゃダメか!?」
固まり、ポロポロと涙を流すネフェリアに、ヴィヴァリアンもキリウスも顔を情けなくして、狼狽えている。
僕は、涙を腕で拭うと、唇をキュッと結び、耐えた。
泣くな!男だろ!!
「プッ!アハハハ!」
突然の笑い声に、泣くのを耐える僕と、情けなく、眉を下げて狼狽える2人は、笑う人物へと視線を向けた。
「ハハッ、す、すみません!、大事な話中に…!クックッ!ネフェリアの顔が昔の泣くのを我慢していた時の顔で、変わらないと思ってしまって…しかも、いつも怖い顔の2人が狼狽えてて、なんだか、笑ってしまいました。」
エ、エスティリオ兄様…
「エスティリオ…お前…。」
ヴィヴァリアン様はジロッと兄様を睨みました。
ですが、今ので少し落ち着いた。
僕は2人を見て、手を握りしめた。
「ヴィヴァリアン様、キリウス様…僕の気持ちを優先して下さりありがとうございます。…解消しても良いとまで。…僕は、今回の事件の際、皆様の事を特別に想っていた事に気付きました。…ですが、まだ愛とかは分かりません…それでもよろしければ婚約者候補として、お願い出来ればと思います。」
誠意を込めて、握る2人の手をギュッと力を込めて、金の瞳とスカイブルーの瞳を見つめた。
「ネフェリア…なんて可愛い…。」
「ネフェリア…このまま婚約でもいいぜ?」
2人の反応に笑いながらも、カウディリアンやアリウス、サリファンともきちんと向き合おうと心に決めた。
前世の気持ちは一度蓋をして、今の人達をしっかりと見るんだ…。
あんな奴らの様に自分の感情だけをぶつける事など絶対してはいけない…
トビーとフレディーを思い出し、また、ゾクリと寒気が身体を襲う。
生々しい感触がいくら洗っても消えないのだ。
微かに震え出したネフェリアの手に、ヴィヴァリアンとキリウスは手を重ね、ギュッと包み込んだ。
「ネフェリア…震えている。夢に…その出るのか?…いつも魘されていると聞く。」
聞きづらいのだろう、言葉を考えて話してくれている。
僕も言いづらくて…小さく頷く事しか出来ない。
「俺達に触られるのも、怖いか?」
キリウスの言葉に、ハッとして、首を横に振った。
「いえ!怖くなど無いです!…ただ彼らの感触が消えなくて…。」
ネフェリアは説明しようとするが、口に出せば、より自分が汚れた気がした。
俯きながら、微かに震えるネフェリアをヴィヴァリアンは抱きしめた。
「ネフェリア…私に抱きしめられるのはどうだ?」
暖かく、少し早い鼓動がヴィヴァリアンの緊張を現している様で、安心する。
ヴィヴァリアン様のお香が微かに香り、とても落ち着く…。
「いえ、安心します。」
ネフェリアはにっこりと微笑み腕を大きな背中に回した。
「ネフェリア……精神的傷を治すにはどうしたらいいか…医師に聞いたのだ…。医師は…いい思い出に上書きすれば良いと…。」
なるほど、いい思い出か…。
確かに、嫌な感触、嫌悪感がどうしても消えず、思い出す。
幼き頃も怖かったが剣を振るい、強くなる度に安堵した。
また剣を振るえばいいのかな?
「も、もし、嫌で無ければ……………。」
ネフェリアは身体をヴィヴァリアンから少し離し、ヴィヴァリアンの顔を覗き込む。
嫌で無ければ?
ジッと純粋なアメジストの瞳に見られ、ヴィヴァリアンの顔から汗が滝のように流れ出る。
「ヴィヴァリアン様?」
様子のおかしいヴィヴァリアンに首を傾げながら、隣のキリウスを見るが、キリウスはあさっての方向見ており、視線が合わない。
「閨を共にしたいらしいぞ。ネフェリア。」
ずっと立って様子を見守っていたエスティリオが答える。
閨?ね、、や!閨を共に!!
ネフェリアの顔は真っ赤になりボンッと爆発音が聞こえた。
「エスティリオ!!先程から言い方!!」
キリウスはギッとエスティリオを睨む。
「いや、その、お前が魘されながら、触らないでなど叫んでいるから、感触が取れないなら、お前が安心する者が触ればと思ってな…、私達が嫌なら、他の方法を考えるし、あの、その…。」
珍しく、顔を真っ赤にしてあわあわと焦るヴィヴァリアンをネフェリアは顔を真っ赤にして見つめる事しか出来なかった。
「まあ、纏めると、嫌な男の残像を消す為に、もし自分達を嫌いで無ければ、ヴィヴァリアン様とキリウスがネフェリアに触れたいと。ネフェリアが拒むなら他の方法を考えると言っている。」
エスティリオの説明にネフェリアは目を泳がしながら狼狽える。
「いや、あの!ぼ、僕…閨教育もまだでして、父様が良い人が見つからないと言うことで…その、自身もありません…。」
そして、できれば…女性と…って思っていたが、あの時浮かんだのは違ったんだよな…でも、怖いし、分かんない!!
それに、王族からの閨の誘いって断っていいんだっけ?
ぐるぐるパニックになっているネフェリアをエスティリオは近づき、頭を撫でた。
「ネフェリア。ちゃんと自分の考えを話しなさい。…貴方が乗り越える為の提案であって、命令ではない。医師の言葉はいい思い出に上書きです。」
エスティリオの言葉にネフェリアはふと、兄の顔を見た。
そこには、厳しくも優しい色をしたブルーの瞳がネフェリアを見つめていた。
兄様…。
僕が乗り越える為の…提案…
いい思い出に…
僕は2人に視線を向けた。
僕の正直な気持ち…。
「ヴィヴァリアン様、キリウス様。僕は女性が好きです。金髪のふわふわロングに憧れています!…トビーとフレディーの時、初めてをこんな形で失いたく無いと思いました。その時、とにかく記憶を塗り替えたくて、女性を、その、思い浮かべようとしましたが………浮かんできたのは、ヴィヴァリアン様達の顔でした…その時、ヴィヴァリアン様達が僕の特別だと気付いたのです。……」
「ネフェリア!!」
意を決して話すと、いきなりヴィヴァリアン様が抱きついて、傷をしようと唇を近づけてきた。
ちょっ!ちょっと…!!
「…待ってください!!最後まで聞いて下さい!!」
初めて、ネフェリアはヴィヴァリアンに向けて大声を発した。
ネフェリアの掌で口を押さえられ、悲しげに眉を下げるヴィヴァリアン。
「ですが、先程もお伝えしたように、まだそれが愛なのか分かりません!ヴィヴァリアン様やキリウス様だけでなく、皆にそうなんです!!……ですから、いきなり最後までは、まだ、怖いし難しいです。……しかし、身体に感じるあの人達の感触は忘れたいです。…この感触がヴィヴァリアン様達に触れらて消えるかなどは分かりませんが、試すのも一理かと思います…………触れるだけではダメでしょうか?」
ネフェリアは顔をほんのり赤くしながら2人を見つめた。
ヴィヴァリアンとキリウスは息を飲み、唇を固く結び、必死に頷いた。
「…できれば、嫌だと思ったら止めて欲しいですし、もし改善が見込めなさそうなら、違う方法を試したいです…それでもよろしいでしょうか?」
チラッと言いにくそうに付け足すネフェリアに、また無言で頷くヴィヴァリアンとキリウス。
ネフェリアはホッと胸を撫でた。
約束ですよ。と指を3人で絡めた。
それをため息混じりで見つめるエスティリオ。
「それと、その行為はまた後日からで…まだ、身体が本調子ではありません。今日は…できれば兄様と手を繋いで寝たいです。」
ダメでしょうか?と小首を傾げるネフェリアにエスティリオはキュンと胸を締め付けられ、抱きしめた。
「もちろんだ。ネフェリア!」
エスティリオは、ヴィヴァリアンとキリウスを追い出して、ネフェリアの布団へと潜り込んだ。
「これは内緒ですが、僕の1番はエスティリオ兄様です。」
ふふっと笑うネフェリアを愛おしく見つめ、手を握り、ネフェリアが眠りにつくまで頭を撫でた。
愛しのネフェリア…私もお前が1番だよ。
「くっ!!可愛すぎて、耐えるのに必死だった…」
「こっちが必死に堪えてんのにあのヤロー!!」
仕方ない、ネフェリアの頼みだ。
今後を夢見て………
必ず俺達がお前を救う。
いい夢を、悪夢など、俺達が消し去ってやる!!
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Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼不定期連載となりました。
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。