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B介

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ネフェリア、学園編

ぬいぐるみ戦争

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ヴィヴァリアンはネフェリアとの朝を迎えた後、学園に半休の連絡をし、ある物を探しにと出掛けた。

しかし、一向に見つからず、仕方なしに従者を使い、国中の問屋に確認し、近場から取り寄せることにして、学園へと向かった。

ヴィヴァリアンが生徒会室を開けると、昨日の自分の様に嫉妬に狂った男が怒りのボルテージを上げ、睨みつけてきた。

しかし、その男も一応、側近。立ち上がり、第一皇子を出迎える。


「おはようございます。ヴィヴァリアン様……遅いお越しで……。」

だが、射殺さんばかりにギラギラとした瞳で睨みつける姿は側近とは言えなかった。


「おはようキリウス。」


朝からの作業の纏めた分を手渡され、受け取るが、自分の席に一向に戻る気配の無いキリウスに、ヴィヴァリアンは視線を向ける。

席に座るヴィヴァリアンを、立って見下ろすキリウスの表情に、ヴィヴァリアンは口元を笑わせた。

表情筋があるか?と疑うほど、淡々と何事にも対応する側近のキリウスの歪み、ドロドロとした物が今にも出てきそうな表情をこんな間近で見ることが出来、しかも主人となる私に向けるとは…。

どんな敵にも動じないであろう奴に唯一感情を揺さぶれるかと思うと可笑しく思えた。


「なんだ?」

ヴィヴァリアンはそんな男に問いかけると、笑うキリウスに眉を寄せて、ギリッと歯を軋ませた。


「…何故、こんなにも遅いのですか?」


「ちょっとな……ところでキリウス。お前の部屋にあるであろう、ぬいぐるみを譲らないか?」

ヴィヴァリアンが濁した事で、よりキリウスの表情が歪むが、次の言葉にピクリッと反応した。

「なんの為に買ったと思っているのですか?…渡しませんよ。」

キリウスは感情を抑える為、一度席に戻った。


「ネフェリアが笑っていたぞ、私のサイズのぬいぐるみをキリウスが所有する事に。…なんだ、お前。私が好きだったのか?生憎私は、ネフェリア一筋でね。申し訳無いな。」

ニヤリと笑い、キリウスを揶揄う様に戯けて見せると、キリウスはジロッと視線をヴィヴァリアンに向けた。

「奇遇ですね。私もネフェリア一筋です。私の部屋にある物はヴィヴァリアン様とは関係ありません。…私のストレス発散要員でして、少しばかり痛めつけてもぬいぐるみなので、効果はありませんがスッキリするので置いてあるだけです。」

「…ほう、私と同じサイズのぬいぐるみを痛めつけているのか?」

「いえ、私はぬいぐるみとしか申していません。」


この野郎……!!


バチバチと火花散る睨み合いはエスティリオの登場で幕を閉じた。



*****

「ネフェリア!!」

2人とも、徐々に出迎え時が激しくなるなと感じるネフェリア。

本日扉を開けた瞬間にキリウスは飛びつき、抱きしめて来たのだ。

「キリウス様…どうしましたか?」

頭に頬擦り寄せ、ギュゥゥと強く抱きしめるキリウスに話し掛けるが答えてくれない。


「キリウス様!?さ、流石に痛いです!!」

ハッとネフェリアの声に、身体を離した。

「す、すまん!!つい…!」

ネフェリアはクスッと笑いらいつもの様にソファに案内した。


「今日はもっと早く来れるはずだったんだが…急な用件が入り、いつもと同じ時間になってしまった。もう、湯浴みは終わってしまったよな?」

ネフェリアはコクリと頷くと、ハァァて溜息を吐きながら、キリウスは胸元から小瓶を出した。

「俺が愛用している香油だ。風呂上がりに塗るといい。」

「わあああ!ありがとうございます!!」

キラキラと目を輝かせて、香りを楽しむネフェリアをキリウスはうっとりと見つめた。


「この香油は剣で痛めた肌などが直ぐに潤う。是非試してみるといい。古傷などのカサつきにも良くて使っているんだ。」

ネフェリアは頷きながらキリウスの手を取った。


「だからキリウス様は、掌が硬いのに、すべすべなんですね?」

ニコッと、キリウスの掌を撫でるネフェリアに、キリウスの抑えていた欲望がムクリと顔を出す。

そんな事も気付かず、ネフェリアはキリウスの大きな掌に自分の手を合わせている。

「わぁ…おっきい…。」

「ね、ネフェリア!!」

小さく呟く、ネフェリアにキリウスの興奮は高まり、ネフェリアの小さな手を力強く掴んだ。

すると、タイミングを見計らったように扉をノックする音が響いた。

「はい!…キリウス様、失礼致します。」

仕方なしに手を解放しつつ、頭を抱えて悶えるキリウス。

ぐっ!今のは!今のはヤバかった!!

俺の理性がこんなにも脆いとは!!

もっと丹念すべきか!?

…だが、くっ~!!惜しくもあったな…誰だよ!こんな時間に…ちくしょう!


…いや、嫌われても死ぬし…。良かったのか?

父上達がネフェリアと訓練すると鋼の精神となるって言っていた理由がわかるな…。

とにかく一旦落ち着こうと、嫌いな物を浮かべているキリウスに、ネフェリアは、どうしたかと尋ねた。

戻ってきた、ネフェリアに慌てて姿勢を正す。

「何用だった…の、だ?」

余裕の笑みを作ろうと、笑いながら視線をネフェリアに向けるが、ネフェリアが抱える物に目がいき、キリウスはその場で固まってしまった。


ネフェリアの身長より大きな縦長の袋を、抱えていたのだ。

ネフェリアは固まるキリウスの目の前で手を振る。

ハッと覚醒したキリウスが、ふるふると震える指でネフェリアの抱える物を指差した。

「…それは?」

「ああ!ヴィヴァリアン様からだそうです。」

ネフェリアはいそいそと、袋を開けると、中から大きなライオンのぬいぐるみが出てきた。
しかも金の瞳まで嵌めてある。

身長もヴィヴァリアンの181センチにほぼ等しい事がわかる。

「ふふっ!キリウス様の負けですね?」

楽しそうに笑うネフェリアは可愛いが、苛立つこの気持ちを何処にぶつければいいかと、震えるキリウス。

ワザとだ!明日持ってくればいい物を!!
ワザと俺の日にしやがったな!

しかも、俺の買ったぬいぐるみと同じだが、唯一違うのは金の瞳!加工までこの短時間でやったのか!!

ネフェリアはライオンをギュッと大事そうに抱きしめると、嫉妬に燃えるキリウスに奪い取られ、ポイッと投げ捨てられた。

そして、あっと言う間に抱っこされ、寝室へと移動させられる。

キリウスは優しくネフェリアをベッドに下ろすと、ベッドの上に寝ている黒豹に満足しながら、ネフェリアの腕に黒豹を抱かせる。

「よし!」

子供じみたキリウスの行動に笑いながらも、黒豹をギュッと抱きしめた。

すると、また奪われ、黒豹はベッドの反対側に置かれた。

「間違えた。今日は俺がいるんだから、代わりでなく俺を抱きしめてくれ。」

ムッと唇を尖らすキリウスに、ネフェリアはカアアアと顔を赤らめる。

ネフェリアはおずおずと腕を広げると、キリウスに抱きついた。

キリウスは可愛いネフェリアのつむじにキスをしながら、ゴロンとベッドに転がる。

抱きしめ合ったままベッドに潜り込むと、キリウスはネフェリアの顔を自分に向かせて、頬にキスを落とした。

「この間のお返し。」

ニッと笑うキリウスに、今度はネフェリアが赤い顔のまま唇を尖らす。

「2度と寝たふりしないで下さいね!」

「わかった…じゃあ、起きてる時にネフェリアからキスしてくれ。」

えー!!と、目を見開くと、キリウスは、自分の唇をトントンと指先で叩く。

「交渉にはお互いメリットがないと。」

「いや、キスのレベルが上がってるんですが…。」

僕がしたのはほっぺです。

「じゃあ、俺が、ネフェリアが寝ている間に奪うのはいいのか?」


ぐぬぬぬぬぬ!

寝てる間にされるよりは……。

僕は、キリウス様の唇に、顔を近づけるが、ジッと見てくるキリウス様の視線に耐えきれず、目を閉じてとお願いした。

「や、だ。ほら早く。」

意地悪なキリウス様を睨むが、全然効いていない。

僕は思い切って唇を重ねた。

そして直ぐ離れようとしたところを捕まり、そのままゴロンと反転しキリウス様にのし掛かられた。

唇は離れる事を許されず、上唇と下唇をはむっと挟まれ、感触を楽しむように舌で舐められた。何度も唇を舐められ、擽ったさと燻る熱情に、キリウスの首に腕を回し、自分の舌をチョロと差し出した。

舌と舌が絡むと、そのままキリウスに吸いつかれ、舌先に痺れを感じ、ネフェリアの吐息が漏れる。

キリウスはネフェリアの唇ごと、口に含むと、最後にペロッと舐めて離れる。ゴロンと横に倒れ、ネフェリアの上から退いた。

「あー!!これ以上はまずい!今日は手だけ繋いで寝よう。」

キリウスは掌で顔を覆い、もう片方をネフェリアに差し出した。

ネフェリアも真っ赤な顔をパチパチ叩いて、キリウスの手を取ろうとして、ピタッと止まった。

いつまでも握られない手に、キリウスは指の間からネフェリアを覗くと、サイドテーブルの上の香を焚いていた。

フワッと香る香りに、キリウスは記憶を探る。

この香り…どこかで…!!

身体をガバッと起こし、ネフェリアを見るキリウスの瞳に嫉妬の炎が燃えている事にネフェリアは気付かなかった。

「これ…ヴィヴ
ァリアンのか?」

「はい。眠る時にいいと聞いたので、良い香りでしょ?」

キリウスはもう一度ネフェリアにのし掛かると、唇を奪う。

キリウスの突然の変化に驚き、必死に息をするが、突然の事に上手く出来ず、苦しさにキリウスの胸を叩いた。

ネフェリアの唇は解放されると、必死に息をした。

少し涙目になりつつ、キリウスの顔を見ると、ネフェリアは驚く。

苦しそうに眉を寄せているキリウスの顔がそこにあったからだ。

「き、キリウス様…。」

「ネフェリア、一つだけ忠告しておく、恋に溺れた男の嫉妬は醜い。好きな相手が嬉しそうにベッドで他の男の香りに包まれる事を許せる程器もデカく無くなる。そして、そんな男の嫉妬に気付かない時点で、自分への恋心の無さを実感した男はどうなると思う?」

ネフェリアはキリウスの威圧的瞳に、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「…わかったか?今回は俺も独占欲でヴィヴァリアンと同じ事をしたから、俺達のお互い様だ。だから、ネフェリアが気をつけろ。今度同じ事があったら、俺はおかしくなるだろう…ネフェリアを傷つけたくない…。わかったか?」

ネフェリアはコクリと頷く。

すると、キリウスは香を消して、ネフェリアを抱きしめた。

「やはり、今日も抱きしめて寝たい。…いいか?」

先程と変わり、弱々しい声に、ネフェリアはギュッと抱きつき、コクリと頷いた。

「ごめんなさいキリウス様。僕もくっついて寝たいです。」

 
ネフェリア…と小さく呟き、キリウスは瞳を閉じた。





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