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ネフェリア、学園編

男どもの嫉妬

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「おい、お前も自室で仕事しろ…」

ヴィヴァリアンは美しい瞳の下にクマを作り、今にも斬り殺しそうなほどの怒り露わにした表情でキリウスを睨む。


キリウスは朝、少し遅めに通学し、締まりの無い顔で花を飛ばしながら生徒会室に現れた。

その顔を見た瞬間、一睡も出来てなく、黒魔術について調べそうになるほど追い詰められた私は、コイツをマジで殺そうと思ってしまった。

生徒達の中でも噂の的らしい、あの氷城の1人、氷の騎士がとろけんばかりの笑顔でぬいぐるみを抱えて通学したと…


ぬいぐるみってなんだ!?

顔を見たく無くて、出て行けというのに出ていかない…ムカつく奴だ。


「なあ、ヴィヴァリアン…恋っていいな。」


ゾワッ!!

何だコイツ…!!

ガチムチの雄フェロモン全開の奴が何を言う!!

ヴィヴァリアンは寝不足もあり、余計イライラが止まらない。


「お前、まさか…ネフェリアに変なことしていないだろうな!?」


ギンッと睨みつけると、思い出しながらニマニマと頬杖を付いている。

「してねーよ。…どっちかというとされたかな?ムフッ♡」

「何だと!?」
ヴィヴァリアンはガタッと立ち上がり、ふるふると震え、顔面蒼白にした。


ネフェリアから!?

な、何をされたんだ!!

い、いや待て、聞いたらキレて殺しそうだ…まず、落ち着いて…


「朝、俺が寝てると思って、ありがとうございます!っておでこにチュッと、してくれたんだ。」


バキッ!!

ヴィヴァリアンは持っていたペンを砕いてしまった。
金の瞳が、鋭く光る。

「…殺す…今すぐ出て行かなければ…殺す…。」

流石にまずいと思ったのか、仕事分の書類を持ち、扉へ向かう。

「アッ!そう言えば、ネフェリアが俺の香油の香りが好きだとさ、今度同じ香りしても殺すなよ?」

ニヤリと笑うキリウスに砕いたペンを投げつけるが、惜しくもキリウスが出た後の扉だった。


「…くそ!いつか、いつか殺してやる!!」

頭を抱えてて机に蹲るヴィヴァリアンは怒りに燃えていた。


「権力のある第一皇子が物騒なこと言わないで下さい。」

冷静につっこまれて、顔を上げると、エスティリオが立っていた。


「おまえ、一度実家に帰ったのでは?」

ヴィヴァリアンはフーッと深呼吸をしてエスティリオと向かい合った。


「私がいない間にネフェリアに何か合っても困るので従者を呼び寄せ、伝達しましたので、問題ありません。」


「何かって…ネフェリアが傷つくことするはずないだろう…」

ネフェリアを思うからこそ、こんなにも苦しいんじゃないか!!

エスティリオはジッとヴィヴァリアンを見て、フッと口元を笑わせた。

「その分だと大丈夫そうですね。」

そう言うとエスティリオは生徒会室を後にした。

な、何なんだよ!!

早く仕事を終わらせ無ければ、ネフェリアに会えない!!

ヴィヴァリアンはイライラを必死に抑えて、仕事に打ち込んだ。




******


「ネフェリア!!」

出迎えると、ヴィヴァリアン様に抱きつかれた。


心なしか、ヴィヴァリアン様の目の下にクマが出来ている。

お忙しいのかな?


「お疲れですか?ハーブティーを入れましょう。」

ネフェリアの優しさにジーンとしながら、ヴィヴァリアンはソファに座る。


「ネフェリア、今日は土産がある。」

ネフェリアの目の前にガラス細工の可愛らしい入れ物を置いた。

「わあ!なんですか?…お香?」

ネフェリアが、入れ物の蓋を開くとお香が入っていた。

この香り…

「ヴィヴァリアン様の香りだ!僕好きです。この香り!ありがとうございます!」

フワッと柔らかい笑顔を浮かべ香りを楽しむネフェリアに、ホッとするヴィヴァリアン。

その様子にネフェリアが首を傾げる。

「いや、ネフェリアが…キリウスの香りが…好きだと、言っていたので、気に入らないかと……。」

それを聞いても、自分の香りを渡す所に嫉妬心が現れているようで、ヴィヴァリアンは口籠るが、ネフェリアは首を振り、もう一度香りを楽しんだ。

「ヴィヴァリアン様のも、キリウス様のも僕は好きです。」

ヴィヴァリアンは嬉しそうに笑い、また仕事の話や、王宮の話などをネフェリアと話に花を咲かせていたが、ふと、視線の端に黒い物体が目に入り、目を向ける。

寝室に繋がる部屋の奥、ベッドに何やら黒い物体がいる。

よくよく見ると、黒豹で、ヴィヴァリアンは驚き、立ち上がる。

「な、何だあれは!?」

ネフェリアも、そんなヴィヴァリアンに驚きつつ、視線を追って気付いた。

パタパタと寝室に行き、黒豹を抱き抱えるネフェリアに、ヴィヴァリアンは恐る恐る近づいた。

「何だ…ぬいぐるみか、あまりにデカいから……!!」

ぬいぐるみ?

その時ヴィヴァリアンは生徒の噂を思い出した。

キリウスがぬいぐるみを…

まさか!!

「ネフェリア、このぬいぐるみは、キリウスとお揃いなのか?」

ガシッとネフェリアの肩を掴むと、ネフェリアはキョトンとしながら、ヴィヴァリアンを見た。

「いや、すまない。生徒の間でキリウスがぬいぐるみを抱えて通学したと噂で…。」

ヴィヴァリアンの話を聞き、ネフェリアは、想像して爆笑してしまった。

「アハハハハ!!キリウス様、本当に、買ったんだ!!フフフフ!!」

あまり見ない、ネフェリアの爆笑に戸惑いつつ、キリウスの事でこんなにも楽しそうにするネフェリアに嫉妬心が疼く。

ヴィヴァリアンのその様子に、ネフェリアは必死に笑いを堪えようとする。

「す、すいません!…フフッ、説明しますね!!まず、ぬいぐるみはお揃いではありません!昨日、キリウス様から頂きました、ハハッ!ちょっとぬいぐるみ、持って見てください。」

ネフェリアからぬいぐるみを受け取ると、そのデカさに驚く…そして、ある事に気づいた。

スカイブルーの目…

このデカさ…


「これは、キリウスか!!」

そう気付いた瞬間、よりこのぬいぐるみが憎く思えた。

…ということは、キリウスが抱えていたのは…!!

「ま、まさか、キリウスはネフェリアの?」

すると、またネフェリアが爆笑した。

腹を抱えて、ベッドに倒れ込んで、パタパタと足を振っている。

また、ヴィヴァリアンは戸惑いつつ、黒豹を抱えていた。

「ヒー、ヒー!!ち、違います!き、キリウス様が、持っているのはヴィ、ヴィヴァリアン様の……アッ!」

しまった!とばかりに、急に笑いを止めて、口を塞ぐネフェリア。

「私の?」

ゾッと鳥肌を立て、ネフェリアの様子から、ヴィヴァリアンは瞳を細め、ベッドの上にいるネフェリアに覆い被さる。

「……詳しく聞こうか?」

少し嫉妬に入り乱れた瞳で見下ろされ、ネフェリアは、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「キリウス様が、自分がいない時はこの黒豹を側にと…身長が同じのを探したらしいです…。」

なるほど、奴の嫉妬からくる物がコレになったのだな。忌々しい!

「…で、キリウスのが私のとは?」

グッ!と詰まるネフェリアに、怒らないからと、優しく耳元で呟いた。

「~!!…キリウス様が、お店で4体ぬいぐるみを見つけ、身長を全て測って黒豹にしたと…そしたら、ある人と同じ身長のを見つけ、その人は黒豹を見たら、同じ事をするから先に買ったって…。僕がそれを聞いて、勝手にヴィヴァリアン様と思ってだけで、、兄様かも!!でも、キリウス様がヴィヴァリアン様のぬいぐるみを抱えていたと思ったら、可笑しくて!!」

また、思い出し笑いをしそうなネフェリアのほっぺをヴィヴァリアンは片手で掴んだ。

タコチュウみたいに唇を突き出したネフェリアは戸惑いながら硬直する。



「…なるほど、理解出来た…おそらく、ネフェリアの読み通りだろう…確かに可笑しい状況で、笑えるのもわかる…。だが、今日は私の婚約者候補で閨の日だ…。ベッドの上で他の男のこと考えるのは頂けないな。」

眉を寄せ、不機嫌と少し悲しそうに瞳を揺らすヴィヴァリアンに、ネフェリアは、慌てる。

「びぶぁひふぁんふぁま、ふひまふぇん、ふぉんなふふぉひでふぁ…!」

タコチュウでは、上手く喋れない!

「プッ!!アハハ!」

すると、ヴィヴァリアンはいきなり笑い出した。

ネフェリアが困ったようにヴィヴァリアンを見ると、ヴィヴァリアンは、涙目で優しく見つめた。

「すまん、唇を突き出して、必死に話す姿が可愛いくて…。意地悪してしまったな。…ネフェリア、この可愛い唇にキスをさせてくれたら…機嫌が治るのだが…。キリウスにはほっぺにネフェリアからしたのだろう?」

ネフェリアはドキンッとオロオロしつつ、顔を赤くした。

ううっ…キリウス様のバカ…!!

「私とは嫌か?触れるだけのキスにするが……。」


切なそうに眉を寄せ、先程笑って出た筈の涙が、悲しげに見えて…ネフェリアはつい、頷いてしまう。

キラキラの金の瞳に誰が逆らえるか…

「…ありがとう。ネフェリア。」

ヴィヴァリアンはゆっくりと、唇を突き出したネフェリアに、自身の唇を重ねた。

触れるだけのキス。

ヴィヴァリアンはネフェリアにキスをしたまま、頬から手を解放した。

角度を変え、啄むキスに、ネフェリアは酔いしれ、ヴィヴァリアンの首に腕を回した。

何度かの優しいキス…柔らかく熱い感触に、離れる寂しさを感じたが、ヴィヴァリアンは理性と戦い、ネフェリアの上から身を上げた。

「これ以上は私がまずい…。ネフェリア、今日は抱きしめて寝ていいか?」

ヴィヴァリアンの唇が離れたことで、求める気持ちに気付くネフェリアは、顔を赤くし、ベッドに潜り込んだ。

「ネフェリア?嫌か?」

ヴィヴァリアンの伺う声に、ベッドに顔を隠しながら、ヴィヴァリアンの胸の中へと身を寄せた。

「ネフェリア…。」

愛し気に呟き、優しくネフェリアを腕の中に閉じ込める

幸せな気持ちで寄り添うと、ある物が視線に止まる。

ヴィヴァリアンはベッドの上でこちらを見ている黒豹を蹴飛ばした。

「おやすみ…ネフェリア。」

「おやすみなさい…ヴィヴァリアン様。」


可愛い私のネフェリア。良い夢を。



……ぬいぐるみを探さなくてはな。

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