異世界最強の癒しの手になりました(仮)

B介

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アルケイドのコンプレックス

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なんて清々しい朝だろう!
アルケイドさんのおかげで安心して眠れた!

窓を開けると、木に寄りかかり座りながら寝ている人物が1人。
窓の開く音で起きたのか、パッとこちらに顔を向ける。

寝起きでも、表情は変わらないのか?いや、少し寂しそうに感じる。せっかくの綺麗なエメラルドが濁っているようだ。

「ヒヨリ。ヒヨリ!」
ガルの切ない声に、向こうが悪いはずなのに、罪悪感を感じる。
フゥと息を吐き、切なげに窓の俺を見上げているガルに向き合う。

「ガル、おはよう。」
「お、おはよう!ヒヨリ!」
嬉しそうにキラキラとエメラルドが輝く。

なんか、母親になった気分。
「準備して出るから、ギルド一緒に向かおう。」
「ああ!」
頬をピンクに染めて、ガルはめいいっぱい首を縦に振る。

ギルドで朝食をとり、アリアナさんとアルケイドにお礼を伝えた。
シストリアは朝から討伐らしい。

「ヒヨリくん、今日はレベルの低い簡単な依頼を一緒に受けてみない?」
アルケイドの提案に俺は目を見開き、笑みが溢れる。

「いいの!行きたい!」

「じゃあ、このツタ草を20本の依頼からしてみようか?」
指差した依頼書をみると、銀貨3枚と張り出してあった。
「この依頼書の下についている紙を持って、母さんとこに行くんだよ。」

依頼書の下にペラペラ貼ってある紙を取り、カウンターへ向かう。

「あら、依頼を受けてみるのね?採取依頼なら大丈夫ね。アルケイドも一緒?」

「うん、最初だしついて行くよ。シスさん、もう出ているし、マスターも一件入ってたでしょ?」

アリアナさんは頷きながら依頼書をまとめていた。

「俺がいく!」
「依頼、闇属性にじゃないですか、じゃあ早く帰ってくれば、ちょっとは手伝えるかもですよ!」
背後からの声に、アルケイドは振り向きもせずに答えた。
「むっ!」
ガルは真っ黒な煙と共に姿を消した。
今、何やったんだ?

「じゃあ、登録完了ね。いってらっしゃい!あ、ツタ草のある森、今スライムが増えているらしいから気をつけてね!?」

「はーい、行ってきますー!」
俺はアリアナさんに手を振り出かけた。

初仕事ー♪

ふふふん♪

ご機嫌に鼻歌を歌っていると着きました!北の森!
ここにツタ草があるらしい。

「白い小さな星形の花が付いているのが、そうだよ。」

俺は必死に探してみた。
あっ!これかな?アルケイドに摘んで見せるとニコッと笑ってくれたので、これらしい。

俺は黙々と探して、摘みまくった。
2人でお昼くらいまでで、39本、後1本で銀貨6枚だ。
後1本が見つからない。

「少し休憩してからまた探そう。軽食持ってきたから!」
俺はアルケイドから薄いパンを受け取った。噛めないから薄くスライスしてくれたらしい。

「ねえ、昨日名前が出たウラン?とかって誰?」
「ああ、俺の兄貴だよ?ウランダルト、このギルドのNO.3さ。今討伐で遠方に行ってる。21番めの兄貴。」
俺はブッと吹いてしまった。

「2、21番め?って何人いんの?」
あ、アリアナさん180歳だし、沢山いるか!?
「うちは少ない方だよ。27人。俺が27番目。」
寿命が違いすぎて、少ないとかわからん。
「俺の世界、平均80歳くらいが寿命だったから子供も多くて3~4人だよ。たまに大家族とかいるらしいけど、俺んちも弟1人いるだけだし。」
あ、ちょっと思い出して泣きそう…反抗期に入ってたから、なかなか話せなかったな。陽向、元気かな…。

「え!?80歳!ヒヨリ後63年くらいしか!!そ、そんな!!!」
アルケイドが眉を寄せて、顔を白くしていく…。
「あ、大丈夫。神がこっちの寿命に合わせてくれたから!」
そういうと、ホッと息を吐き、空を見つめた。
「そうか、そしたら、兄弟の人数とか驚くよね?でも、ちょっと羨ましいな。兄弟少なければ、比べられたりしないしさ。この世界にしては人数少ない方だけど…。」
寂しげに海の色の瞳が陰る。アルケイドはこの前も思ったが、何かコンプレックスがあるのかもしれない。
27人兄弟…。確かに比べられたら辛いな。

「俺の父さんと、母さんは従兄弟同士なんだ。この世界は魔力が強い家系には決まりがあって、寿命からしても、子を沢山産む家庭が多く、兄弟が多い分、1組、従兄弟同士で血を強くする為結婚させられるんだ。通常は長男か次男の従兄弟同士で、血が強く遺伝された方が選ばれる。稀に女性が生まれると、遺伝が薄かろうが選ばれる。男同士でも、子を成せるけど、女の方が早いからね。聞いた話によると、母さんが嫌がって、結婚が遅くなったらしいよ?今じゃ、お互いベタ惚れだけどね。」
アリアナさん!ベタ惚れなんですか!!
「ミームス家は本当は、髪が真っ赤なんだよ?家系の血が濃ければ赤い髪になるが、俺も母さんも違うだろ?赤茶かな?母さんは女だからいいが、兄弟で俺だけなんだ。茶色が混じっているの。この世界は、血の遺伝が薄いと茶色が混ざるんだよ。そうなると、扱いも違うし、長男だろうと後継者争いから外れる。しかも、ミームスの魔力は土の属性が強く、次に風だ。ミームスの家系で俺だけ風属性なんだよ。なんだか、俺はミームスじゃない。と、言われてるような気持ちになってさ。相性的に、風は土には勝てないしな。」

アルケイドの声は、とても辛そうで、苦しそうだった。多分ずっと比べられて、嫌なめにあってきたんだろう。風属性を気にしているのはこのせいだったんだ。
俺はこの世界の事をよく知らないし、魔力がいかに大事かも、家系の血筋が大事かも、よくわからない。
ただ分かるのは、アルケイドが傷ついているってこと。

「なあ、アルケイドさん。俺は、この世界を何も知らないけどさー。俺は風魔法好きだな。俺の世界じゃ、魔法もなく、自分達で考えて時間をかけて作って、初めて世に出るものを最も簡単にできる魔法がすごいと思う。どんな魔法でもな!?全部かっこいいんだ!
それぞれに個性がある!メリットデメリットだってあるから、誰がすごいから、自分がダメじゃないんだ。1人1人が血は繋がっていても違う人なんだよ。人と違うからダメじゃない。得意不得意当たり前!」

俺はアルケイドさんと向き合う。
「俺だって身長低いから、アルケイド達が羨ましい!
1人1人が違うからこそ、他人を認めたり、嫉妬したりできるんだ!だから、自分を自分で傷付けないで?」

自分のことじゃないのに、目が潤んでしまった。こんなイケメンで、こんなカッコいい魔法が使えても、ずっと否定されてきて、こんなにも傷ついてー!!!

あー!!もー!!なんだーこの気持ちー!なんか悔しー!!イライラしてきた。

「俺は俺か…違くていいのか?」
赤茶の髪が風にさらさらと舞う。瞳は深い海のブルー、すがるような、切ないような、期待のような、なんともアルケイドの感情を現したように揺れる。 
そんな瞳に見つめられ、俺は大きくうなずく。

「いいんだよ!同じ人間なんていないしー!」
ニカっと笑うと、アルケイドも嬉しそうに笑った!

「俺は俺か!確かにな!!ハハッ」

そう、俺も、この世界で前向きに生きるって決めたんだ。この世界でできる事をするんだ。俺は俺なんだ。
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