異世界最強の癒しの手になりました(仮)

B介

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平和が1番

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ガルは白いシャツと黒いズボンに剣を腰に差し、ベッドに眠るヒヨリを残して、一階へと降りた。

「おはよう、マスター。遅いお目覚めで。」

嫉妬に歪む男達の視線を無視して、キッチンのベアードに声を掛ける。

「食事を頼む、素早く食べれれば何でもいい。それと、後でヒヨリに食わすから、消化にいい、スープを作ってくれ。」

「はい。マスター。」

ベアードはお辞儀をして、ガルにはシチューとパンを渡した。

テーブルに着くと。アリアナから書類を渡され、目を通す。

すると、先程嫉妬に歪んでいた男達が同じテーブルに囲う。

「…なんだ?」
ガルは、いつもと変わらず無表情で、彼らを一瞥した後、また食事をしながら書類に視線を落とす。


「ヒヨリは?」


「眠っている。夕方には起きるだろう。」

シスの問いに、視線も合わさず答える。

「…ガルディア、俺もヒヨリが好きだ。」

シスの言葉にピクリと反応し、目は合わさず、威圧する。

魔力がシスの身体に重くのしかかるが、シスは耐え、ガルを睨みつける。

「だから、なんだ?ヒヨリは俺のだ。」

睨みつける視線など痛くも痒くもない問いばかりに、書類をめくる。

「負けない!って言いたかっただけだよ!」

押しかかる圧に耐えつつ、叫ぶと、ガルはやっと視線を向けた。

視線の先には、アル、シス、ダイナ、ウランが座っていた。

「お前らもか?」

キロッと獲物を見るかのような視線にグッと息が止まる。

「…ああ。」

頷くダイナに続くかのように、アルも首を縦に振る。

ガルはウランと視線を合わすが、ウランは無言でガルを見た。

「お前はどうなんだ?」

「初めに言うべきはお前じゃねえ。」

ウランの言葉にガルは眉を寄せる。


「お前らがどう足掻こうと俺はアイツを離さない。渡すぐらいなら骨まで喰らう。」

表情はそのままに、後ろの禍々しい黒いオーラに息をのむ。


彼らは最強最悪の男に挑まなくてはならないのだ。

ピリピリとした空気に、他のギルドメンバーは距離をとった。


すると、後ろからパコーンと禍々しいオーラを放つガルの頭を叩く勇者がいた。


「何、恐ろしいオーラだしてんだよ!」

その声にピクッと反応して、禍々しさからピンクの花が飛びそうなオーラへと変わった。

「ヒヨリ!起きたのか?」

ギュッと抱きつくガルを押しのけようともがくヒヨリ。

「ちょっと寝れば体力MAXだしな。腹減ったし。」

「今ベアードにスープを頼んでいる。夜朝と食べていないから消化の良いものを準備した。」

「気がきくな。ガル。ありがとう。」

ガルは嬉しそうなオーラを飛ばし、更にヒヨリを抱きしめる。


「皆もおはよう!何ピリピリしてたんだ?」

あの重苦し圧からの救世主ヒヨリに男らは笑みが溢れる。

「いや、ちょっとな。おはよう。」
シスの曖昧な笑みにヒヨリは首を傾げた。

「おはよう、ヒヨリ。声が聞こえたからスープ持ってきたぞ。」

キッチンからベアードがスープを運んできてくれた。


「わー美味そう!ありがとう!」

ヒヨリはガルとダイナの間に座り、いただきますと、温かいスープを夢中でたべだした。

小動物のように夢中で頬をパンパンにするヒヨリを愛おしく見つめる。

「ヒヨリ、三日後満月だ。あれを頼む…。」

恥ずかしそうに頬を染めるダイナに、ヒヨリはゴフッとスープを吹き出す。

「わ、わ、わ、わわわかった!!」

顔を赤面させ、返事をするとまたスープを貪る。

ガルからの威圧にダイナは耐えながら、三日後を夢みた。

嫉妬はあるが、ダイナの場合、仕方ない気持ちもあり、行き場の無い苛つきに、男達の、もちろんガルの拳が震える。

「訓練するぞ、アル!」
「ああ!」
発散させる為立ち上がるウランに、アルも立ち上がり、裏庭へと向かう。

「俺も混ぜてくれ。」

ダイナもガルの威圧から逃れようと、裏庭に向かう。

「ベアードさん!おかわりー!」

そんなことはつゆ知らず、キャッキャとスープの美味しさにはしゃぐヒヨリ。

そんなヒヨリを愛でながら、残るシチューを食す。


「あれ、ティーンは?」

「今回ので報告書が溜まっているから、それをやっているんじゃないか?」

先程から見掛けないティーンを不思議に思うと、ガルは書類を見ながら答えた。

なるほど、皆、報告書大変そうなんだよな。

後で手伝えるとこ、手伝おう。

俺は残りのスープを一気にたいらげた。

いつもの日課だった皿洗いをベアードさんとして、飴ちゃんもらい、忙しそうなガルを放ってティーンの部屋をノックした。
声がしたので開けると、書類の山に埋もれたティーンがいた。


「ヒヨリか…何だ?」

終わらないせいか、少し苛ついた声のティーンに貰った飴をあげると、すぐ口に含んだ。

「すまん、腹が空いて、助かった。」

「なんか持ってこようか?」

「助かる。片手で食べれるものを。」

俺はベアードさんに話して、サンドウィッチを一緒に作った。


サンドウィッチを持っていくと、凄い勢いで食べながら、報告書を記入している。

「美味い?俺も手伝ったんだー。」
ヘヘッと、机に肘をつきながら、ガッツくティーンを眺めた。


「美味い。ありがとうな。」

口元にパンくずをつけながら微笑むティーンに俺は満足した。

「なあ、俺も手伝えることある?」

すると、ティーンは目をキラキラして、書類の束を漁り、俺に渡した。

「ヒヨリが連れ去られた後のと、ウランが合流した時の情報を簡単でいいからお願いする。書き方はこれ見て真似してくれ。」


ふむふむと見本を見て、思い出しながら書く。

ヒューと致した事は書かない方が、俺にとっても皆にとってもいいだろう。


黙々と書いていて気付いた。

簡単に書いているが、面倒くさい。

しかも、怪我した場合の報告や金銭が動いた場合の報告、作戦の報告など、場面に分かれて記入しなければいけない。


こりゃ大変だな。


「書いた!」

ドヤ!とばかりに提出するとティーンは目を通して、満足そうに頷く。

他も俺がわかるのあれば?と言うと、また何枚か渡しながら喜んでくれた。

何とか2人掛りで終わらせた。

本当なら作戦を立てたり、討伐の責任者が書くらしく、ティーン1人で書くはずだったらしく、マジで助かったと言ってくれた。

ティーンからお礼を言われると嬉しくてニンマリ笑ってしまう。

「マジでありがとうな。ヒヨリ。」

ふんわりと笑う赤い瞳に吸い込まれそうに感じた瞬間…

チュッ

目を見開くとティーンの唇が俺の口にくっついていた。

触れた程度だが、熱を感じて唇に感触が残る。

ティーンは何事も無かったように、書類をまとめて提出しに出て行った。


取り残された俺。


え?何が起きたの!?





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