スキル覚醒の覇王ー最弱から成り上がる異世界チート伝

あか

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第11話

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第11話 神墜ちの刻

 ――空が割れていた。

 青空に無数の光の裂け目が走り、そこから光と闇が同時に降り注ぐ。
 王都アステルの人々は悲鳴を上げ、建物から逃げ出していく。
 空に浮かんでいた“神殿の光柱”が音もなく崩壊していった。

「……本当に、始まっちゃったのね」

 瓦礫の上に立つエリスの髪が、吹き荒れる魔力の風に揺れる。
 その隣では、リィナが銃を構え、空を睨んでいた。

「“神墜ち”。神々が座を失った時、世界の秩序が崩壊する――
 伝承の中だけの話だと思ってたけどな」

「違うわ。蓮が……本当に、神々を打ち倒したの」
 エリスの声は震えていた。
 誇りでも悲しみでもなく、ただ“畏れ”の色を帯びて。

 地面が震え、遠くの塔が崩れ落ちる。
 その瞬間、空の裂け目から“何か”が落ちてきた。

 それは、人の形をしていた。

 だが、その背には千切れた光翼があり、体から黒い煙が溢れている。
 神でも人でもない――堕天者。

「きゃあっ!」
 周囲にいた市民たちが逃げ惑う。

 堕天者は、無言で地面に手をつき、咆哮した。
 衝撃波が広がり、街の瓦礫が吹き飛ぶ。

「リィナ!」
「わかってる!」

 リィナが素早く引き金を引いた。
 光弾が堕天者の胸を貫くが、傷はすぐに再生する。

「効かねぇ!?」

「聖域系の再生能力……。
 普通の弾じゃ、神性体は倒せない!」
 エリスが呪文陣を展開する。

《封印術式・七光輪結界(セブンス・ケージ)》

 七つの光輪が堕天者の周囲を囲み、拘束する。
 だが――

「ギ……アアアアアアアッ!」

 堕天者の体から黒い雷が走り、結界が砕け散った。

「ちっ……もう制御不能なのね」

「なら、俺の弾で沈める!」

 リィナが腰のポーチから黒い弾丸を取り出した。
 魔力封印用――“虚界弾”。
 かつて神殿の禁忌兵器として開発されたもの。

「エリス、下がれ!」

 銃声が響いた。
 黒い閃光が空気を裂き、堕天者の心臓を撃ち抜いた。
 一瞬の静寂の後、爆光。

 堕天者は崩れ、光の粒となって消えた。

「……終わった?」
 リィナが息を吐く。

 だが、エリスの顔色は変わらなかった。

「違う……始まりよ。
 今の堕天者、元は“神の断片”……
 つまり、蓮が打ち倒した神々の“残響”が、地上に落ちてきているの」

「ってことは、あれが一体だけじゃない……?」

 空を見上げると、無数の光が落ちていた。
 王都だけでなく、山脈、海、砂漠――あらゆる場所に。

 堕天者の誕生が連鎖している。

「蓮……」
 エリスが唇を噛む。
「あなた、どこにいるの……」



 一方その頃――

 光の海の中。
 崩壊した神々の座を背に、天城蓮はゆっくりと目を開けた。

 白い大地が、灰に変わっていた。
 かつて神々が座していた“エデン・アーク”は、今や廃墟。
 空には裂け目が残り、そこから地上の世界が見える。

「……地上が……燃えてる」

 蓮の視界に、落下していく光の粒――堕天者たちの姿が映った。

「俺が神を倒したせいで……あれが」

《いいや、それは必然だ》

 頭の中に声が響いた。
 虚神。
 黒い霧が蓮の足元に集まり、形を成していく。

「神の座は壊れた。
 秩序も運命も、崩壊した。
 だが、新たな“創造者”が必要だ」

「俺に、その役をやれってか?」

《そうだ。
 汝ハ今、神を超エル模倣者ナリ。
 創造も破壊も、自由も苦痛も、すべてオマエノ手ニ在ル》

 蓮は拳を握りしめた。

「自由、ね……。
 でも、俺はもう、誰かを犠牲にして作る世界なんていらねぇ」

《愚カナリ。犠牲ナクシテ、創造ハ無シ》

「だったら、犠牲ごと上書きしてやる」

 蓮の目が金黒に光る。
 背後の空間に、無数の模倣陣が展開される。

《貴様……何ヲスル気ダ》

「世界を再構築する。
 ――“神も人も区別のない、完全な自由の世界”を」

 虚神が笑う。
《ソレハ、混沌ダ》

「それでいい」

 蓮の手が天を指した瞬間、裂け目が光を放つ。
 地上に降り注ぐ光の雨――それが、すべての堕天者を包み込んでいく。



 王都の空が一瞬、金に染まった。
 堕天者たちが動きを止め、苦悶の声を上げる。
 エリスとリィナが見上げた先で、空の裂け目がひとつに収束していく。

「……あれ、蓮……なの?」

 その光は、確かに彼のものだった。
 人でも神でもない、“模倣者”の光。

 リィナが呟いた。
「こりゃ……世界が変わるな」

「ええ……蓮が、本当に世界を書き換えようとしてる」

 エリスの目に涙が滲む。
 その涙は恐怖ではなかった。
 ――希望の光。



 光が地上を包み、世界の輪郭が変わり始めた。
 神の法則が消え、運命の線が途切れ、人々のスキルが“ゼロ”に戻る。
 全員が“無”から始まる世界。

 天城蓮の声が、空から響いた。

『ここからが本当の始まりだ。
 ――人間の世界を、模倣じゃなく“創造”しよう』

 そして、光がすべてを覆い尽くした。



 暗転。

 どれほどの時が経ったのかは分からない。
 新しい空の下、草原の上で一人の少女が目を覚ます。

 銀の髪。瞳に映る朝陽。

「……ここは……」

 エリスは立ち上がり、見渡した。
 世界は静かで、どこか懐かしい。
 しかし、空にはもう神殿も裂け目もない。

「……蓮?」

 風が吹き、遠くで誰かの声が響いた。

『――次は、“人として”また会おう』

 その声に、彼女は微笑んだ。
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