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第17話
しおりを挟む第17話 虚界の記録
――光の中を、落ちていた。
上下の感覚が消え、時間の流れもない。
ただ無数の記憶が、映像のように流れていく。
笑い声、悲鳴、祈り、絶望。
それは“世界の断片”――そして“神々の記録”。
「ここが……虚界の内側……?」
エリスが呟く。
足元には光の大地。
頭上には、逆さまに広がる海のような空。
その中で、彼女たち三人は漂っていた。
「まるで夢の中みてぇだな」
リィナが銃を握りながら周囲を見渡す。
だが銃声は響かない。
音そのものが存在しない空間――“情報だけの世界”。
ゼオルが一歩前に出て、光の粒を掴む。
「これは……神々の思考記録だ。
彼らの意識が、世界の根に残留している」
「つまりここは、“神の記憶装置”ってこと?」
エリスの問いに、ゼオルは頷いた。
「蓮が神を倒したとき、
神々は消滅ではなく“記録化”された。
彼がこの虚界に封じたのだろう。
だが……完全には止まっていないようだ」
ゼオルの視線の先。
光の地面の奥から、黒いひびが走っていた。
そこから、低い脈動のような音が響く。
「……これが、“原初神”の核」
ゼオルの表情が険しくなる。
「神々の記憶が融合し、新たな意識を形成しつつある」
リィナが顔をしかめる。
「そいつが動き出したら、また世界が壊れるってわけか」
「その前に止めるしかないわね」
エリスの声は静かだった。
⸻
奥へ進むほど、世界は“記憶”に満たされていった。
触れるだけで過去が流れ込む。
蓮が最初にスキルを覚醒した瞬間。
初めてエリスと出会った教室。
リィナが笑って銃を構えた日。
そして、神々との最終戦。
その全てが“ここ”に保存されていた。
「……これ、全部、蓮の記憶じゃないの?」
エリスが手を止め、光の粒を見つめる。
それは淡く輝き、声を放った。
――『模倣とは、学びであり、祈りでもある』
蓮の声だった。
懐かしく、どこか優しい響き。
「模倣……祈り……」
ゼオルがゆっくりと口を開く。
「かつて神々は、“模倣”を禁じた。
人が神を真似ることは、秩序への反逆とされた。
だが蓮は――その禁を破り、“模倣を進化”させた」
「つまり、模倣は神を超える手段になった……」
「そうだ。
だが同時に、“模倣”は神そのものを再生させる種でもある。
完全に消すことはできん。
なぜなら――“記録”とは、模倣の一形態だからだ」
エリスが息を呑む。
「だから神々の記録が、いま新しい“意識”を生んでいるのね……!」
⸻
しばらく歩いた先、彼らは巨大な水晶のような構造体を見つけた。
中には、眠るように浮かぶ青年の姿。
黒髪、金の瞳――天城蓮。
「――蓮!」
エリスが駆け寄る。
だが水晶の表面に触れた瞬間、強い光が弾け、彼女の意識が引き込まれた。
⸻
気づけば、そこは過去の光景。
蓮が“模倣”の力を初めて手にした瞬間だった。
高校の屋上。
夕焼けの風。
あの日の自分と、彼がいた。
「これ……夢じゃない、記録の中……!」
蓮の幻影が笑って言う。
『なぁ、エリス。
“模倣”ってさ、結局は“憧れ”なんだよ。
誰かになりたいって想いが、人を強くする。
でもその先にあるのは――自分自身だ』
エリスの目に涙が滲む。
「……あなたは、最初からそれを知ってたのね」
『いや、知らなかったさ。
お前と、リィナと出会って初めてわかった。
“人は、誰かを模倣することで、自分を創る”ってことを』
光が崩れ、記憶が霧のように消えていく。
最後に、蓮の声だけが残った。
『この虚界の奥に、“原初神の心核”がある。
それを壊せるのは――お前だけだ、エリス』
⸻
現実へ戻る。
エリスは光の中で目を開けた。
ゼオルとリィナが心配そうに覗き込んでいる。
「……見たのか」
ゼオルの声。
エリスは静かに頷く。
「ええ。蓮が教えてくれた。
原初神の心核を破壊すれば、すべての記録が消える」
「記録が消えるってことは……」
リィナの声が揺れる。
「この世界の“過去”も、一緒に消える。
でも、同時に“神の再生”も止められる」
沈黙。
エリスの拳が震える。
過去を守るか、未来を選ぶか――そのどちらか。
彼女は空を見上げ、笑った。
「蓮が言ってた。“模倣は祈り”。
なら、私は祈るわ――“人が前を向ける世界”を」
ゼオルが剣を抜く。
「行くぞ。原初神の心核は、この虚界の中心だ」
リィナが銃を構え、笑う。
「やっと盛り上がってきたな」
三人は、光と闇が交差する奥へと進む。
その先で待つのは、神々の最後の残滓――
そして、“模倣”の最終進化。
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