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第23話
しおりを挟む第23話 創造の軍、出陣
夜明けのアマギは、いつになく静かだった。
空には薄い雲が漂い、朝陽がゆっくりと大地を照らしていく。
昨日までの建設音や笑い声は止み、
かわりに、重く静かな空気が街を包んでいた。
エリスは丘の上から、その光景を見下ろしていた。
整然と並んだ人々の列。
それが、“創造連盟(ジェネシス・リンク)”初の守護部隊――
創造の軍(クリエイターズ・ガード)。
剣も銃も、従来の兵器ではない。
それぞれが胸に“創造素(クリア・コード)”を宿し、
自分の想像を形に変えて戦う――完全に新しい“意志の軍”だった。
「……ついに、始まるのね」
エリスが小さく呟く。
背後から蓮が歩み寄る。
「ああ。けどこれは“戦争”じゃない。
俺たちが創った世界を、“壊されないように守る”だけだ」
「守るための戦い……」
エリスは彼の横顔を見つめ、少し笑った。
「あなたらしい言葉ね。最初から、何も奪おうとしなかった」
「奪うより、創る方がずっと難しいからな」
蓮が肩をすくめる。
そのやり取りに、リィナが割って入った。
「おーい、二人とも! 出発の時間だぞ!」
彼女は黒の軽装に身を包み、腰には二丁の“想像銃”を下げている。
その銃は弾丸ではなく、“思念の結晶”を撃ち出す特別な武器だった。
「指揮官、準備万端だ」
「さすが現場の女王ね」
「へっ、そっちこそ“創造者様”だろ」
二人の軽口に、蓮が苦笑した。
「仲いいのか悪いのか分からんな……」
⸻
広場では、数百人の創造兵が列を作っていた。
誰もが目を輝かせ、緊張よりも希望を抱いている。
その中心に立つのは、元神の騎士――ゼオル。
「静粛に!」
低く響く声が、軍を鎮める。
ゼオルは剣を掲げ、声を張り上げた。
「我らは神の兵ではない! 支配の剣でもない!
この刃は、“人の意志”そのものを護るためにある!」
歓声が沸き起こる。
地面を踏み鳴らす音が、まるで雷鳴のように大地を震わせた。
その中央に、エリスと蓮が進み出る。
「――創造連盟代表、天城蓮より」
蓮は一歩前に出て、静かに言葉を紡ぐ。
「俺たちは、神を倒してこの世界を手に入れたわけじゃない。
神のいない世界を、“創るためにここにいる”。
だから恐れるな。
“破壊”は終わりの象徴じゃない――
新しい創造の“始まり”にできるはずだ」
兵士たちが頷く。
その目には、揺るぎない信念が宿っていた。
⸻
そのころ、南方の黒き砂漠。
“破壊の徒”たちが地を這い、空を覆うように進軍していた。
中心にはカイレンが立ち、腕を組んで空を睨む。
「来るか……“創造者”」
風が吹き、砂が渦巻く。
その中に、歪んだ光の門が開いた。
そこから姿を現したのは――かつて蓮と共に戦った者たち。
勇者、魔導士、聖女。
神々の戦争で命を落としたはずの仲間たちの影。
「まさか……!」
カイレンの瞳が細く光る。
「俺の中に刻まれた“記憶の残滓”……か。
だが都合がいい。お前たちを再利用してやる」
黒い稲光が走り、影たちが歪んだ姿へと変わる。
“再現体(ミラージュ)”。
記憶を歪め、再構築された“偽りの英雄”たち。
「創造者よ……お前の創った世界を、
お前自身の“過去”で滅ぼしてやる」
⸻
数日後。
アマギの軍勢が、ついに南方の国境へ到達した。
砂の大地に立つ蓮は、遠くに赤い稲光を見る。
その奥に、あの“灰の男”――カイレンがいる。
エリスが隣に立つ。
「見える? あの黒い塔」
「ああ。あそこが奴の拠点、“破壊の門”だ」
「懐かしい響きね。まるで、かつての“虚界”みたい」
「そうだ。奴は俺たちが壊した“虚界の構造”を、
破壊の核として再利用している」
エリスが眉をひそめる。
「世界の再崩壊を狙っているのね」
「止める」
蓮の声が静かに響く。
「たとえ俺の“過去”が敵になっても――」
ゼオルが剣を抜き、号令を発した。
「全軍、構え!
――これより、“創造の軍”、進撃を開始する!」
リィナが笑い、二丁の銃を掲げた。
「さぁて、派手に行こうじゃないか!」
アマギの旗が風に翻り、
白と金の光が、南方の黒い空を切り裂いた。
それは“人の時代”の最初の戦い――
創造と破壊の激突の幕開けだった。
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