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第24話
しおりを挟む第24話 偽りの英雄たち
――赤い風が吹いていた。
砂の大地は熱を帯び、空は黒い稲光を孕んでいる。
創造の軍の旗がはためき、金と白の光が荒野を照らす。
その前方に、影が立っていた。
五つ――いや、六つの人影。
それぞれが人間の姿をしているが、瞳には生命の光がない。
「……あれは……」
リィナが銃を構え、息を呑んだ。
「信じられねぇ……あれ、蓮の仲間だった連中じゃねぇか?」
エリスの胸が締めつけられる。
かつて蓮と共に神々と戦った、伝説の勇者たち――
剣士ライド、聖女ミリア、魔導士グレン、獣王ダロス、そして神官フィン。
彼らはすべて、神との最終決戦で命を落としたはずだった。
だが今、彼らは“黒い模倣”として蘇っていた。
「再現体(ミラージュ)……」
ゼオルが低く呟く。
「カイレンが記憶を歪め、再構築した“偽りの英雄”だ」
「こんな……っ」
エリスの声が震える。
「彼らの魂まで、利用するなんて……!」
蓮が前に出た。
その瞳は、深い悲しみと怒りに揺れている。
「やめろ……お前たちは、そんな姿でいていい存在じゃない!」
しかし応える声はなかった。
聖女ミリアがゆっくりと手を上げる。
その掌から、黒い光の槍が生まれる。
――かつて“癒し”を象徴していた聖女が、今は“破壊”を担っている。
「……ごめんなさい、蓮」
その唇が動いた。
声は機械のように冷たいが、ほんの一瞬だけ人間の震えが混じっていた。
次の瞬間、黒槍が放たれる。
⸻
轟音。
砂が弾け、光と闇がぶつかり合う。
蓮が即座に“創造陣”を展開し、光の盾を形成した。
黒槍がそれにぶつかり、激しい閃光が走る。
「くっ……やはり、奴らの“出力”は高い!」
ゼオルが歯を食いしばる。
リィナが銃を構え、空に向かって撃つ。
銃口から放たれた“思念弾”が弧を描き、黒い光を打ち消す。
「蓮! あんた、迷ってる場合じゃねぇ!」
「分かってる……でも、あいつらは――」
「違う! “あいつら”じゃない!
あれはただの残響だ! お前の罪じゃねぇ!」
その言葉に、蓮の瞳がわずかに光を取り戻した。
拳を握りしめ、声を張る。
「――創造陣・起動」
足元に幾何学の紋が浮かぶ。
光が奔り、彼の背後に“光の剣”が無数に形成された。
「模倣は終わった。
今度は“創造”で超えてみせる!」
放たれた光の剣が、黒い空を裂く。
闇の槍を打ち砕き、再現体の群れに突き刺さった。
黒い影が叫び、煙のように消えていく。
⸻
だが、ひときわ強い魔力が大地を震わせた。
残る一人――勇者ライドが、剣を構えて前に出た。
かつて蓮の右腕として戦った男。
その剣には、未だ“友情”の記憶が宿っていた。
「……ライド……」
「……お前は……間違えた……」
再現体の瞳が光り、声が漏れる。
「“人が神を超える”など、夢物語だ……」
蓮が首を振る。
「違う。夢じゃない。
“人が人を信じる世界”は、ここにある!」
ライドの剣と蓮の剣がぶつかる。
金属の音は鳴らない――代わりに、想いと想いの共鳴が響く。
エリスがその光景を見つめながら、胸を押さえた。
痛み。
そして、内側で何かが“呼吸”を始める感覚。
「なに……これ……?」
胸の奥――創造素が共鳴している。
光が溢れ、身体が浮かび上がる。
ゼオルが驚愕の声を上げた。
「エリス!? その光は……!」
エリスの瞳が金と蒼に輝く。
身体を包む光が形を取り、背中から白い翼のような光条が伸びた。
「これは……“創造者第二覚醒(セカンド・ジェネシス)”……!」
風が渦を巻き、光が天へと伸びる。
エリスの声が、戦場全体に響いた。
「――模倣も、破壊も、すべては“創るため”にある!」
その瞬間、彼女の放った光がライドを包み込んだ。
黒い霧が剥がれ、男の顔に一瞬だけ“安らぎ”が戻る。
「……ありがとう、エリス……蓮……」
微笑みを残して、勇者ライドの影は風に消えた。
⸻
戦場に静寂が訪れた。
残っていた再現体たちは光となり、空へ昇っていく。
それはまるで、“赦し”のようだった。
蓮が剣を下ろし、エリスのもとへ歩み寄る。
「……また助けられたな」
「ふふ、今度は私の番でしょ」
エリスが微笑む。
リィナが息を吐き、銃を肩にかけた。
「やれやれ、これでやっと一息か……」
しかしゼオルは、遠くの空を睨んでいた。
「……いや、まだ終わっていない。
この戦いは“序章”に過ぎん」
エリスが振り向く。
「……カイレン」
遠く、黒い塔の頂で、灰色の男が静かに彼らを見下ろしていた。
その唇が動く。
「創造者エリス……やはり、お前が“核”か。
ならば次に壊すのは、お前の心そのものだ」
空が裂けた。
黒い稲妻が世界を貫き、地平線が震える。
――“破壊の主戦”が、ついに幕を開けようとしていた。
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