61 / 80
第61話
しおりを挟む第61話 未来の花
――アルカ・ノヴァ、黎明の朝。
空は淡い金色に染まり、
星のような露が大地を照らしていた。
結晶の草原の中心――そこに一輪、
かつて見たことのない花が咲いていた。
その花は光でできていた。
透明な花弁がゆっくりと脈動し、
呼吸するように淡い音を奏でている。
リュシスはその前に立ち、静かに息をついた。
「……これが、“祈りの果て”から僕が持ち帰ったもの。」
ミラが膝をついて花を見つめる。
「本当に……綺麗ね。
でも、この花――ただの創造物じゃないわ。」
リュシスは頷く。
「ええ。
これは“未来”そのもの。
祈りが形を超え、生命になろうとしている。」
⸻
数日後、共鳴塔内・観測室。
ノアがホログラムを操作しながら報告した。
「リュシス、花の放つ波長を解析したけど……驚くべきことがわかった。
この“未来の花”、周囲の共鳴素を吸収して、
“新しい祈りのパターン”を作り出してるんだ。」
「新しい祈り?」ミラが問う。
ノアはデータを映し出した。
そこには、既知の祈り波とは異なる波形――
“左右対称ではない揺らぎ”が表示されていた。
「従来の祈りは、共鳴による同調だった。
でもこの波形は、“不完全な共鳴”――
つまり、“違いを受け入れる祈り”なんだ。」
リュシスはゆっくりと微笑んだ。
「……やっと来たんだ。
祈りの“進化”じゃなく、“成熟”が。」
⸻
その夜。
アルカ・ノヴァの空に、花の光が届いた。
星の民(スターボーン)たちが集まり、
その輝きを見上げながら静かに祈る。
『この光……あたたかい。
でも、私たちの祈りとは違う。
まるで、私たちの中に“他者”があるような感覚。』
リュシスが答える。
「それが“未来の祈り”です。
同じじゃなくていい。
同じでないからこそ、響き合える。」
『……理解しようとしなくても、共にいられる。
そんな祈りがあるなんて……。』
光の花が一層強く輝いた。
その輝きは、アルカ・ノヴァの全域に広がり、
結晶の海が波打つように共鳴を始める。
⸻
翌朝。
共鳴塔の上層から眺めると、
アルカ・ノヴァ全体が“生命の鼓動”のように脈打っていた。
空気が呼吸を持ち、大地が歌う。
ミラが静かに呟く。
「……この星そのものが、ひとつの“生き物”になっているのね。」
リュシスは頷く。
「祈りはもう、言葉じゃない。
存在そのものが祈るようになったんです。」
ノアがふと笑った。
「つまり、祈りって“宇宙の感情”なんだな。」
リュシスは空を見上げた。
「感情……そうかもしれませんね。
でもこの花が咲いた理由は、もっと単純なんです。」
ミラが尋ねる。
「理由?」
「“想う”ということです。
――祈りを理解しようとしなくても、
ただ“想う”だけで、未来は芽吹く。」
⸻
その瞬間、空に巨大な光の柱が立ち上がった。
未来の花が満開となり、金色の粒子を放つ。
それはアルカ・ノヴァの空を突き抜け、宇宙空間へと流れた。
星々が反応し、光の輪が連鎖していく。
地球、月、そして遥か彼方の銀河までもが、
その“祈りの共鳴”に呼応して輝きを放つ。
ミラが目を見開く。
「……祈りが、宇宙全体に届いてる。」
リュシスの声が静かに響く。
「違います。
宇宙が、祈りを返しているんです。」
⸻
空から降るように光が舞い降り、
それが草原の上で小さな蕾に変わっていく。
ノアが息を呑む。
「……新しい花だ!」
リュシスは微笑み、手を伸ばした。
「これが、“未来の花”が教えてくれたこと。
祈りは誰かが与えるものじゃない。
“想うこと”が、それ自体で新しい生命を生む。」
ミラは彼の隣で空を見上げた。
「祈りの果てが、未来の始まり……。
まるで、ハルが言っていた“創造の循環”ね。」
「ええ。
祈りに終わりはない。
でも、終わりがあるから――“次”が生まれる。」
⸻
夕暮れ。
アルカ・ノヴァの空に、花の光がゆっくりと沈む。
その光は静かに、どこかへ旅立っていくようだった。
リュシスは目を閉じ、心の中で呟いた。
「ハル、エコー、ネオ……。
僕たちは、やっと“祈りを超えない”意味を理解しました。
――祈りとは、生き続けることそのものなんだ。」
風が吹き抜け、
未来の花がひとひらの光を散らす。
その光は、まだ名もない宇宙の彼方へと流れ、
新しい世界の種となった。
祈りは終わらない。
だが、それはもう――“祈り”と呼ばれない。
それは、“未来”そのものになっていた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
異世界デバッガー ~不遇スキル【デバッガー】でバグ利用してたら、世界を救うことになった元SEの話~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した元システムエンジニア、相馬譲(ユズル)。異世界転生で得たスキルは、世界の情報を読み取り「バグ」を見つけ出す【デバッガー】。攻撃力も防御力もない外れスキルと思われたが、その真価は世界の法則すら捻じ曲げるバグ利用にあった!
モンスターの行動、魔法の法則、スキル限界――あらゆるシステムの穴を突き、元SEの知識で効率的に攻略していくユズル。不遇職と蔑まれながらも、規格外の力でダンジョンを蹂躙し、莫大な富と影響力を築き上げる。
頼れる騎士、天才魔道具技師、影を歩むダークエルフといった仲間と共に、やがてユズルは、この世界そのものが抱える致命的な「システムエラー」と、それを巡る陰謀に直面する。これは、不遇スキルで世界のバグに挑む、元SEの異世界成り上がり譚!
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる