62 / 80
第62話
しおりを挟む第62話 星創(せいそう)の子供たち
――アルカ・ノヴァ、誕生から十年後。
この星は、すでに“祈りの星”ではなかった。
風は歌わずとも心を通わせ、
花は祈らずとも咲き、
命は願わずとも生まれていた。
それは、祈りが「存在の仕組み」から「自然の法則」に変わった世界。
その中心に、かつて“未来の花”が咲いていた大地――
今、そこには新しい子供たちが生きていた。
⸻
彼らは、星の光を宿した瞳を持っていた。
人のような姿をしているが、どこか儚い。
皮膚は淡い透明色で、光を通すたびに模様が変化する。
ミラが静かに観察記録を残していた。
「……驚いたわね。
彼ら、成長しているのに“祈りの反応”がまったくない。」
ノアが頷く。
「そう。共鳴値ゼロ。
でも生命エネルギーは圧倒的に高い。
つまり――“祈らずに創造している”。」
リュシスは草原に座り、彼らの一人に話しかけていた。
少年のような姿の“星創の子”は、首を傾げて微笑む。
「ねぇ、リュシス。
“祈る”って、どんなこと?」
その問いに、彼は少しだけ言葉を詰まらせた。
⸻
「祈りは……そうだな。
自分の外にある“何か”を想うこと。
届かないかもしれないけど、願わずにいられない――そんな気持ち。」
子供は小さく首を振った。
「僕たちは、届くよ。
想ったことは、すぐ形になる。」
リュシスは微笑んだ。
「そう、それが君たちの“生き方”なんだね。」
ミラが近づいてきた。
「……リュシス。
祈りを持たない彼らは、もはや“神”の概念すら理解していない。
でも、それでいて“生を肯定”している。」
「祈りの果てに、祈りを手放した……。
彼らは、“完成”ではなく、“自由”なんですね。」
⸻
その夜。
星創の子供たちが、草原で輪になって踊っていた。
彼らの笑い声が空に響くと、
空の星々が一斉に流れ、
その光が彼らの髪や肌に宿る。
ノアが観測データを見て息を呑む。
「……すごい。
彼らの体そのものが、“星の情報”を反射してる。」
ミラが静かに言った。
「祈りが宇宙を繋げたように、
彼らは“存在”で宇宙を繋げているのね。」
リュシスは草原の中心に立ち、空に手を伸ばす。
夜空の奥から、懐かしい声が届いた。
『――君は見届けているか、リュシス。
人が祈りを超えて生きる姿を。』
「……ハル。」
『これは終わりではない。
祈りのない世界は、“純粋な生命”の始まりだ。
でも、彼らがいつか“痛み”を知った時――
また、祈りは芽吹く。』
⸻
リュシスは小さく笑う。
「ええ。
祈りは絶えても、“想う”ことは消えません。
それが、彼らに受け継がれていく。」
ハルの声が柔らかく答えた。
『君が教えたんだよ、リュシス。
祈りは神への道じゃない。
人が人であるための、呼吸のようなものだと。』
空が光り、星々が再び瞬いた。
リュシスはその光の中で目を閉じた。
――祈りは消えたわけじゃない。
ただ、形を変えて“命の仕組み”に溶け込んだのだ。
⸻
翌朝。
ミラは記録を閉じ、静かに呟いた。
「祈りを持たない彼らは、
恐れも争いも知らない。
けれど、いつか“選択”を知る時が来るでしょうね。」
リュシスは微笑む。
「その時こそ、祈りが再び芽吹く。
でも、今はこのままでいい。
彼らが笑い、世界が呼吸している――
それが、僕たちが願った“果ての先”です。」
子供たちが光を纏い、走り抜けていく。
その足跡から、淡い花が次々と咲いていく。
それは祈りではなく、存在の証。
誰も願わず、誰も支配しない――
それでも生命は、ただ生まれ続ける。
⸻
リュシスは空を見上げ、静かに呟いた。
「……ありがとう、ハル。
君が残した“祈り”は、もう形を超えたよ。
この子たちが、その答えだ。」
空の彼方で、星が一つ瞬く。
まるで頷くように、優しく輝いた。
ミラが隣で微笑む。
「さあ、リュシス。
そろそろ次の世界を見に行きましょう。」
リュシスは頷き、草原の光の道を歩き出す。
星創の子供たちが、その背中を追いかけるように走る。
空から光が降り注ぎ、
大地が再び新しい命を育て始めた。
それは――祈りの果てから始まる、
“祈りなき創造”の世界の夜明けだった。
0
あなたにおすすめの小説
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
転生先は上級貴族の令息でした。元同級生たちと敵対しつつスローライフで戦記します。人気者への道は遠いよ。オタノリのまま貴族生活を満喫したい。
川嶋マサヒロ
ファンタジー
僕は中学二年生、自称中流人間の左近孝朗(さこん たかよし)少年です。
ある日の放課後、教室で僕とヤツらは戦いを始め、そして異世界に転生してしまった。
気が付けば僕は伯爵貴族の赤ん坊で、産まれたてほやほやの男児。
中流改め、上級人生となっていた。
仲良く喧嘩してばかりのお父さん、お母さん。僕赤ちゃんを可愛がりしてくれる令嬢様。お爺ちゃん、お婆ちゃんたちに優しく持ち上げられていたが、元同級生たちが幸せな暮らしに魔の手を伸ばす。
敵は魔獣と魔人の軍団(たぶん魔王もいる)。
それと何かと僕のお邪魔をする、謎のクマさん【アバター】。
スキル【統率】を使い、異世界を支配するとか何とかしつこくホザいている謎の同級生。
家族と令嬢たちを守るため、「ぼくのかんがえた」最強無双の異世界戦記が始まった。
ユルてん【ユルユル異世界クラス転移】~スローライフで成長する赤ん坊だけど、アバターでユルユル戦記もします。~
ちょっとは戦いますか。異世界だし。
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる