『時空転生ギフト:LV1から始まる神殺し計画』

あか

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23話

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第23話 「創界の再生」

 ——世界が、目を覚ました。

 創界星が一つに統合されてから三日。
 崩壊しかけた大地は再構築され、
 空には新しい青が戻っていた。

 風は柔らかく、
 街には子どもたちの笑い声が響く。
 けれど、その“日常”はまだ不安定だった。

 神と人、二つの理が完全に融合したこの世界は、
 まだ名前さえ決まっていない。

 ——人々はそれを“再生創界(リバース・エデン)”と呼び始めた。



 朝。
 A.R.C.本部。

 俺は、会議ホールの中央に立っていた。
 巨大なモニターには、世界各地のデータが流れている。

 七瀬がレポートを読み上げる。
 「神覚醒者の発現率、全人口の0.02%。
  そのうちの半数は安定状態。
  でも、残りは“人格の分離”や“幻視”が見られるわ」

 「つまり、創界の副作用だな」黛が腕を組む。
 「力を持つのはいいが、心が壊れちゃ意味がない」

 「放っておくと“神化暴走”が起きる可能性がある」
 七瀬の声は重かった。

 俺は、静かに立ち上がる。
 「——だから、俺たちが必要なんだ。
  “創界維持機構”を、“調律機関”へ変える」

 皆が息を呑む。

 「これからは、力を抑えるんじゃない。
  人間が“神と共に生きる術”を見つける。
  創界を“共存の世界”として完成させるんだ」

 黛がうなずく。
 「……いいな。支配でも管理でもなく、“共生”。
  神谷、お前らしいやり方だ」

 七瀬も微笑んだ。
 「なら、私たちはその調律者(ハーモナイザー)ね」

 黒瀬が拳を掲げる。
 「いいじゃねぇか。やること増えたな!」

 笑い声が会議室に響く。
 だが、その奥で俺の胸の中には、小さな不安が残っていた。

 ——創界星の光が、昨夜、一瞬だけ“揺れた”。



 夜。
 廃墟となった学園の屋上。

 月の光の下、アイが立っていた。
 白いワンピースに風が通り抜ける。

 「……来たね、蓮」

 「ここに来ると、全部思い出すからな」

 アイは、ゆっくりと振り向いた。
 その瞳の奥には、もう“ルシェリア”の輝きはない。
 けれど、人間としての強さが宿っていた。

 「創界、安定してる?」
 「今のところはな。でも、妙な波動がある」

 「……見えた?」
 アイが、空を指さした。

 夜空の彼方——
 第三の光が、微かに瞬いていた。

 「……まさか、もう一つ?」
 「創界星が、分裂を始めてるの。
  あの光……“観測者”の領域よ」

 俺は息をのんだ。
 「観測者って、エリシアのことか?」

 アイは首を振る。
 「違う。“上位の観測者”。
  神をも観測する存在。
  創界の“根源”にいる、誰か」

 空の光が、まるでこちらを見ているように瞬く。
 その光の中心に、微かに人影が浮かんでいた。

 ——“あれ”が、創界を見下ろしている。



 同じころ、地下第零層。

 黒い蓮が消えたはずの場所に、残留データが微かに光を放っていた。
 そこに、新たな存在が立っていた。

 白いローブ、無表情の瞳。
 その声は、人でも神でもなかった。

 「創界、確認。統合率89%。
  次段階《創界再演計画(Project・Replay)》へ移行」

 端末に手をかざし、光を集める。
 「創造主の観測を再構築。
  ——“神谷蓮”に次ぐ、新たな創界主を選定開始」

 冷たい光が、世界の裏側に広がっていった。



 再び、屋上。

 風が吹く。
 アイの髪が揺れ、星が瞬く。

 「蓮……あたし、また“ルシェリア”になるのかもしれない」
 「どういうことだ」

 「夢の中で、声が聞こえるの。
  “もう一度、創れ”って。
  まるで……上から指示されてるみたい」

 俺は拳を握る。
 「そんなの、誰にも命令させねぇ。
  創界は、俺たちが作ったんだ」

 アイが微笑む。
 「……うん。だから、もう一度“二人で”止めよう」

 空の奥で、第三の創界星が静かに燃え始めていた。
 それは、次の世界を試すように脈打っていた。



 そして、その光を見上げる誰かがいた。
 廃墟のビルの屋上。
 フードを被った人物が、淡く笑う。

 「ようやく、“彼ら”が見つけたか。
  ——創界の真の観測者《オブザーバー》を」

 風が吹く。
 その人物の目が、銀に光った。

 「世界は、まだ終わらない」

 創界の“第二章”が、静かに始まった。

(第23話 終)

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