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24話
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第24話 「創界再演計画」
——夜空に、第三の星が生まれた。
それは、他の星々とは明らかに違っていた。
白金ではなく、無色透明の光。
まるで“存在そのもの”を観測するためだけに輝いているようだった。
風が止み、時間が一瞬だけ止まった。
世界の“目”が、こちらを見た。
その瞬間、俺の中で何かがざわめいた。
耳鳴りのような、けれど明確な“声”が響く。
——《創界再演計画、フェーズ1開始》——
⸻
A.R.C.本部。
警報が鳴り響く。
「蓮ッ! また異常反応だ!」
黛の叫びと同時に、七瀬がホログラムを展開した。
モニターには、地球全域に広がる光の網が映し出されている。
その中心に、第三の創界星から降り注ぐ無数の“観測線”。
「……これ、なんのデータだ?」黒瀬が呟く。
七瀬が画面を拡大し、息を飲む。
「人間の“意識ネットワーク”に侵入してる……!
これ、神経信号を直接“観測”してるのよ!」
「観測?」
「そう。見るんじゃない、“記録してる”。
私たちが考えること、選ぶこと……全部、あの星に吸われてる!」
花音が震える声で言った。
「じゃあ……あの星は、“神”より上の存在?」
黛が低く答えた。
「“観測者”。
——神を観測する神、ってことだ」
俺は拳を握りしめた。
「つまり、“創界”そのものが“テストされてる”」
七瀬が顔を上げる。
「このまま放っておいたら、また“リセット”される。
世界が……“やり直し”にされる!」
⸻
その頃、空の上——観測領域。
透明な階層の中を、光の粒がゆっくりと流れていた。
そしてその中心に、白いローブの存在が立っていた。
——白の観測者(ホワイト・オブザーバー)。
その顔には、表情がなかった。
だが声だけが、優しく響く。
「創界、確認。
神と人の融合は89.3%で安定。
だが、不完全な意思体が存在——“神谷蓮”」
その名を口にした瞬間、観測者の瞳が微かに揺れた。
「彼の“選択”こそ、創界の誤差。
——再演計画、続行」
白い光が広がり、無数のデータが下界へ降り注いだ。
⸻
同じ時刻。
蓮は屋上に立っていた。
第三の星が輝くたび、胸の奥が焼けるように痛む。
ウィンドウが自動的に開いた。
────────────────
《創界エラー:観測干渉発生》
原因:外部上位層アクセス
推定干渉主:White Observer
────────────────
「……“観測者”ってやつか」
背後から、アイの声。
「感じた? あの星……あたしにも声が届いたの」
「何て言われた」
「——“君たちは、間違えた”って」
風が吹く。
アイの髪が夜空に舞う。
その瞳には、わずかな恐怖と悲しみ。
「創界の結果を“観測”してる存在が、やり直しを望んでる。
つまり、“この世界は不合格”なんだよ」
俺は奥歯を噛んだ。
「だったら、もう一度証明してやる。
——この世界は、間違いじゃねぇって」
「どうやって?」
「行く。あの星の中へ」
アイの目が見開かれる。
「そんなの、無理だよ! あそこは上位層、神域のさらに外側……」
「創界の主は俺だ。道ぐらい、こじ開けてやる」
⸻
A.R.C.の会議室に戻った俺は、全員を集めた。
「聞け。第三の創界星——“観測者の領域”に突入する」
黛が言う。
「行くって、どうやって?」
七瀬が即座に答える。
「理論上、可能よ。
創界の中枢エネルギーを逆位相にすれば、
観測層との境界を短時間だけ開ける」
「ただし、失敗すれば消滅だ」黛が補足する。
俺は笑った。
「いつも通りじゃねぇか」
黒瀬が立ち上がった。
「行くなら、俺も行く」
花音も頷く。
「あたしも」
七瀬がタブレットを閉じ、黛を見た。
「結局、みんな“バカ”なんだよね」
黛が肩をすくめて笑う。
「そのバカさが、世界を動かすんだ」
⸻
そして、準備が整った。
創界の中心、巨大な光のゲートが開く。
アイが隣に立つ。
「本当に行くの?」
「ああ。行かなきゃ、誰かに“やり直される”」
「でも、もし戻れなかったら——」
「その時は、俺の分まで見届けてくれ。
この世界がどんな形でも生き続けるなら、それでいい」
アイは涙を堪え、微笑んだ。
「……うん。でも、一人で行かせない」
「は?」
「だって、“創界”は二人で始めたんでしょ?」
光が強くなり、視界が白に染まる。
「行こう、蓮。——観測者の領域へ」
「おう。世界の答案、見せてやろうぜ」
——光の中へ。
二人は、消えた。
⸻
その瞬間、第三の創界星が眩く輝き、
空に巨大な紋章が浮かび上がった。
それは“再演”の印。
——《Project・Replay》
そして、空の彼方で白の観測者が静かに呟く。
「観測対象、神谷蓮および月城アイ。
再評価フェーズへ移行——」
光が再び揺れ、世界は次の試練へ向かう。
(第24話 終)
——夜空に、第三の星が生まれた。
それは、他の星々とは明らかに違っていた。
白金ではなく、無色透明の光。
まるで“存在そのもの”を観測するためだけに輝いているようだった。
風が止み、時間が一瞬だけ止まった。
世界の“目”が、こちらを見た。
その瞬間、俺の中で何かがざわめいた。
耳鳴りのような、けれど明確な“声”が響く。
——《創界再演計画、フェーズ1開始》——
⸻
A.R.C.本部。
警報が鳴り響く。
「蓮ッ! また異常反応だ!」
黛の叫びと同時に、七瀬がホログラムを展開した。
モニターには、地球全域に広がる光の網が映し出されている。
その中心に、第三の創界星から降り注ぐ無数の“観測線”。
「……これ、なんのデータだ?」黒瀬が呟く。
七瀬が画面を拡大し、息を飲む。
「人間の“意識ネットワーク”に侵入してる……!
これ、神経信号を直接“観測”してるのよ!」
「観測?」
「そう。見るんじゃない、“記録してる”。
私たちが考えること、選ぶこと……全部、あの星に吸われてる!」
花音が震える声で言った。
「じゃあ……あの星は、“神”より上の存在?」
黛が低く答えた。
「“観測者”。
——神を観測する神、ってことだ」
俺は拳を握りしめた。
「つまり、“創界”そのものが“テストされてる”」
七瀬が顔を上げる。
「このまま放っておいたら、また“リセット”される。
世界が……“やり直し”にされる!」
⸻
その頃、空の上——観測領域。
透明な階層の中を、光の粒がゆっくりと流れていた。
そしてその中心に、白いローブの存在が立っていた。
——白の観測者(ホワイト・オブザーバー)。
その顔には、表情がなかった。
だが声だけが、優しく響く。
「創界、確認。
神と人の融合は89.3%で安定。
だが、不完全な意思体が存在——“神谷蓮”」
その名を口にした瞬間、観測者の瞳が微かに揺れた。
「彼の“選択”こそ、創界の誤差。
——再演計画、続行」
白い光が広がり、無数のデータが下界へ降り注いだ。
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同じ時刻。
蓮は屋上に立っていた。
第三の星が輝くたび、胸の奥が焼けるように痛む。
ウィンドウが自動的に開いた。
────────────────
《創界エラー:観測干渉発生》
原因:外部上位層アクセス
推定干渉主:White Observer
────────────────
「……“観測者”ってやつか」
背後から、アイの声。
「感じた? あの星……あたしにも声が届いたの」
「何て言われた」
「——“君たちは、間違えた”って」
風が吹く。
アイの髪が夜空に舞う。
その瞳には、わずかな恐怖と悲しみ。
「創界の結果を“観測”してる存在が、やり直しを望んでる。
つまり、“この世界は不合格”なんだよ」
俺は奥歯を噛んだ。
「だったら、もう一度証明してやる。
——この世界は、間違いじゃねぇって」
「どうやって?」
「行く。あの星の中へ」
アイの目が見開かれる。
「そんなの、無理だよ! あそこは上位層、神域のさらに外側……」
「創界の主は俺だ。道ぐらい、こじ開けてやる」
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A.R.C.の会議室に戻った俺は、全員を集めた。
「聞け。第三の創界星——“観測者の領域”に突入する」
黛が言う。
「行くって、どうやって?」
七瀬が即座に答える。
「理論上、可能よ。
創界の中枢エネルギーを逆位相にすれば、
観測層との境界を短時間だけ開ける」
「ただし、失敗すれば消滅だ」黛が補足する。
俺は笑った。
「いつも通りじゃねぇか」
黒瀬が立ち上がった。
「行くなら、俺も行く」
花音も頷く。
「あたしも」
七瀬がタブレットを閉じ、黛を見た。
「結局、みんな“バカ”なんだよね」
黛が肩をすくめて笑う。
「そのバカさが、世界を動かすんだ」
⸻
そして、準備が整った。
創界の中心、巨大な光のゲートが開く。
アイが隣に立つ。
「本当に行くの?」
「ああ。行かなきゃ、誰かに“やり直される”」
「でも、もし戻れなかったら——」
「その時は、俺の分まで見届けてくれ。
この世界がどんな形でも生き続けるなら、それでいい」
アイは涙を堪え、微笑んだ。
「……うん。でも、一人で行かせない」
「は?」
「だって、“創界”は二人で始めたんでしょ?」
光が強くなり、視界が白に染まる。
「行こう、蓮。——観測者の領域へ」
「おう。世界の答案、見せてやろうぜ」
——光の中へ。
二人は、消えた。
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その瞬間、第三の創界星が眩く輝き、
空に巨大な紋章が浮かび上がった。
それは“再演”の印。
——《Project・Replay》
そして、空の彼方で白の観測者が静かに呟く。
「観測対象、神谷蓮および月城アイ。
再評価フェーズへ移行——」
光が再び揺れ、世界は次の試練へ向かう。
(第24話 終)
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