『時空転生ギフト:LV1から始まる神殺し計画』

あか

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26話

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第26話 「創界の子ら」

 ——あれから一年が経った。

 世界は落ち着きを取り戻しつつあった。
 創界の再生によって、街の空気は変わった。
 空は青く、風は穏やか。
 けれど人々の中には、確かに「何か」が芽生えていた。

 神と人が融合した創界——その記憶は、無意識の奥で受け継がれている。
 人の中に眠る“光の記憶”。
 それが、次の時代を動かし始めていた。



 桐生市東部、新設学園——創界学舎(エデン・アカデミア)。

 そこでは、特殊な能力を持つ少年少女たちが集められていた。
 彼らはみな、「創界の記憶」を部分的に受け継いでいる“創界子(リジェネラント)”と呼ばれる存在。

 俺——神谷蓮は、その学園の理事兼教官として日々を過ごしていた。
 教師になったなんて、自分でもまだ信じられない。

 「——おはよう、先生!」
 明るい声が響く。振り向けば、一人の少女が駆け寄ってきた。

 黒髪のツインテールに、蒼い瞳。
 名前は、天城澪(あまぎ・みお)。
 創界学舎一期生にして、もっとも強い“共鳴適応率”を持つ生徒だった。

 「おはよう、澪。今日はシミュレーション授業だろ」
 「うん! でも……ちょっと怖いんです。昨日から夢を見るの」

 「夢?」

 「……空の上に、もう一つの星が見えるの。
  みんな忘れてるのに、私だけ見える」

 俺の心臓が、ひとつ跳ねた。

 (まさか……)

 「どんな星だ?」
 「白くて……でも、目みたい。
  見られてる気がする」

 俺は静かに息を吐いた。
 ——まさか、“観測者”の残響がまだ残っているとは。



 その日の放課後。

 俺は職員室で端末を開いた。
 創界星観測システム《EVE》が異常を検出していた。

 ────────────────
 《観測値変動》
 光度変化:+0.002%
 推定発生源:個体コード R-01(天城澪)
 ────────────────

 「……やっぱり、彼女か」

 そこへ、アイ——いや、今は月城アイ=ルシェリアとして正式に副理事を務めている彼女が入ってきた。
 白いジャケットに、少し疲れた笑顔。

 「澪ちゃんのデータ、見た?」
 「見た。創界子の中で唯一、観測層と干渉してる」

 「まるで、“次の観測者”みたいね」
 アイの声には不安が滲んでいた。

 俺は首を振る。
 「違う。まだ子どもだ。
  観測者の力なんかじゃなく、自分の意志で進もうとしてる」

 「でも、その力が暴走すれば、再び“再演”が始まるかもしれない」

 「……それでも、俺たちは見守るしかねぇよ」
 「……創界の時と同じだね」
 「そうだ。見届ける。それが“創界を生きる”ってことだ」



 夜。

 学園の屋上で、澪は空を見上げていた。
 月の隣に、かすかな光が瞬いている。
 「……あなた、誰なの?」

 彼女の中で、声が響いた。

 ——《リジェネラント第01号、観測値安定。君は“新しい創界”の種だ》

 「誰……? やめて……!」

 光が弾け、瞳の奥に紋章が浮かぶ。
 それはかつてルシェリアが持っていた創界の印だった。

 「……先生……助けて……」



 その瞬間、蓮の端末が真っ赤に点滅した。

 《創界波動検知:第3層干渉開始》
 《発生源:創界学舎屋上》

 俺は駆け出した。
 夜風を切り裂きながら、屋上の扉を開ける。

 そこにいたのは、光に包まれた澪。
 彼女の背後に、うっすらと観測者の輪郭が浮かんでいた。

 「澪っ!!」

 彼女が振り向く。
 その瞳は、銀に染まっていた。

 「……先生、聞こえるの。
  “彼ら”の声が。世界を“もう一度見たい”って」

 「やめろ! それはお前の声じゃない!」

 俺が叫んだ瞬間、
 空に亀裂が走った。
 まるで、新しい創界の芽が芽吹くように。



 アイが駆け込んでくる。
 「蓮! 創界波、臨界点超えた!」

 「わかってる! ……澪を止める!」

 彼女が俺の腕を掴む。
 「待って! 今無理に止めたら、創界層が崩壊する!」

 「じゃあ、どうしろってんだよ!」

 アイが小さく息を吸い、瞳を閉じる。
 「——私が、繋ぐ」

 次の瞬間、アイの体が光に包まれた。
 ルシェリアの紋章が胸に浮かび上がる。

 「待て、アイっ!」
 「大丈夫。私は“神でも人でもない”。
  だから、両方を繋げる」

 光が二人を包み込み、空が開く。

 その中心で、澪が涙を流しながら呟いた。
 「先生……これが、“創界の続き”なんですね……」

 「違う、澪。これは“お前たちの創界”だ」

 白い光が夜空を染め、
 新しい星が静かに生まれた。



 夜明け。

 世界は何事もなかったかのように穏やかだった。
 ただひとつ、空に四つ目の星が輝いている。

 それは——
 次世代の創界子たちが導く、“未来”の印だった。

 アイが微笑みながらつぶやく。
 「……世界は、まだ進化してる」

 俺は頷き、青空を見上げた。
 「不完全なまま、進む。
  それが、創界の子らの使命だ」

(第26話 終)

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