詐欺る

黒崎伸一郎

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天才的素質

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今日は直美のインターハイの日だった。
私は入院中だったが外出は全く問題はなくすることが出来る。
私はどう言って慰めてやろうかと考えていた。
幾ら素質があったとしても一年近くも練習してないのにたった二ヶ月の間、どんなに頑張って練習しても勝ち続けて優勝することなどあり得ない。
「よく頑張ったな」、「やるだけやったんだ、悔いはないだろう」
(うーん、どれもパッとしないな)なかなかいい言葉が浮かんでこない。
昼飯を食べてから私はやはり今日は外出ではなく外泊にすることにして、外泊届けをナースステーションに出してから病院を出た。
入院してから外出は度々していたが、外泊は初めてだった。
今日は久々に直美と会った後で一人で酒でも飲みに行くつもりだった。
病院内での生活はあまり不自由は感じなかったが、アルコール依存症での入院のため週に二度、アルコール依存性の為の勉強会があった。
その勉強会には入院している人は全員出席しなくてはならなかった。
それは二時間ほどで済むのだがその二時間がすごく長く感じ、退屈だった。
それを除けば後は部屋で自由にテレビを見るのもよし、広いフロアで他の患者と喋ったり、ゲームをすることもできた。ただ、私は元来パチンコとか競馬とかの博打事が好きなため、外出してそちらにのめり込む生活になっていたのだ。
外に出た私は直美からの連絡を待つのに喫茶店に入った。
時計を見ると二時を回っていた。
負ければ終わりのトーナメントである。(終わって友達と話でもしているのかな?)と思いアイスコーヒーを飲んでいたが三時を回り四時になろうかとしている。
未だ携帯は鳴らない。
まさか私に連絡をするのを忘れているのかな?とも思ったが、昨日も携帯で話しその後もメールで試合が終わったら時間を取る事の約束をさせられてたのだから(それはないな)、と思っていたところに携帯が鳴った。
「今、試合が終わったわ。」と少し落胆した声である。(負けたんだな!)と思い「頑張ったんだからいいじゃないか。お腹すいたろ?ご飯一緒に食べよう」と言って残念会でもしようと言いかけた。
すると、「でも準優勝、約束の二位には入ったわよ。」と話す言葉に(嘘だろ!そんな奇跡があるはずがない)
私は思わず口に出そうになった。
「とにかく約束の二位にはなったから今からお祝いしてくれる?」
直美は準優勝ではあまり満足できないとでもいいたげな感じで話す。
「勿論だよ。とにかくご飯食べに行こうか?」「やった!私昼ごはんあんまり食べなかったからお腹ペコペコなんだ。
今から着替えるからどこで待っててくれる?」「そうだな、駅前のデパートの前で待ってるよ。何時に来れる?」
と聞いた。
直美は着替えは持ってきているらしく、五時半には駅に来れるとの事だったので五時半に駅前のデパートの前で待ち合わせることにした。
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