詐欺る

黒崎伸一郎

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保険金詐欺のマニュアル

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(頭が痛い!)目が覚めた私はいつもと違う天井があった。
左を見て私はびっくりした。
女が寝ていたのだ。
コンタクトをしている私だが外していたからはっきりとは見えない。
もしかしたら…?
やはり直美である。
また、あれからの記憶がない。
ホテルに一緒に来たのかさえ、関係を持ったのかも全く覚えていない。
パンツは履いているし直美も服を着たまま寝ているので(やってはいないだろう!)と思った。
とりあえず部屋の外に出て自動販売機でペットボトルのお茶を二本買い部屋に戻り一本を一気に飲んだ。
すやすや寝ている直美の顔を見ていたらずっと見てい続けたい自分がいた。
十分以上見ていただろうか?
目を擦りながら私を見て「何?なんかついてる?」
私は少し笑いながら「よだれ垂らして寝てたから面白いんでずっと見てたんだ」「嘘?」直美は口元に手をやりよだれを拭き取る格好をした。
「はい、嘘です」よだれを垂らしたとしても自分が口で拭き取りたいくらいだった。(私は変態かもしれない?)
そんなことを言ったら十八歳の女性はヘンタイだと罵るに違いない。
「もう!」と言いながら顔を洗い歯を磨く。
「昨日のくろはきはんふごかったよ」歯磨きしながらだからよくわからなかったが、おそらく私は昨日すごかったと言ったのだろうと理解した。
私は直美の顔を見つめ「嘘だろ!」と声を荒げた。
「……嘘だよ!」歯磨きを終えた直美はタオルで口を拭きながら、ペロリと舌を出して、ベーと言いながら笑った。
何か少しもったいないことをしたな、とは思ったが海人の(見守ってくれ)の約束を破らなくて(とりあえず、よかった)と思う私だった。
ペットボトルのお茶を直美に渡し、私の記憶のなくなった後からの行動を聞く。
酔った私は直美のことは好きだけど、歳も違うからダメなんだと何度も言ったらしい。
直美が歳なんて関係ないって言っても俺は詐欺師だからダメだって言ったとも言った。
やはり酔ったら何言うかわかんないからもう直美の前では絶対に酔えないと思った。
直美は好きと言うのも詐欺師と言うのも酔っぱらった勢いで出た言葉だとわかってると言ってくれた。
(いや、全部ホントのことなんだ!)なんて言えるはずがなかった。
そして近くの喫茶店でモーニングを食べて別れた。 
毎日携帯で連絡してくるらしい。
私は複雑な気持ちだったが、悪い気はするわけがない。
直美はこの人生で私が見た中で一番の好みの女性だった。
美人と好みは全く違うが、誰がなんと言っても大好きなタイプであることには違いなかった。
直美と別れた私は病院に帰った。
昨日飲みすぎたので酒を飲んだのがバレないようにちゃんと歯を磨いてから病院に入った。
これからしばらくは外泊はしない。
というか、もう退院の日までは外泊なしと決めた。
外泊が何度もあると保険金を請求する時に何かと問題になる。
できれば外泊はなしの方がいいのに決まっていた。
部屋に帰ると私は保険金詐欺のマニュアルを作ることにした。
1 入院するのは男である
2 保険会社は全て郵送可能の会社とする
3 保険会社は七つの会社とする
4 資料請求は同時で構わないが保険に入るのは先に三社そして一ヶ月置いて四社に入る
5 二回以上引き落としをした後に病院に行き初診を受ける
6 入院期間は六十日以上八十日未満とする
7 入院紹介者には三十万円を保険給付金が入金の後に支払う
以上が私の作ったマニュアルである。一つずつ説明していこう。
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