詐欺る

黒崎伸一郎

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保険金詐欺のマニュアル2

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1 男の方が自分が扱いやすいという事
2 対面で話をする会社は時間がかかる、面倒
3 保険会社の数は多いのに越したことはないがあまり入りすぎると給付金が出ない可能性が高い為に七社とする(これでも多すぎる)
4 資料請求の時は保険会社からのチェックがまだ入らないが、保険加入時にはチェックが入る為チェックの割と厳しいと思われる三社に先に入り、一回引き落とし(一か月後)があったのを確認して残りの四社に入る
5 二回引き落とし(二か月後)があればその後病院に行き初診を受ければ給付金は出る。
ただし三社は一ヶ月分余分に引き落とす為、三回となる
6 多くの保険会社の一回の保険給付金の限度日数は六十日だが、百二十日、百八十日というのもあり、入院日数は八十日を限度にしないと入院代も馬鹿にならない
7 基本的には入院患者は自分で探すが、もし入院した人が入りたい人を見つけて入院した場合、謝礼を渡す。その金額は一人につき三十万円とする

自分なりに考えた入院のマニュアルであった。
もちろんマニュアルは少しずつ変える可能性はあり、付け加えることもあると考えてはいる。
何人か集めて入院させるつもりだから必ずこのマニュアルは必要になるはずであった。
このマニュアルは、先ず私自身の入院の給付金が全部の保険会社から出るということが判明した時に初めて通用する私だけのマニュアルであった。

私は結局六十日より二日足した日にちで退院した。(62日)
退院が二日伸びた理由は、居心地がいいのと退院してもその後、入院患者を探す事以外の事は全く考えてなく、どうしようかと考えていたからだった。
退院の前の最後の医師の診断の時には、「先生のおかげで体調は良くなりこれからアルコールをやめて真面目に仕事して頑張ります。
これからは毎月必ず通院しますのでよろしくお願いします」
と医師のお陰で体調は良くなったという事を強調する事で医者は必ず月に一回の通院を勧めるのだった。
もちろん医者のおかげで体調が良くなったわけではないし、そもそも体調が悪かったわけでもない。
似非アルコール依存症だからである。
退院の日、受付に保険会社三社の診断書を提出して入院代金を支払い病院を出た。
私の入っている保険会社は五社だが二社は原本のコピーを出せばいいので診断書は三社分医師に書いてもらうことにした。
退院後二週間してから通院し、医師には「退院後はアルコールは飲まずに頑張ってます。
これからもよろしくお願いします」と言って医師の機嫌を害さないよう心がける。
そりゃそうだ、これから何度かこの病院にお世話になるのだから感じの悪い患者のイメージだけはつけてはいけない。
実際、精神病院の医師は何を考えているのかわからない人ばかりである。
私の担当の医師はまだよかったが、患者の中には医者の悪口ばかり言う人も何人かいた。
まあ精神を病んで入院している人の病院だからいろんな人が患者で来るので、一人一人親身になって考えてたら自分が病んでしまうだろう。
現実に病んでいそうな医者も多いのかもしれないが…。
診察が終わり会計の時、依頼した診断書を受け取り支払いを済ませた。
診断書は一通五千円プラス消費税、三通で一万五千円プラス消費税だった。
診断書を見ると入院日数が六十三日とあった。
外泊が入院日数に含まれている。
しかも外泊の欄は何も書いてなく、外泊したことさえ記されていなかったのだ。
(ここの病院は相当使える病院で、しかも自分の担当医師が良かっだのだ)
そう思った私はこの医師でこれからのマニュアルを使っていこうと決めたのである。
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