詐欺る

黒崎伸一郎

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精神異常者

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二十四歳の時、私はクレープ喫茶を始めた。
もちろん親の金である。
駅前のピザハウスが辞めると聞いて交渉し五百万円で内装を買った。
そして一部改装をして総額八百万円掛かったが、頑張るからということで両親に出してもらったのだ。
ただ田舎の街でクレープはなかなか流行らない。
それでも二ヶ月くらいすると高校生が学校が終わったら集まり出して、あっという間に利益が出るようななった。
バイトも高校生で可愛いどころを入れる。
ある時、バイト面接に来た高校生を見てわたしは不意にキスをしたのだ。
今ではまず問題になってるだろう。
(その時でも問題になるはずだが…)私は病気なのかもしれなかった。
訳が分からないのだ。
面接に来て明日からお願いと、言った瞬間に人が見ていないと思いキスをしたのだ。
普通常識のある人なら絶対にしない。
警察沙汰になってもおかしくないからである。
(やはり私は精神異常者なのかもしれない)そんなことさえ思うようになったのだ。
幸いキスをした高校生は次の日からバイトに入り付き合うことになった。
ここは東京ではない。
田舎の喫茶店なのだ。
高校生と関係を持ち毎日遊び歩く。
そんなことが続く訳がない。
そんなことは全く気にもしないで相変わらずナンパをする。
そんなある日バイトの志保の友達が来た。
志保とはキスをして付き合い始めた高校生だ。
話をするとなんと私の家の隣の高校生である。
可愛らしい。
志保とはタイプの違う正統派の美人である。
私は「今日夜中の一時に手を叩いたら屋根から遊びにこいよ!」と声をかけた。志保に聞こえないようにである。
彼氏もいると聞いていたので当然断ってくると思ったが「分かった。一時ね」と返事が返る。
本当にあり得ない話ばかりであった。
事実その日の一時に窓を開け、手を二度叩くとその娘は屋根をつたいながら窓から私の二階の部屋に入ってきたのだ。
私は少し話をしてベッドに静かに倒して関係を持った。
ただその話には後があって、関係を持った後に部屋に帰ったら部屋の明かりがついていて両親が待っていたらしい。
その時に私に呼ばれて部屋に来て関係を持ったなんてわかったら、私の親とも親交があるため大変な事件になった恐れがあった。
私の名前だけは出さずにいてくれてなんとか助かったのだった。
私は自分で本当に何をしたのかわからない人間なのだろう。
やっていいことと悪いことの区別がつかないのだ。
ただ人殺しをしていないが、それと同じようなことを平気でできる人間である。
それはおそらく治らないだろう。
できれば人の痛みが少しはわかる人間でありたいのだが…。
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