詐欺る

黒崎伸一郎

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薬の副作用

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病院に帰り病室に入ってベッドに腰を下した。
一村と会って怖いとかは思わなかったが、緊張したせいか少し疲れた。
横になって一眠りでもしようかと思ったが今寝ると夜寝れなくなるので風呂に入ることにした。
ここの病院の風呂はいつでも新しく湯をいっぱいに入れて入ることができる為、いつでも綺麗な風呂に入れるのだ。
風呂から出てやっぱり疲れが出たのか睡魔に襲われて眠ってしまった。
一時間ほど寝ただろうか、携帯のメールの音で目を覚ました。
直美からである。
直美からは必ず毎日電話とメールがある。
電話は普通一日一回だがメールは四、五回はある。
高校時代はバイトばかりで携帯を触る時間さえなかったのだろう。
私で良ければ時間があればいつでもかけてくればいいのだった。
(ちなみに私はいつでも時間はある。)
メールはやはり、たわいもないことであった。
たわいもないメールにたわいもない返信をしてベッドで横になりテレビを見る。エンタの神様が好きで一人で大声で笑う。
私は少し他の人とは笑いのツボが違うのかもしれなかった。
人があんまり面白くないと思って笑わないコントでも腹を抱えて笑うことがあった。
ただ、人が笑うところは笑ってたから結局、私はただのよく笑う中年のおっさんなのだろう。
エンタの神様が終わってテレビを消して寝ることにした。
私は前回の入院から軽い睡眠薬を二日に一度のペースで飲んでいたのだ。
退院しても寝れない状態があったのでそれからは少しキツめの睡眠薬を医者から処方されて飲み出した。
それがだんだん効かなくなってきて眠れなくなったのだ。
今まではそんなことはあまりなかったのだが、やはり夜寝れないのは本当に辛い。
やがて私はきつい錠剤を二錠と粉薬まで手にするようになる。
私の入院している病院は夜中でもナースステーションの前のフロアにはお湯の沸いているポットがあった。
いつでも部屋に買っていたカップ麺やカップ焼きそばを食べることができる。
眠剤を飲んだ私は無意識にそれを食べていたのだ。
無意識だからもちろん次の日は覚えていない。
ただ、起きたらベッドの横の机の上に空のカップ麺や焼きそばユーホーがあったのは一度や二度ではなかった。
夜中に腹一杯食べるのだから私はすぐに五キロ太った。
豚になった姿はやはり醜い。
私はすぐにジムに通いだし痩せる努力をした。
痩せる努力といっても、ただジムに行っていたという程度で、夜はまた夢遊病患者の如くカップ麺や甘いお菓子を食べ続けた。
退院するときはすでに入院の時より十キロ以上十五キロ近くだろうか太っていたのだった。
直美は少しくらい太っても大丈夫といっていたが流石にここまでくると「王子様がただの豚になった」
とからかうようになったので流石に私も減量することに決めた。
もともと血圧は高かったが太ってから余計に高くなったのでそれも減量する理由だった。
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