詐欺る

黒崎伸一郎

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外道の詐欺師

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私の癒しは直美であった。
腰を痛めた時も私の腰を三十分近く揉んでくれた。
朝晩のご飯もうまかった。
直美といる時が幸せな気分にさせてくれる時間だった。
ただそんな時間は長くは続かなかったのだ。
私は直美の為に、詐欺を止めることは考えなかったのかと思うだろう。
普通の人間なら思わない訳はない。
直美は私が出会った中で最高の女性である。
その最高の女性とずっと幸せになりたいのなら詐欺などやめて真っ当に生きればいい。
それが人間である。
しかし何度も言うが私は人間の皮を被った悪魔なのだ。
いやそんないいもので例えることさえ許されない外道だ。
生きる資格もない。
分かっているんだ。
今までこの外道がしてきたことは紛れもない事実である。
そんな外道が幸せに暮らしていいわけもない。
私と知り合った人、全てを不幸にするこの外道は神様は決して幸せなまま人生を終わらせることなどしない。
分かっている。
当たり前なのだ。
でも私はわかっていても自分にはどうすることもできない。
何度も同じことを言う。
私は生き絶えるまで詐欺師である。
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