詐欺る

黒崎伸一郎

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一村の危険な誘い

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私は今回の入院は六十日にに満たない日にちで退院することにした。
理由は月末に退院するのが一番高額医療の控除の効率がいいという事。
もう一つは患者の間で私がマキをたぶらかしたような噂が流れていたから少し病院にいて、気まづくなったのだ。
マキが仲の良かった患者に私から付き合って欲しいと言われ付き合い出したと言いふらしていたらしい。
にわかに信じられないが、マキがそう感じたのかもしれないので私にも責任が無いとも言えない。
やはり精神病院という特殊な病院だからそういったことを想定する必要があったのかもしれなかった。
退院した私は明を連れて大阪の一村の事務所へ行った。
前にも言ったように一村は車のディラーもしていてそこは事務所兼の会社だった。
明を連れてきたのは一村の新しいメンバーを入院させるマニュアルを教えるのに一人では難しかったからである。
というのもまだこれから資料請求をする者や資料請求をした資料をどのように書くのかまでちゃんと教えて欲しいと一村に頼まれたからであった。
もちろん大阪までの新幹線代と宿代は一村持ちで夜の接待付きであった。
新しいメンバーは五人。
それらに七社の保険会社の資料全ての記入をチェックして記入漏れのないようにしなくてはならなかった。
少しでもそれがあると送った資料が返ってきて直してもう一度送る必要がある。一社でもそれがあった時は一ヶ月以上余分に時間と保険料がかかったのだ。
一村が連れてきたメンバーの中には要領の悪い奴もいて何度も書き直しが必要になり、時間はかかった。
結局全て書き終えたのはもうあたりが暗くなっていた。
「ご苦労さん、萩原さん」
一村は私にそういって夕飯を食べに誘った。
夕飯は焼肉だった。
私、明、一村と一村の新しいメンバー、一人の四人で食べに行ったのだ。
私だったら新メンバー全員連れて行くが一村はその金は捨て銭だと言った。
まあメンバーをただのモノとしか見ない奴である。
そんな奴がモノに高い金払って飯を食わす金などどこにもないということだった。
肉はいい肉らしく(私には分からないが…)明は若いので出た肉は全て食べた。私は少し歳をとったせいか、たくさん食べると胃がむかつくようになる。
やはり、明の半分も食べれなかった。
食事の後、落ち着いて飲める店に行き一時間ほど飲んでホテルまで連れて行ってくれた。
一村は支払いは全てカードでの支払いだった。
よく見えなかったがブラックカードだったみたいでお金は持っている感じがした。
ホテルのロビーで一村が二人で話がしたいと私に言ってきたので明を先に部屋に案内させた。
部屋は一人部屋を二つ取ってくれており明はそこで寝させてメンバーは車に待機させた。
二人になって一村は私にとんでもない話を持ってきたのだった。
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