詐欺る

黒崎伸一郎

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直美の死

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連れて行かれたのはICU(集中治療室)であった。
直美は頭を強く打って意識不明で運ばれたらしい。
警察も来ていて話を聞きに来ていた。
話によると信号で待っていた直美が何かに押されたような感じで道路に飛び出した格好になって、前を通った車と接触したというのだった。

何で…何で直美が……。
医師が治療室から出てきて、「何とか命をと思い精一杯治療したのですが、ここに運ばれてきた時には打ちどころが悪かったのとひどい出血で手の施しようがありませんでした…」
と言って深々と頭を下げたのだ。

すぐさま治療室に駆け込んだ私は頭に巻いた包帯の直美の顔を両手で触り、あたり構わず泣き叫んだ。
どのくらい泣いただろうか?
二十分…いや、五分も経ってなかったかもしれない。
枯れることのない涙を拭くこともせずに私は直美の側を離れようとはしなかった。
深夜になっても私は直美の顔を撫でていた。
すっかり冷たくなった直美はもう二度と目を開けることはない。
私は今まで悔やむと言う言葉は私の人生で使ったことが無かった。
その言葉自体が嫌いだったからである。
だが、私の人生の中でその言葉を使うとしたならば、直美を亡くした今だけであろう。
それほど私は直美を愛していたのだった。
もう何もかもが嫌になった。
地球が滅びて無くなればいいとも思った。

私は何もやる気力が無くなって目の前が真っ暗になって気を失った。
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