詐欺るシリーズ「身体を許さない女」

❽

三ヶ月ぶりの快楽はやはり最高だった。
いい女とセックスするために男は汗水流して働くのだ。
セックスできないなんて、地獄以外のナニモノでもない。
ユイの身体と口とで何度達したことだろう。
ベッドの上のクタクタになった体を捻りながら起こし、シャワールームに入った。
シャワーを浴びながらこれからのことを考える。
ユイに何と言って口止めすればいいのだろうか？
いくら渡したら黙っていてくれるだろうか？
俊樹にしてみればそれが十万円なのか五十万円なの全くかわからなかった。
もしかしたらお金の話はしない方が良いのかもしれない。
だがそれを、誰かに相談する時間はない。
瞬時に決めなくてはならなかった。
シャワールームを出た俊樹はいつものようにミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出しカラカラの喉を潤した。
ヘビーなセックスをしてヘトヘトになっていたユイの横に座り、頭を優しく撫でた。
その時、俊樹の頭に妙案が掠めた。
美香が旅行から帰ってくるまで、後二週間近くある。
何と、その時までにユイとの関係を続けられないだろうかと考えたのだ。
何故ならユイに口止めを頼むのなら今でも二週間後でも、俊樹にしてみれば同じことである。
それならば美香が帰ってくる前の日まで、ユイとのセックスを堪能すればいいではないか。
一度、過ちで関係を持ってしまったのは事実だった。
一度も二度も同じことである。
ユイは俊樹が結婚することを知って関係を持った。
ユイは割り切った関係だと思っているに違いない。
俊樹はユイに美香が帰ってくるまでの二週間だけ関係と思ってくれないかと頼んでみた。
「いいけどその代わり口止め料を頂戴よ！」
と割り切った関係を続けてくれることを了解してくれた。
口止め料として百万円渡す約束をした。
結婚を破棄されて四千万円の損害を考えれば、その金額は安いものだった。
その間ユイの身体を思う存分楽しめるのだ。
ユイのセックスは濃厚だった。
口での奉仕も時間も厭わない。
若いだけあって締まりもいい。
そして何より俊樹好みの女だった。
そのユイを二週間、百万円で買ったと思えばいいのだった。
ただ、その甘い考えには落とし穴があった。
それを俊樹は何にも考えずにいたのであった。
バレなければ…、結婚式さえしてしまえば…、そう思った俊樹だったが、もしバレてしまえはどのみち結婚破棄になる。
快楽の二文字を取ってしまったこの男にはもう後戻りは出来なかった。
美香が旅行から帰る前の日にユイと別れればいいのだから、後はユイと会っていることを誰にも知られなければいいのだ。
そう考えると俊樹の気持ちはだいぶん楽になった。
それも今まで溜まっていたものを放出したからに他ならなかった。

次の日から俊樹は他人に分からないようにユイと密会した。
それはまるで不倫をしているかのようなスリルを感じた。
その密会は美香が旅行から帰ってくる前の日まで続いた。