詐欺るシリーズ「身体を許さない女」

12

「乾杯！」
「割と簡単だったわね、今回の件は…」
シャンパングラスを傾けながら、ユイが言った。
「簡単じゃあ無かったわよ…。三ヶ月もかかって、後、結婚式まで一ヶ月になったから焦って旅行に行くことにしたのよ。
その三ヶ月間、好きでもないあの男と毎日のように顔を合わせなくちゃなんなかったし、会えばキスの嵐…。
キモイったらありゃしないんだから…」
全てが終わって気持が楽になった美香は少し興奮気味に声を荒げた。
「でも、旅行に行ったその日に罠にかかるとは、やっぱりだいぶん溜まっていたのね…」
ユイの横で飲んでいた咲が納得したような面持ちで横槍を入れてきた。
「でもユイはやりすぎよ！
毎日、それも何回もやったんでしょう？」
「だって、肉体関係は何回かは持てって言ったのは美香さんよ！」
「それでも、や、り、す、ぎ、よ。
好きなんだから、ユイは…」
「そりゃあ、嫌いじゃないわよ…。
でも気持ちがいいのよ、こういうシチュエーションの時のセックスって…！」
ユイは俊樹とのセックスを思い出しながらシャンパングラスに口をつけた。
その目は男には凄くエロく見えた。
俊樹でなくとも抱きたくなるようなフェロモンが漂っていた。
「そろそろ本題に入るぞ！
今回は美香が主役と言うことでお金の配当をするぞ。」
美人三人の話がいつ終わるかわからないと言わんばかりの顔をして、会話の中に入ったのは裕次郎だった。
実は今回の首謀者は裕次郎だったのだ。
裕次郎はシナリオを全て一人で作り上げ、今回は美香の父親役となった。
その他の役割を決めて行動に移した。
今回は、小金を持っていた俊樹をターゲットに選んだ。
ちょうど常務の昇進パーティーが開催された会場に美香を潜入させて、俊樹の目につくように仕向けたのだった。
前もって、美香が俊樹の好きそうな女性であることはわかっていた。
現在彼女のいない俊樹を陥れる事は、裕次郎と美香にとって赤子の手を捻るくらい、容易い事だった。
美香を近づけて俊樹からのアプローチを待ち婚約に進む。
絶対に結婚までやらせないとの約束をさせて、もし破った場合は婚約破棄と違約金の発生を誓約書に書かせる。
そしてユイの出番である。
今回はユイが俊樹と関係を持ったが、咲が関係を持つこともあった。
というのは、俊樹がユイを結果的に選んだからユイが関係を持ったのだが、それが咲であったとしても、結果は同じことだった。
ただ一つ言えることは、美香だけは誰にも身体を許さないという事は毎回の決め事であった。
それは裕次郎が美香を特別な存在であるということを示していた。
裕次郎の本当の娘…？
なのかも知れなかったが、そんなことはユイと咲にとってはどうでもいい事だった。
何故なら、AVの仕事をしていた二人に割りのいい仕事があると話を持ち込まれた。
その時は少し考えたが、AVの数倍の報酬をキャッシュでくれる。
そして裕次郎のシナリオ通りに動くだけで良かった。
しかもアドリブを入れながら自由にセックスができるので、まるでAVをとっているみたいな感じで、なんの無理もなく役をまっとうできた。
「今回は美香が千二百万円、ユイが四百万円、咲が三百万円、残りは私が貰う。これまでの経費とここの支払いは私が出す。
それでいいな！」
そう言った裕次郎に三人は異議などあるはずもなく、お互いを見つめ合いもう一度乾杯をした。
「次回は、もう少し額の大きい話を持ってくる。
もうその段取りは既に付いている。
その時はまた、派手に頼むぞ…！」
「イエス、サー、ボス」
三人の美女は声を合わせて三度目の乾杯をした。