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志保は酒が強かった。
飲みすぎて潰れる事など客は愚か、古株の女の子でさえ見た事がほとんどない。
もっとも古株と言っても開店してまだ二年とたたないパープル故、古株という言葉は使わないかもしれない。
ドンペリを半分ほど空けた時にボーイが、「ママ、お客さんがお帰りです」
と、志保に告げた。
「そう、クーさん、少しの間女の子と飲んでいて…。早めに帰って残りのドンペリ頂くわ!」
「うん、わかった。
皆んな何でも注文して!
何ならフルーツ頼もうか?」
「やった!私苺の盛り合わせがいいな」
そう言ってレナは苺の盛り合わせと自分の飲むカクテルを注文した。
「優香ちゃんも頼みなさい。
いいわよね、窪田さん?」
「もちろんだとも…。遠慮しないでどんどん頼んで…!」
志保が下がってから自分のテンションも少し下がり気味の窪田だったが、それは夜の仕事ゆえ仕方のない事だった。
平日だというのにこの店はいつも忙しいんだなと改めて察した窪田だったが、あれだけの女でしかも頭も切れる。
できれば自分のものにしたい。
それには自分の味方にはつけておかねばならなかった。
「ねえレナちゃん。レナちゃんは開店当時からいるからわかるだろうけど、ママは身持ちが硬いって噂だよね…?」
窪田は開店当時からいるレナにそれとなく探りを入れてみた。
「ママを狙っている人、私の知ってるだけで両手では足りないわよ…。
だって女の私からみても羨ましい体しているし、男好きする顔だもの…。
何人も狙ってるから窪田さんもうかうかできないわよ!」
そういうとボーイが持ってきた苺の盛り合わせを半分皿に載せ替えてから、そっと窪田に差し出した後、自分のを一つ口に入れ込んだ。
「あ、この苺甘い!これは当たりだわ…。優香ちゃんも頂いてみて!」
窪田はゆうかに苺を勧めるレナを見ながら三人の裸体を頭の中に浮かべた。
レナは二十代後半だろう。
優香は二十代前半か…?
だがそれでも志保の裸体の方が断然いい。
確かに志保のドレスの下からのぞいていた脹脛はまるでカモシカの足のように引き締まっていて見るからに締まりの良さそうであった。
ベッドの上で獣のように絡みあえたらどんなに気持ちがいいだろうか…?
一人で想像する窪田を見ていたレナは、「窪田さん、なんかいやらしい事想像しているでしょ?
顔に出ているわよ!」
突然レナに言い当てられた窪田は何度も首を振りながら、「ナイナイ!いやらしいことなんか考えていないよ。
仕事の事考えてたんだ。」
裸体を想像していたら鼻の下が伸びていたのかと思って、慌ててポケットの中からハンカチを取り出して口を塞いだ。
窪田の顔は人並みだった。
いや、普通の一般人よりかは遥かにいいとの自信はあった。
金もある。
だが、心底惚れた女性と巡り合えたことがない。
社会人になり会社に入って少し経った時に親の勧めで付き合いだして結婚した。
だが一年ももたずに離婚をした。
相性が合わなかったこともあるが、一番の理由は身体の相性が良くなかったからである。
結婚するまではよくわからなかったが、結婚してからはセックスするという欲求が湧かなくなってしまったのだった。
そう感じてからの結婚生活は苦痛でしかなく、離婚してからも十年以上独身でいたのだった。
ただ女が嫌いなわけではなかった。
むしろ好きな方で父親が亡くなる三年前までは囲っていた女もいたほどである。
だが父親が亡くなり後を継いだ時に、金狙いの女性とはキッパリ縁を切り、好きな女性を探してきた。
だがなかなか見つからず、その時に志保と出会ったのだった。
銀座のママとはいえ、まだ三十くらいで若い。
顔もボディーも窪田好みだった。
なにより窪田は屈託のない志保の仕草と笑顔が気に入った。
金はあるのでそれを知って社長夫人の座を狙う女も何人も見てきたが、志保は違った。
いや、違って見えただけかもしれなかった。
だが、それが窪田のハートに火をつけた。
ついた火はなかなか消えることはない。
最初にあった時はまだ二十代前半の女性かと思った。
言葉遣いとかでもう三十くらいだなとわかるようになったが、たまに見せる笑顔が忘れられなくなり、また顔を見にくるようになるのだった。
毎週必ず一回はパープルに通い続けて半年たった頃ようやく志保の目にかなったのか、仕事の話もできるようになったのだった。
そして前回の話である。
仕事の話からプライベートに持ち込む事はこの世界では良くある事だ。
仕事で成功させて志保とも関係を持つ。
これが窪田の一番の望みである。
ただし、今回の女は一筋縄ではいかない。
その事は窪田自身が一番よくわかっていた。
だから何度も店に足を運んだ。
焦ってはいない。
焦る必要など窪田にはまるでない。
それは金がある者の強みだ。
待っていれば必ず食いついてくる。
そう思って志保からの連絡を待った。
飲みすぎて潰れる事など客は愚か、古株の女の子でさえ見た事がほとんどない。
もっとも古株と言っても開店してまだ二年とたたないパープル故、古株という言葉は使わないかもしれない。
ドンペリを半分ほど空けた時にボーイが、「ママ、お客さんがお帰りです」
と、志保に告げた。
「そう、クーさん、少しの間女の子と飲んでいて…。早めに帰って残りのドンペリ頂くわ!」
「うん、わかった。
皆んな何でも注文して!
何ならフルーツ頼もうか?」
「やった!私苺の盛り合わせがいいな」
そう言ってレナは苺の盛り合わせと自分の飲むカクテルを注文した。
「優香ちゃんも頼みなさい。
いいわよね、窪田さん?」
「もちろんだとも…。遠慮しないでどんどん頼んで…!」
志保が下がってから自分のテンションも少し下がり気味の窪田だったが、それは夜の仕事ゆえ仕方のない事だった。
平日だというのにこの店はいつも忙しいんだなと改めて察した窪田だったが、あれだけの女でしかも頭も切れる。
できれば自分のものにしたい。
それには自分の味方にはつけておかねばならなかった。
「ねえレナちゃん。レナちゃんは開店当時からいるからわかるだろうけど、ママは身持ちが硬いって噂だよね…?」
窪田は開店当時からいるレナにそれとなく探りを入れてみた。
「ママを狙っている人、私の知ってるだけで両手では足りないわよ…。
だって女の私からみても羨ましい体しているし、男好きする顔だもの…。
何人も狙ってるから窪田さんもうかうかできないわよ!」
そういうとボーイが持ってきた苺の盛り合わせを半分皿に載せ替えてから、そっと窪田に差し出した後、自分のを一つ口に入れ込んだ。
「あ、この苺甘い!これは当たりだわ…。優香ちゃんも頂いてみて!」
窪田はゆうかに苺を勧めるレナを見ながら三人の裸体を頭の中に浮かべた。
レナは二十代後半だろう。
優香は二十代前半か…?
だがそれでも志保の裸体の方が断然いい。
確かに志保のドレスの下からのぞいていた脹脛はまるでカモシカの足のように引き締まっていて見るからに締まりの良さそうであった。
ベッドの上で獣のように絡みあえたらどんなに気持ちがいいだろうか…?
一人で想像する窪田を見ていたレナは、「窪田さん、なんかいやらしい事想像しているでしょ?
顔に出ているわよ!」
突然レナに言い当てられた窪田は何度も首を振りながら、「ナイナイ!いやらしいことなんか考えていないよ。
仕事の事考えてたんだ。」
裸体を想像していたら鼻の下が伸びていたのかと思って、慌ててポケットの中からハンカチを取り出して口を塞いだ。
窪田の顔は人並みだった。
いや、普通の一般人よりかは遥かにいいとの自信はあった。
金もある。
だが、心底惚れた女性と巡り合えたことがない。
社会人になり会社に入って少し経った時に親の勧めで付き合いだして結婚した。
だが一年ももたずに離婚をした。
相性が合わなかったこともあるが、一番の理由は身体の相性が良くなかったからである。
結婚するまではよくわからなかったが、結婚してからはセックスするという欲求が湧かなくなってしまったのだった。
そう感じてからの結婚生活は苦痛でしかなく、離婚してからも十年以上独身でいたのだった。
ただ女が嫌いなわけではなかった。
むしろ好きな方で父親が亡くなる三年前までは囲っていた女もいたほどである。
だが父親が亡くなり後を継いだ時に、金狙いの女性とはキッパリ縁を切り、好きな女性を探してきた。
だがなかなか見つからず、その時に志保と出会ったのだった。
銀座のママとはいえ、まだ三十くらいで若い。
顔もボディーも窪田好みだった。
なにより窪田は屈託のない志保の仕草と笑顔が気に入った。
金はあるのでそれを知って社長夫人の座を狙う女も何人も見てきたが、志保は違った。
いや、違って見えただけかもしれなかった。
だが、それが窪田のハートに火をつけた。
ついた火はなかなか消えることはない。
最初にあった時はまだ二十代前半の女性かと思った。
言葉遣いとかでもう三十くらいだなとわかるようになったが、たまに見せる笑顔が忘れられなくなり、また顔を見にくるようになるのだった。
毎週必ず一回はパープルに通い続けて半年たった頃ようやく志保の目にかなったのか、仕事の話もできるようになったのだった。
そして前回の話である。
仕事の話からプライベートに持ち込む事はこの世界では良くある事だ。
仕事で成功させて志保とも関係を持つ。
これが窪田の一番の望みである。
ただし、今回の女は一筋縄ではいかない。
その事は窪田自身が一番よくわかっていた。
だから何度も店に足を運んだ。
焦ってはいない。
焦る必要など窪田にはまるでない。
それは金がある者の強みだ。
待っていれば必ず食いついてくる。
そう思って志保からの連絡を待った。
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