罪人(つみびと)

黒崎伸一郎

文字の大きさ
2 / 23

嘘は嫌い?

しおりを挟む
文に口では愛していると言ってはいたが、愛よりギャンブルを選んでいたのはもはや明白であった。
文と知り合ったのはお好み焼き屋を始める三年前のことだった。
スーパーの催事でラーメンの試食販売をしていた私は同じ店に偶然、乳製品の試食販売をしていた文を見かけた。
同じ催事の仕事とはいえ、全く異なる業種だから挨拶するくらいであった。
だが、挨拶の感じがよく私好みのボーイッシュだったのもあって私の方から声をかけた。
午前中の仕事が終わったら昼ご飯一緒にいかがですか?
当時の私は決してかっこいい青年ではなかったが、決して不男ではなく可愛らしい感じ…と言われていた。
第一印象はそんなに悪い感じではなかったのだろうから、昼ごはんの誘いには躊躇わずオッケーの言葉をもらった。
近くの二階の喫茶店でピザとスパゲティと飲み物を頼んだ。
昼休憩なので一時間もなかったが、ご飯を食べながらいろんな話をした。
あっという間に昼休憩は終わる。
私は仕事が終わってから会うことができないか?と聞いた。
会社に帰ってからなら時間はあると文は言ってくれた。
私も片付けをして会社に帰らねばならなかったのでちょうど同じくらいの時間に体は空く。
実は当時私には付き合っていた女性がいた。
二ヶ月前くらいに知り合った別のスーパーでレジをしていた女性だった。
高校を卒業して四月から働き出したらしくまだ十八歳だった。
当時私は二十七歳だったが、かなりの童顔で二十歳そこそこに見られていて彼女の働いていたスーパーで知り合った。
私好みのショートカットでしかも若くて可愛らしかったのだが、そのスーパーが私の住んでいた場所から車で二時間ほどかかる。
付き合い始めて最初の一ヶ月は毎日の様に家のそばで待ち合わせをしてホテルに入る。
朝五時にはホテルから出なくては仕事に間に合わない。
仕事が終わって夜十時ごろに会い、五時前には彼女の家まで送っていく。
仕事が休みの日はもちろん会っていたから体を休める時間がなかった。
そのことに疲れていた…というのもあったが、金銭的にも大変だったのだ。
毎日のホテル代、ガソリン代、食事代…、一ヶ月でかなりの額を使ってしまっていたのだ。
彼女はまだ十八歳ということもあって、もちろん会う時は私が払っていた。
彼女からしたら当たり前のことだし、私の方から会いにいくわけだから仕方のないことと言われたらその通りだった。
一ヶ月を過ぎると流石に毎日は合わなくなっていた。
今の時代と違い携帯電話が無いので彼女の家に電話をかける。
長電話が続くとお父さんから怒られる。
お金がないので会いにもなかなか行けない。
そのうち電話さえかけるのが毎日ではなくなった。
冷めたのではなかったが、かっこつけの私は金がないのを彼女に言えなかったのだ。
?は

少し遠かった頃に文と知り合った。
文は家もそんなに離れていないし車も持っていた。
文の車でデートする事もあり、お金も時々出してくれた。
心も身体も楽だったのだ。
十八歳の彼女とは全く連絡をしなくなり、彼女から連絡してくる事はなかった。
私が文と付き合う時に言った言葉を文は忘れる事はないと言っていた。
私もはっきりと覚えている。
「僕は嘘をつかれるのは嫌だから嫌になった時にはちゃんと言ってね。
お互いの気持ちに嘘はつかない様にしようね…」
その時の気持ちに嘘はなかった。
でも嘘をつかれるのは嫌なのは本当だが、何時もついていたのだった。
文と付き合い始めてからは女遊びはしなかった。
というよりは女遊びよりもギャンブルの方がよりエクスタシーを感じていたからであろう…!
文と一緒にパチンコは何度か行った。
当時は一発ものが主流で一度穴に入れば終了まで続くもので、一度で一万円だった。
二人並んで打つのだが、必ず最初に当たりになるのだ。
最後の方には「当たりになる打ち方がわかった!」
とまで言っていたが、そんなには甘くはなかった。
数回しかパチンコには行かなかったが、トータルは負けてはいなかったはずだった。
そこが私と少し違うところだった。
麻雀もよく行ってるのは知ってはいたが、あまり行くなとは言わなかった。
まあ、言ったところでそれを素直に聞く私ではないと思っていたにたがいないが、小遣いでギャンブルをするのは目を瞑っていてくれていたのだ。
それに甘えていたのが私だった。
お好み焼き屋の売り上げは文の協力もあって順調に上がっていった。
やがて文は自分の仕事をやめて私のお好み焼き屋を本格的に手伝ってくれる様になった。
家から遠かった事もあり、店の近くにアパートを借りて二人で住むことにした。
割と順調に思えた二人だったが、これからが文の悪夢の始まりだったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

処理中です...