噂のギャンブラー

黒崎伸一郎

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ギャンブル必勝法…遂に掴んだか?

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「や、やった…!
また当たったぞ!遂に、遂に見つけたのか…?
俺はギャンブルの攻略法を編み出すことができたのか…?」
今日の勝ちで海斗の今月の競馬収支は三ヶ月連続で大幅黒字「この方法を独自でアレンジしながら競馬を続けていけば…」
海斗はこの方法こそが競馬の必勝法である事をこの時確信したのだった。

半年前………

海斗は今月も二十五日の給料日に振り込まれた給料の全てを持って場外馬券場にやって来た。
全てと言っても月に二十五日ほど出勤して月給二十五万円。
その中から家賃と電気代、ガス代と水道代合わせて五万円引くと手持ちは二十万円を切る。
勿論、保険料やその他かかるものは沢山あるが、全て勝負に賭けるのが海斗のギャンブルだった。
その日も最終レース前にポケットに一万円を残して負けていた。
(最終レースにこの一万円で勝負だ!)
…という気には、なれずにせめて一ヶ月分のカップラーメンを買ってアパートに帰った。

明日からまた仕事だ…。
警備員の仕事を初めて一年半。
七月の半ばでこの仕事は炎天下の中でヘルメットをつけながらマスクをしなくてはならない。
それが何ともキツい…。
冷房の効いている場所での警備とは違い交通誘導は熱中症などの体調不良に陥りやすい。
海斗が何故交通誘導の警備をやっているかといえば、給料が他の職種より良かったからに他ならなかった。
人材派遣会社での紹介された場所でのピッキングや配送センターでの荷下ろしの仕事などいろいろやって来たが、一年半前に日給一万円日払い有りのうたい文句につられてこの業界に入ったのだ。
交通誘導の仕事は朝早く遠くに行く時も多い。
早朝五時起きで帰りは夜の七時を過ぎる時もある。
たまに近場で八時起きの時もあり定時の五時よりはるかに早く昼過ぎに終わることもあるが、そんな現場は先に入った要領の良い人達が行くことが多いので一ヶ月に何度もある事ではない。
出勤すれば早上がりでも一万円は保証される。
通行止めとかの現場では立っているだけの時もあるが、交通量の多い交差点付近では片側通行や幅寄せとかの旗振りをする。
白と赤の手旗だ。
工事現場の両端に立ち二人で交互に側で合図をする。
赤上げて、白上げて…。
一度はテレビとかでも見たことがあるはずだ。
一日中旗を振り続けなければならず、しかも前、後ろ、横と辺りを常に見渡さなくてはいけないのだ。
事故がない様に細心の注意を払わなくてはならない。
故に首は痛くなるわ、肩は張る。
常に立ち仕事なので足に豆もできる。
冬も寒くて辛いが、まだ防寒具を支給されているので何とか我慢できるが、炎天下の真夏はそうはいかない。
先ほども述べたがヘルメットとマスクを常時着用の為、熱が体に籠る。
アスファルトの上だから炎天下の時は靴の下まで暑い。
足の裏が焼けたみたいになることもあった。
それを八時間やらなくてはならないので人が見てるより遥かに疲れが出る。
アパートに帰ってシャワーを浴びて横になった時にようやく一日が終わった感じがする。
そんな感じで一年半も続けて来たが、海斗には勿論フラストレーションが溜まりに溜まっていた。
カップラーメンと一ヶ月分の食料をスーパーで買ってアパートに着いた。
食料といっても格安のインスタント食品ばかりだ。
また一ヶ月間仕事だけの毎日が続くのか……。
考えただけでも気分が悪くなるのでベッドに横になって目を瞑った。
何故俺は負け続けるんだ…?
これからも俺は死ぬまでギャンブルを辞めることなどできないだろう…!
ではこれからも生きている限り負け続ける人生を歩き続けなければならないのか…?
このまま、いや今のままでは同じことの繰り返しなのは目に見えて明らかだった。
ではどうすればいいんだ…?
それが分からないから今のどん底とも思える生活にハマってしまったのだ。
う~ん…どうすれば…?
海斗も今までに考えもしないでギャンブルを続けて行ったわけでは決して無かった。
データを取りながらギャンブルで如何に生活ができるかを何度となくチャレンジして来た。
海斗はギャンブルは中央競馬を主戦として来たが、ギャンブルと呼べるものはほとんど手を出して来た。
ボート、競輪、パチンコは当たり前で、オートレースや野球賭博などの違法な賭博まで手を出したこともあった。
現在の状況からギャンブルの殆どが負け組であった。
唯一麻雀だけはトータルプラスになっていたが、学生時代や若い頃なら長い時間するのは一切苦痛では無かったが、三十前くらいから余り考え過ぎると頭が痛くなり途中でやる気が失せるのだった。
と言うのも海斗は麻雀での集中力はかなりのもので配牌から上がり形を読むのだ。
麻雀を知っている人ならば当たり前のことの様に感じるかもしれないが、配牌を配られた時に上りの形が想像できない時は第一打から降りに入る。
プロなら当たり前だと思う人もいるだろうが素人にはなかなかできることではない。
麻雀だけは強かったのだ。
では麻雀で飯を食えばいいじゃないかと思うのも当然だ。
だが最近の海斗は麻雀を余り打ちたがらなかった。
十代の後半あれだけ好きだった麻雀が、最近長く打てなくなっていたからだ。
フリーの雀荘にも何度か行って勝ち続けていたが、最近は集中力が長く続かない。
故に麻雀牌にも余り触りたくなくなって来ていたのだった。
仕事だと思って打ち続けた時期もあったが、二、三時間すると頭が痛くなる。
最初は集中力があるのでかなりの確率で勝つ。
二、三時間すると集中力が薄れてくるのでやめる。
いわゆる勝ち逃げだ…。
フリーの雀荘に来ているのだからいつ辞めてもいい様に思うのだが、何度も同じ様に勝ち逃げされると麻雀屋もお客も余り歓迎する常連ではなくなってくる。
麻雀屋もある程度長く売ってくれて負けてくれる客の方がありがたいし、お客にもそんな人の方が喜ばれるに決まっている。
出入り禁止とまではいかないまでも、あの人は勝ったらすぐやめるから一緒にやりたくない!
とか、上手すぎてやりたくない!
と言った常連が後をたたなくなって麻雀屋に行っても余り歓迎されなくなって、麻雀から足が遠ざかったのも原因なのかもしれなかった。
ただ麻雀より刺激の強いギャンブルを求めていただけだったのかもしれない。

そんなこんなで負け続けるギャンブルをやり続けていた海斗に転機が訪れる。
それは意外な事からだった。
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