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記憶を失った悪魔
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アーシェル中央大陸の中心に存在する大陸一の王国・リングメイル。
「豊穣樹」と呼ばれる「世界樹《ユグドラシル》」を懐に抱くようにこれまた巨大な城下町を構え、幾万もの民が平和に暮らしている。
国をあげての魔法研究が進んでおり、国民の実に半数以上がなんらかの属性魔法を扱うことが出来る。
また、国の外には魔物が生息しているがリングメイルを筆頭にそれぞれの国や街には国直属の討伐隊がおり、彼らの活躍により魔物被害は最小限で収まっているという。
ここはそんな国なのよ、と右も左もわからぬルアグにキアは丁寧に教えてくれた。
「そういえば、キアはどうやって俺を見つけてくれたんだ?」
綺麗に舗装されたレンガ道を歩きながらルアグはキアに尋ねた。
「十字架の丘《クロス・ヒル》」でお墓参りをしていた時、空からあなたが降ってきたのよ」
「クロス・ヒル?」
「そう、ここから少ししたところにある墓地よ」
「そうなのか」
「えぇ、本当に驚いたわ。まさか空から人が落ちてくるなんて。その後は助けを呼んであなたを運んでもらったの」
「そうだったのか……本当にありがとう。君が助けてくれなかったらどうなってたのか分からない」
「怖いこと言わないで。いいじゃない、こうしてあなたは助かったんだから」
「そうだね。で、これからどこに行くんだい?」
「食材と必要な生活品の買い出し。今夜から二人分のご飯を作るし、いろいろ入り用だから荷物持ちは任せたわよ。あ、でも身体はもう大丈夫? まだ本調子じゃないなら早めに帰るわ」
「まだ少し痛むけど大丈夫。それくらいしか手伝えないから喜んで荷運びするよ」
「男手があると本当に助かるわ」
顔を見合わせキアと笑い合う。助けてくれたのが彼女で良かった。ルアグは心からそう思った。
のんびり道を歩いていると、一軒の店の前に辿り着いた。沢山の果物や野菜が綺麗に軒先に並べられている。
「おお、キアちゃんじゃねえか」
店主らしき男がキアを見るなり片手を上げて声をかけてきた。
「こんにちは」
キアも慣れた様子で挨拶を交わした。
「今日もとびっきりのもんが揃ってるぜ」
「そうみたいね。相変わらずどれもいい品ばかりだわ」
色とりどりの食材に目を落とす。確かにどれも新鮮そのものだ。
「おんやぁ? 後ろに居るのは……?」
店主が口元をニヤケさせながら、好奇心を抑えられないような目でルアグを見る。
「ルアグよ。ちょっと訳ありでね。今日からしばらくうちに滞在するの」
「ほほお? おい、兄ちゃん。キアちゃんに変なことすんなよ?」
「ちょっと! ルアグはそんな人じゃないわ!」
「どうだか? 男なんてみんなケダモノだからなぁ」
キアの顔が真っ赤に染まる。
「ご心配には及びません」
キアとは正反対に冷静に答えたのはルアグだ。
「ならいいけどな」
「それとそっちのやつとそこのお野菜早く包んで!」
顔を真っ赤にしたまま怒った様子でキアが大声を出す。
「はいはい。ほらよ」
「ありがとう」
「また来てくれよなー!」
茹でタコのように赤くなったキアは、目当ての品を受け取り支払いを済ませると早足で歩き出した。
「んもう、すぐにからかうんだから! あの時だって……」
そこまで言いかけて、キアは首を振った。
「あの時?」
「なんでもないわ、ごめんなさい。気にしないで」
ルアグはキアの声が微かに震えているのを聞き逃さなかった。
しかし何か言いたくなさそうな雰囲気を感じ、それ以上追求するのはやめた。
「豊穣樹」と呼ばれる「世界樹《ユグドラシル》」を懐に抱くようにこれまた巨大な城下町を構え、幾万もの民が平和に暮らしている。
国をあげての魔法研究が進んでおり、国民の実に半数以上がなんらかの属性魔法を扱うことが出来る。
また、国の外には魔物が生息しているがリングメイルを筆頭にそれぞれの国や街には国直属の討伐隊がおり、彼らの活躍により魔物被害は最小限で収まっているという。
ここはそんな国なのよ、と右も左もわからぬルアグにキアは丁寧に教えてくれた。
「そういえば、キアはどうやって俺を見つけてくれたんだ?」
綺麗に舗装されたレンガ道を歩きながらルアグはキアに尋ねた。
「十字架の丘《クロス・ヒル》」でお墓参りをしていた時、空からあなたが降ってきたのよ」
「クロス・ヒル?」
「そう、ここから少ししたところにある墓地よ」
「そうなのか」
「えぇ、本当に驚いたわ。まさか空から人が落ちてくるなんて。その後は助けを呼んであなたを運んでもらったの」
「そうだったのか……本当にありがとう。君が助けてくれなかったらどうなってたのか分からない」
「怖いこと言わないで。いいじゃない、こうしてあなたは助かったんだから」
「そうだね。で、これからどこに行くんだい?」
「食材と必要な生活品の買い出し。今夜から二人分のご飯を作るし、いろいろ入り用だから荷物持ちは任せたわよ。あ、でも身体はもう大丈夫? まだ本調子じゃないなら早めに帰るわ」
「まだ少し痛むけど大丈夫。それくらいしか手伝えないから喜んで荷運びするよ」
「男手があると本当に助かるわ」
顔を見合わせキアと笑い合う。助けてくれたのが彼女で良かった。ルアグは心からそう思った。
のんびり道を歩いていると、一軒の店の前に辿り着いた。沢山の果物や野菜が綺麗に軒先に並べられている。
「おお、キアちゃんじゃねえか」
店主らしき男がキアを見るなり片手を上げて声をかけてきた。
「こんにちは」
キアも慣れた様子で挨拶を交わした。
「今日もとびっきりのもんが揃ってるぜ」
「そうみたいね。相変わらずどれもいい品ばかりだわ」
色とりどりの食材に目を落とす。確かにどれも新鮮そのものだ。
「おんやぁ? 後ろに居るのは……?」
店主が口元をニヤケさせながら、好奇心を抑えられないような目でルアグを見る。
「ルアグよ。ちょっと訳ありでね。今日からしばらくうちに滞在するの」
「ほほお? おい、兄ちゃん。キアちゃんに変なことすんなよ?」
「ちょっと! ルアグはそんな人じゃないわ!」
「どうだか? 男なんてみんなケダモノだからなぁ」
キアの顔が真っ赤に染まる。
「ご心配には及びません」
キアとは正反対に冷静に答えたのはルアグだ。
「ならいいけどな」
「それとそっちのやつとそこのお野菜早く包んで!」
顔を真っ赤にしたまま怒った様子でキアが大声を出す。
「はいはい。ほらよ」
「ありがとう」
「また来てくれよなー!」
茹でタコのように赤くなったキアは、目当ての品を受け取り支払いを済ませると早足で歩き出した。
「んもう、すぐにからかうんだから! あの時だって……」
そこまで言いかけて、キアは首を振った。
「あの時?」
「なんでもないわ、ごめんなさい。気にしないで」
ルアグはキアの声が微かに震えているのを聞き逃さなかった。
しかし何か言いたくなさそうな雰囲気を感じ、それ以上追求するのはやめた。
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