僕のお姫様は甘えん坊さんですね

萌乃頭巾

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吊り橋(前編)

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※このお話はPrincess of Floria のフローリアの英才教育の場面を少し描いています。
ぜひそちらもご覧下さい。

初めてセシーリアと会った日のことをよく覚えている。
姉に比べると地味な子だな。
なんて印象だった。
それもそのはず、姉のフローリアが美少女すぎた。
初めて見た時はこんなにも可愛い子がいるのかと同世代の子と盛り上がったものだ。
しかしフローリアの本性を知って唖然とした。
美人は美人なりに色々あるのだ。
セシーリアの方が婚約者でよかった。
と、最初に思った瞬間だった。
次に思った瞬間はこの子でよかったと核心付けるものだった。

絶世の美姫と評判の姫の誕生日会に招待されたジャックだったが、パーティなどの人混みが好きではなく、お城の隅の方へと歩いていた。
確かに噂のお姫様は本当に見たこともないくらいな美少女で、驚いた。
が、それだけで特に仲良くなりたいだとか、そんな感情は抱けなかった。
「パーティが終わるまで暇だなー…」
そんなことを1人呟く。
と、「ん?」
「っひっく…」
女の子がしゃがんで泣いていた。
「どうかしたの?」
ジャックは声をかけると、泣いてばかりで返事が返ってこなかった。
「うーん困ったなー」
もしかしたら迷子かもしれないし、どこか怪我をして泣いているのかもしれない。
そんなことを考えていると
「…たも」
「え?何か言った?」
ジャックは泣いている少女に近づく。
「あなたも…お姉様の方がいいんでしょ…?」
少女は俯いたまま弱々しく聞いてきた。
「お姉様?」
「フローリア…お姉様よ」
「ああ、さっきの…じゃあ君はその妹?」
少女はこくんと頷いた。
「お母様はお姉様ばかり贔屓しているのよ…ドレスだってそう…」
と、ドレスに目をやると少女がフローリアが着ていたドレスとは随分違っていた。
全体的に薄いピンクでリボンやレースがあしらわれていて、歳相応の可愛らしいものだった。
「僕は君が着ているドレスも素敵だと思うけどなー」
「嘘よそんなの…」
「いやいや、そんな嘘ついてどうするのさ」
「本当に?」
と、少女は顔を上げる。
目は真っ赤に晴れて、鼻水は出ている。
それでも美少女だとわかった。
(さすがはあのお姉さんの妹だな)
なんて関心をしていると、少女は立ち上がりハンカチで目を拭いだした。
が再び俯いてしまった
「っ…顔だってみんなお姉様の方が可愛い、綺麗だって絶賛してるわ…」
「うーん…それは…」
ジャックは困ったように濁す。
フローリアの方がずっと綺麗だった。
「ほら、やっぱり私なんて…」
「だからってそうやって泣いてるのはよくないんじゃないか」
「え?」
「自分は姉よりも劣っている、悲しい、だから泣こう。それは簡単だ。じゃあ泣かなくて済むにはどうしたらいいのか?君は考えたことがないのか?」
「え?えっと…」
「君は姉よりも劣っているかもしれない。だが、それはそもそも相手が悪い。相手があんな異常なくらい美少女」
「…」
「自分は美貌は敵わない。だったら他に勝てるところを見つけるんだ」
「勝てるところ?」
「なんでもいい、勉強ができるだとか、ダンスが上手いとか」
「勉強…ダンス…」
少女は顔を上げた。
「僕は外見だけ綺麗なよりもその方が好きだな」
「そ、そうなのですね…やってみます!」
「うんうん、その意気その意気」
「ありがとうございます。そうだせっかくですからお城を案内しますわ」
「え、いいの?やったー!」

続く…
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