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吊り橋 〜セシーリア視点〜
しおりを挟むずっとずっと姉さえ居ればいいんだと思っていた。
自分は何一つ姉に勝てなくて、劣っている。
そんなふうに思っていた。
姉のフローリアの誕生日を祝うパーティーが行われていたが、そういったパーティーが好きではないセシーリアはお城の隅の方へといた。
パーティーへ参加したって、姉と自分を比べられて惨めになるだけだ。
どうして自分と姉はこんなにも違うんだろう。
悲しくて涙が止まらないでいると
「どうかしたの?」
と、声をかけたられた。
声の感じからして同世代の男の子だろう。
同世代の男の子は尚更苦手だった。
自分と姉と態度が別人な人ばかりだったからだ。
そんな風に考えているうちに更に涙が止まらなくなった。
「うーん困ったなー」
声をかけてきた男の子はまだそばに居た。
早く居なくなって欲しい。
どうせ彼も姉の方がいいのだから。
「あなたも…」
「え?何か言った?」
少年が更に近づいてきた。
「あなたも…お姉様の方がいいんでしょ?…」
「お姉様?」
「フローリア…お姉様よ」
「ああ、さっきの…じゃあ君はその妹?」
セシーリアはこくんと頷いた。
もう彼は姉と会ったそうだ。
顔なんて見せたらがっかりされる。
みんなみんな贔屓するのは姉ばかりなのだから。
特に贔屓にしていたのは
「お母様はお姉様ばかり贔屓しているのよ…ドレスだってそう…」
自分はいかにも女の子らしいピンクでフリフリのドレスだが、姉のフローリアはその美しさをより一層引き立てるようなシンプルなドレスだった。
「僕は君が着ているドレスも素敵だと思うけどなー」
「嘘よそんなの…」
「いやいや、そんな嘘ついてどうするのさ」
確かにと思ったセシーリアは恐る恐る顔を上げる
「本当に?」
声をかけてきた男の子は見事な銀髪をしており、顔も同世代子達から人気そうな爽やかな風貌をしていた。
セシーリアはハンカチを取り出し目元を拭いた。
この少年は自分が顔を上げたのに、容姿を褒めてくれなかった。
姉のフローリアなら間違いなく絶賛されてただろうに。
セシーリアはまた俯いてしまった。
「っ…顔だってみんなお姉様の方が可愛い、綺麗だって絶賛してるわ…」
「うーん…それは…」
少年は図星を着かれて困ったように濁す。
「ほらやっぱり私なんて…」
どうして私は姉みたいに綺麗じゃないんだろう。
「だからってそうやって泣いてるのはよくないんじゃないのか」
「え?」
「自分は姉よりも劣っている、悲しい、だから泣こう。それは簡単だ。じゃあ泣かなくて済むにはどうしたらいいのか?君は考えたことがないのか?」
「え、えっと…」
セシーリアは困惑した。
今までそんなこと考えもしなかった。
私は姉以下でどうしようもない存在。
そもそも周りは姉さえいればいいんだ。
そんなふうにばかり思っていた。
「君は姉よりも劣っているかもしれない。だが、それはそもそも相手が悪い。相手があんな異常なくらいの美少女」
「…」
やっぱり彼から見てもそう思うのだ。
消えてしまいたい。
この世から居なくなってしまいたい。
「自分は美貌は敵わない。だったら他に勝てるところを見つけるんだ」
「勝てるところ?」
そんなものはなんにもない。
なにをしても絶賛される姉に対して勝てるところなどあるのだろうか?
「なんでもいい、勉強ができるだとか、ダンスが上手いとか」
「勉強…ダンス…」
姉には到底敵わないと決めつけて避けてきた、逃げてきたことだった。
「僕は外見だけ綺麗なよりもその方が好きだな」
彼は少なくとも姉の絶世の美貌よりも、教養があるほうがいい。
そんなふうに思ってる人がいるなんて知らなかった。
「そ、そうなのですね…やってみます!」
「うんうん、その意気その意気」
「ありがとうございます。そうだせっかくですからお城を案内しますわ」
「え、いいの?やったー!」
こうしてセシーリアは自分の頑張り次第で、姉よりも自分の方がいいと言ってくれそうな人を見つけることが出来た。
そして数年後2人は婚約者となる。
政略結婚だが、初めて自分を認めてくれそうな人と結婚できるなんて願ったり叶ったりだった。
早く認めてもらいたいたくてセシーリアはお稽古事の時間に精を出した。
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