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感情屋 陸くん
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それは満月の夜、池に反射した月の道を渡ってやってくるという。
感情という目には見えないものを具現化させ売買しているらしい。
売った感情は持ち主から綺麗になくなり、買ったものは永遠になくならない。
そんな夢のようなことをしてくれる、感情
屋。
今夜は満月。
そんな噂を聞きつけた依頼者が池に来ていた。
「はぁ…はぁ…うう…会えるといいな…」
陸は誰が見ても痩せ過ぎた肩を小刻みに震わせながら、呼吸を整えた。
「おやおや、また自殺希望者か」
どこか嬉しそうな凛とした声がした。
周りに人はいなかったのにどうしてと慌てて顔を上げると、そこには燕尾服に身を包んだ美しい男がニヤけていた。
月明かりに照らされ煌めく銀髪、そこから覗く切れ長の赤い瞳、その浮世離れした幻想的な美しさに陸は唖然とするしかなかった。
「わあ…本当だったんだ…」
「これはこれは随分いたいけな少年ではないか」
「は、初めまして」
「ああ、初めまして少年。それで少年の依頼はなんだ」
「あのね、僕のパパとママが大好きって感情を買い取って欲しいんだ」
「ほうそれはまた中々…」
「他の人にもね、この感情を分けて欲しくって…うっゴボッゴボッ…」
「おお、どうした少年」
感情屋は陸の背中をさすった。
「だ、大丈夫だよ…ごめんなさい…」
「そうか…、いやそうは見えなかったが…」
「ほ、本当に元気だよ!大丈夫大丈夫!」
陸はわざとらしそうに笑顔を見せた。
「お、おう…そうか…」
「…」
「…」
「僕ね、もうすぐ死んじゃうんだって…」
「少年、死ぬのは怖くないのか?」
「え…うん…大丈夫!僕、ずっと前から知ってたんだ」
「というと?」
「長く生きれないとか、不倫?の子とか… パパもママも泣いてばっかりで…」
「幼子には酷な…」
「だからね、僕だけはいつも笑ってようと思ったんだ」
「…」
「これ以上僕のせいで…もうパパもママも泣かせたくないんだ」
「そうか、わかった。ではそのパパとママが大好きという感情を買い取ろう」
「わあ!ありがとう!」
「だが少年、買い取ってしまうともうその感情はなくなってしまうがそれでも構わないのか?」
「そんなのなくなっても直ぐに僕がまた、パパ、ママ大好きって思えばいいだけでしょ!簡単なことじゃん!」
「クックッ…確かにな」
感情屋は陸の頭に手を載せると目を閉じた。
淡い光が陸を優しく包む。
「終わったぞ」
感情屋は暖かな桃色に染まった瓶をそっと陸に見せた。
「これが僕の感情」
「さてと、じゃあ私はそろそろ行くとするか」
「うん、ありがとう」
感情屋さんはゆっくりと歩き出す。
それを陸はぼんやりと見つめる。
「ちゃんと渡しておくからな」
「え?」
「この感情は少年が亡くなった時、直ぐに君の両親へ」
陸は目に涙を浮かべながら、やっと年相応の笑顔を見せてくれた。
感情という目には見えないものを具現化させ売買しているらしい。
売った感情は持ち主から綺麗になくなり、買ったものは永遠になくならない。
そんな夢のようなことをしてくれる、感情
屋。
今夜は満月。
そんな噂を聞きつけた依頼者が池に来ていた。
「はぁ…はぁ…うう…会えるといいな…」
陸は誰が見ても痩せ過ぎた肩を小刻みに震わせながら、呼吸を整えた。
「おやおや、また自殺希望者か」
どこか嬉しそうな凛とした声がした。
周りに人はいなかったのにどうしてと慌てて顔を上げると、そこには燕尾服に身を包んだ美しい男がニヤけていた。
月明かりに照らされ煌めく銀髪、そこから覗く切れ長の赤い瞳、その浮世離れした幻想的な美しさに陸は唖然とするしかなかった。
「わあ…本当だったんだ…」
「これはこれは随分いたいけな少年ではないか」
「は、初めまして」
「ああ、初めまして少年。それで少年の依頼はなんだ」
「あのね、僕のパパとママが大好きって感情を買い取って欲しいんだ」
「ほうそれはまた中々…」
「他の人にもね、この感情を分けて欲しくって…うっゴボッゴボッ…」
「おお、どうした少年」
感情屋は陸の背中をさすった。
「だ、大丈夫だよ…ごめんなさい…」
「そうか…、いやそうは見えなかったが…」
「ほ、本当に元気だよ!大丈夫大丈夫!」
陸はわざとらしそうに笑顔を見せた。
「お、おう…そうか…」
「…」
「…」
「僕ね、もうすぐ死んじゃうんだって…」
「少年、死ぬのは怖くないのか?」
「え…うん…大丈夫!僕、ずっと前から知ってたんだ」
「というと?」
「長く生きれないとか、不倫?の子とか… パパもママも泣いてばっかりで…」
「幼子には酷な…」
「だからね、僕だけはいつも笑ってようと思ったんだ」
「…」
「これ以上僕のせいで…もうパパもママも泣かせたくないんだ」
「そうか、わかった。ではそのパパとママが大好きという感情を買い取ろう」
「わあ!ありがとう!」
「だが少年、買い取ってしまうともうその感情はなくなってしまうがそれでも構わないのか?」
「そんなのなくなっても直ぐに僕がまた、パパ、ママ大好きって思えばいいだけでしょ!簡単なことじゃん!」
「クックッ…確かにな」
感情屋は陸の頭に手を載せると目を閉じた。
淡い光が陸を優しく包む。
「終わったぞ」
感情屋は暖かな桃色に染まった瓶をそっと陸に見せた。
「これが僕の感情」
「さてと、じゃあ私はそろそろ行くとするか」
「うん、ありがとう」
感情屋さんはゆっくりと歩き出す。
それを陸はぼんやりと見つめる。
「ちゃんと渡しておくからな」
「え?」
「この感情は少年が亡くなった時、直ぐに君の両親へ」
陸は目に涙を浮かべながら、やっと年相応の笑顔を見せてくれた。
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