素直になれなくて-吉哉の場合-

吉野ゆき

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泡沫の幸せ

4

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そして退院の日。

お世話になった先生方に挨拶をして、真由とタクシーへ乗り込んだ。


車内はラジオの音のみで、俺達は静かにそれを聴いている。

チラリと横にいる真由を盗み見ると、緊張したように固まっている。

さっきまで何か言いたげに俺をチラチラ気にしていたのを知っていた。


ああ、ついにくるのか。

そう思った。


結局そのまま家に着くまで誰も口を開くことはなかった。


俺達の家に着いた。

「たった数日なのになんだか懐かしいな…」

俺は独り言のように呟いた。


ここで真由と暮らしてたんだよな。


思えば、この家でのいい思い出はあまり作れなかったな。

俺の中で、ここでの真由はいつも無表情だ。
仕事ばかりであまり一緒の時間を共有もできなかったし。


それに比べて、病院にいたときのほうが会話もあって、手の届くところに真由がいて。
幸せだったな。

責任感からの泡沫の幸せだって分かってるけど。
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