素直になれなくて-吉哉の場合-

吉野ゆき

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揺らぎ

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霜が降り、吐く息が白くなる。

一人称が『僕』から『俺』に変わり、早いもので高校へ入ってもう最初の冬がきた。


いつも通りに登校すると、下駄箱には一通の手紙。

大事な話があるので放課後、中庭に来てくださいとの内容。

『鈴原 明』ねえ。
聞いたことない名前だけど。


用件は、大体分かる。


別に珍しいことじゃなかった。

自分でいうのもなんだけど、顔も悪くないし、運動神経もそこそこ。
おまけに家はお金持ち。

高校へ入って、女の子から告白されることは多かった。


みんな断ったけど。
だから今回もいつもと同じく断るだけだ。


真由もこんなふうに、誰かからの告白を受けていたりするのだろうか?

…嫌だな。


失礼なのはわかっているが、こういう場面にあたるたび真っ先にくる感情は相手への申し訳ないという気持ちや、自分を好きになってくれたという感謝の気持ちより、そのことだった。

放課後、中庭へ行くと、想像とは少し違った素朴で可愛い女の子がいた。
ショートヘアでくりっとした目にぽってりした唇。
童顔で小柄なため、とても幼く見える。

いつも上辺で寄ってくる軽そうな子が多かったから、少し驚いた。


俺の姿を見て緊張していた顔が一瞬ほころぶ。

なんだかいつもの女たちとは感じが違い、少し戸惑う。


「来てくれたんですね」

彼女はそう言うと、それからまた緊張した顔に戻った。


なんだか、こっちにまで緊張が移る。


彼女が言葉を紡ぐその瞬間、時間が止まった気がした。




「好きです」

とひとことだけ。


何を言われるかなんてわかってたはずなのに。



確かに戸惑いはしたが、俺の好きな人は真由だ。
この子には、悪いけど。

「ごめん。俺、好きな人がいるから」

そう言って立ち去ろうとしたときだった。
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